市民が主体となり政策作り、多様な団体と共闘
2月2日投開票の京都市長選は、与野党相乗り推薦で4選を目指す現職=門川大作氏と市民派新人=福山和人氏の争いを軸に、地方政党=「京都党」出身の元京都市議=村山祥栄が割って入る三つどもえの激戦となっている。今回の選挙構図は、相乗り候補が951票差で共産系に辛勝した08年選挙に酷似しており、福山陣営は「山が動く予感がする」と手応えを語る。
福山選挙事務長の白坂ゆうこさん(㈱エコー代表)に選挙の構図、市民派選挙の実際などを聞いた。(文責・編集部)
自分たちが政治を作っていく
福山候補の選挙母体である「つなぐ京都2020」は、個人・市民団体・労組・政党が対等な立場で参加しています。福山さんは、「つなぐ京都」(個人・団体・政党で構成する選挙母体)から京都府知事選(2018年)に立候補した弁護士です。同府知事選が「野党・市民共闘」の始まりとなりました。「自分たちが政治を作っていく」が目標です。
今回の市長選は、「野党・市民共闘」の発展形で、「市民のつどい」を始めたのが昨年6月。候補者が決まったのが11月です。「市民のつどい」のなかに「政策小委員会」を作り、「こんな京都にしたい」という政策作りを始めました。具体的には、政策アンケートを呼びかけ、町内会などの身近な方々にも協力していただき、議論を重ねました。特に意識したのは、商店街や「保守」とされてきた方々の意見を取り入れ、左派、リベラル系の政策にとどめないことでした。
京都は観光で潤っているように見えますが、儲かっているのは、外資系や東京の大資本ばかり、中小企業は毎年700件以上も倒産・休廃業で、非正規雇用率は政令市ワースト1です。観光公害も広がり、地価が高騰し、交通渋滞も激化しています。
数百のアンケートが集まり、「こんな京都にしてほしい」というメッセージボードを含めると、数千通集まりました。
福山さんのマニュフェスト=政策大綱は、こうした政策の積み上げが基礎となっています。その柱は、(1)夢をつなぐ=市民の暮らし丸ごと応援、(2)なりわいをつなぐ=地域経済、(3)まちをつなぐ=文化・街並みを守る良質な観光、(4)未来へつなぐ=原発ゼロ、気候危機対策、(5)ひとをつなぐ=住民自治、です。
「くらし応援 すぐやるパッケージ」
京都市は、健保保険料も高いし、子どもの医療費が無料でもありません。少子高齢化が進み、人口減少も課題です。また大学が多く、学生人口も多いのですが、奨学金の返済が学生生活を大きく圧迫しています。
政策大綱のなかで、緊急性が高く、普遍性のある政策を「くらし応援すぐやるパッケージ」としてまとめました。それは、(1)子育て応援セット(子どもの医療費無料、中学校給食など)、(2)若者セット(給付型奨学金、地下鉄定期割引率アップなど)、(3)高齢者応援セット(医療費窓口負担の軽減)、(4)地域経済支援(中小零細の賃上げ支援、市発注事業は時給1500円など)です。
これら4つのパッケージを全部やっても、市予算総額の1%未満です。つまり「ないのはお金でなく、やる気」なのです。特に京都は97%が中小零細企業で、少子高齢化、消費増税もあり、地域経済の活性化も重要課題です。これからもマニュフェストに追加して、個別政策ビラを作ります。
実験としての選挙 市民が主体となる運動に喜び
今回の京都市長選は、全国から注目されています。市民が政策作りから参加し、積み上げて自発的に選挙を担う、という新しいスタイルを生み出しつつあるのだと思います。これまで出会っていなかったさまざまなグループが集まったので、戸惑いもありますが、距離の取り方も含めて協働のあり方を皆が日々試行錯誤しています。
政党レベルでも同様です。れいわ新選組は、出来たばかりの今までにない新しい形の政党です。一方共産党は、歴史がありしっかりした組織基盤があります。こうした両極端な政党が、協力関係を模索してもいます。
実験を重ねながらですが、自分たちが主体となって動いていることへの喜びがあります。
注釈
福山和人:無所属市民派(推薦:共産党・れいわ新選組・新社・緑の党・フォーラム関西)
現職=門川大作:08年の京都市長選に民主党・社民党の推薦を受けて出馬。自民党・公明党も推薦に加わり当選。現在は、自・公寄りとなっている。今回、民主党が推薦を決定したことが批判の的となっており、現職推薦を決めると同時に福山哲郎参議は、府連代表を辞した。
地域政党「京都党」:市民派を名乗るが、政策的にはIR誘致、水道民営化などを主張する新自由主義派。非公式に維新の支持を受けている。