<第一話:笑顔> 浦島オバさん太郎の日本すごくない! 大西ゆみ

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ゆみさんは2016年4月、30年住みなれたロンドンから日本に帰国した。久しぶりの日本は「変わらない姿で自分を迎えてくれた」ような気がした。きっといい事があるだろう、だって日本は「すごい!」んだから!と、ワクワクしながら実家へ。しかし…。彼女がロンドン生活とのギャップで感じた現代の日本社会への違和感・問題点をエッセイで連載してもらうことにした。(編集部)  

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30年の間8回一時帰国しただけの私の頭の中は、80年代の「バブル・ジャパン」そのものだった。自分が「浦島太郎」だと気付くのはまだまだ後のこと。  

日本人の表情が暗く、冷たいと感じたのは帰国してすぐだった。みんな「笑わない」。ロンドンでは、知らない人同士でも目が合えばニコリとして、「ハイ!」くらいは言う。私が長年の癖でニコリとすると、ほとんどの日本人は目を逸らしたり、後ろを振り向いたり、もしくはすばやく逃げる。なかには自分を指差して「俺?」なんて人も。ロンドンじゃあ電車・バスの中で、隣の人同士すぐに会話する。  

でも、日本では寝ているか携帯をいじっている。たまに学生たちがお喋りして笑ったりすると、意地悪そうな年配の男性が「おい!うるさい!」なんて怒鳴り散らす。私は一度オヤジに向かって「あんたの方がうるさいんじゃない!」と言ってしまい、車内は沈黙した。  

なぜ、治安の良いとされる日本の人の方が、イギリスのような不安定な治安の国の人たちよりも、警戒心が強いのか? その割には「国際ロマンス詐欺」「カルト宗教」に騙される人が多いのはなぜ? また、旅行先の海外で犯罪に巻き込まれる日本人も少なくないらしい。  

長く精神科の看護師だった私の勝手な見解では、日本人は日本で締め付けられて生活しているせいか、海外に来るとやっと自由を手に入れたというように大胆になるところがある。ナイトクラブやバーに出入りし、マリワナを吸い、誰と住んでも近所や家族から何も言われないとしがらみから開放されて舞い上がる。  

幼少から自分の意見を言い、決断し、親の反対にも負けずにやり遂げる、自分の主義を持つ! 権利を主張する! なんてことをしてこなかった人たちが突然自由を手に入れたらこうなるのだろう。私は日本の教育システムやしつけを疑う。  

みんなと同じや従順で真面目が良い、なんていうのは裏を返せばコントロールされやすく騙されやすいということ。そう考えると日本「すごく」ない。  

実家の母に「なんだか日本人の表情は暗いよね?」と聞いてみた、「そりゃあ、景気が悪いからね」。そうか、日本は不景気だから暗いのね。(続く)

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