8年目の3.11 見せかけの避難指示解除東京五輪を利用した復興アピール破綻 福島在住 遠藤 智生

【フクシマ通信第2回】

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 政府が「20年度末まで」と設定した「復興・創生期間」まで、残り1年3カ月。来年夏の東京オリンピックを国際的に「復興」アピールの場にしたい日本政府にとって、本番1年前の正念場を迎えることになる。

 今年の福島はどうなるか? 被災者・避難民、福島県民にとってはどうか? 3・11から8年を前に、昨年福島で起こったこと、今年予定されていることを紹介しながら、(1)原発廃炉作業、(2)損害賠償に見る被災者切り捨て、(3)帰還・復興政策、についてお伝えする。(編集部)

【原発】高線量で進まない廃炉作業

 東京電力が決定した「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(廃炉ロードマップ)は、2011年12月に策定された。安倍首相が福島第一原発は「アンダーコントロール」にあると世界に向かって強弁したにもかかわらず、その後、作業の進展状況や原子炉内の詳細が明らかになるにつれて、ロードマップは修正を重ね、現在は第4回改訂版だ。

 まず、使用済み核燃料プールに保管している燃料体(18年3月時点/1号機・392本、2号機・615本、3号機・566本)を取り出さなければならないが、設備トラブルが明らかになった。燃料デブリ取り出しは、格納容器周辺の高線量のために、作業手順も決まっていない。

 今年は、3月末を目標に3号機の燃料棒取り出し開始の予定であるが、1・2号機については、23年度が目標とされている。5月中旬からは、1・2号機共用の排気筒の一部解体が始められる予定だ。排煙塔支柱の破断が確認されており、倒壊した場合、放射性物質が飛び散る危険があるからだ。排煙塔周辺の放射線量は、13年の測定で25mSv/hと高線量だ。

【東電】口先だけの「責任の全う」賠償・和解を拒絶

 「福島への責任」―東京電力ホールディングス(東電の持株会社)のサイトにはそんなコンテンツが設けられている。「私たちは、…福島第一原子力発電所事故の責任を全うし、賠償、復興推進、廃炉を着実に進めてまいります」。
 事故以降、東電は謝罪のポーズをとってきた。事故直後から、社員を動員して「見回り活動」と称して被災地を巡回してきた。草刈りや清掃、雪下ろし、引越など雑用を手伝い、地域のイベントにも参加している。
 当初冷ややかだった住民も、社員に感謝の言葉をかけるようになったという。しかし、「罪を憎んで人を憎まず」という美徳(?)や、被災者との「ふれあい」が国や東電の免罪のためなら、害悪でしかない。
 「責任、賠償、復興推進」のスローガンや被災者ふれあいを強調する東電も、具体的な賠償となると、一転して被災者を突き放す。
 次ページの表のように、東電は賠償請求に対しことごとくケチを付け、和解仲介も蹴り続けているのである。「福島原発刑事訴訟」において、事故当時の東電経営陣3人が「自らの責任はない」と主張していることが、すべてを物語っている。損害賠償の拒否はその当然の帰結であり、東電のいう「福島への責任」がいかに口先だけなのかが知れる。
 ちなみに福島原発刑事訴訟は、3月12・13日には元経営陣側の弁護士による最終弁論が行われ、結審となる予定だ。多くの皆さんのご支援・ご注目を呼びかけたい。

【地元】原発立地する危険区域大熊町で一部避難指示解除

 国・福島県による帰還・復興政策は、着々と進められている。国は除染を進め、次々に避難指示を解除してきた。2019年2月現在、帰還困難区域・居住困難区域とされているのは、福島第一原発が立地する大熊町全域、双葉町全域、富岡町の一部、浪江町の大部分、葛尾村の北東部、飯舘村の長泥地区、南相馬市の南西部である。

 これらの帰還困難区域・居住困難区域でも、避難指示解除に向けた動きが加速している。地域復興拠点として「特定復興再生拠点」を整備し、コンパクトタウンとして役所・住宅・商業施設・医療機関などを集約するというものだ。

 ’15年9月に全域が避難指示解除された楢葉町では、昨年6月に「笑ふるタウンならは」がオープンした。復興拠点の先行例だが、地元住民だけではなく、原発作業員や除染・解体・各種工事などで働く作業員などでにぎわっている。

 通行止めの道路も再開されている。昨年8月、国道399号約4・2キロメートル、国道459号約4キロメートル、県道いわき浪江線約4・7キロメートル、県道落合浪江線約3キロメートルで通行できるようになった。地元住民や避難民にとって交通の便が良くなったことは確かだが、通行による被ばくや、汚染の拡散が心配される。

 被災地を抱える各自治体も「特定復興再生拠点区域復興再生計画」を策定した。除染作業は続くが、政府はこの費用負担を東電に求めない。その理由は「東京電力は帰還困難区域の全域・全住民に対し、…賠償を既に実施してきている」というもの。

【自治体】住民帰還に本腰封印される汚染への不安

 各自治体は、住民の本格帰還に本腰を入れ始めた。昨年4月には、避難先に移転していた川俣町山木屋地区と富岡、浪江、葛尾、飯舘の4町村の小中学校が、7年ぶりに再開された。県教委は、2018年度の予算として約3000万円を確保。各町村は、ICT教育の機器整備や、放課後学習、スクールバスの運行費用などに充てている。

 帰還・復興政策は、福島第一原発が立地する大熊町において、最も象徴的だ。「特定復興再生拠点」は、同町の大川原地区。東京電力社員寮や、原発廃炉作業に携わるゼネコン・関連企業などの事務所が集中する地域だ(町長宅もある)。

 現在、避難指示解除(大川原地区・中屋敷地区)に向けて、町役場新庁舎や災害公営住宅の建設工事が進行中だ。「さあ故郷に帰りましょう。もう放射能は心配ないですよ。これからは力を合わせて復興だ! 心ない風評被害に負けずに頑張りましょう!」─これからは、同調圧力の下で、放射能への不安や、政府への不満がタブーになっていくだろう。

 原発事故の汚染について質問された復興庁の職員は、「今でも汚染のことを言うのは、左翼か脱原発の活動家、そして賠償を欲しがる被災者だけですよ」と答えたという。国の本音はそういうことなのだろう。

 福島でも同じだ。大熊町でも、「原発反対」を唯一貫いている町会議員・木幡ますみさんが、議会開催中の懇親会で渡辺利綱町長から、「あんたは、いつまで原発反対とか、故郷を捨てろ、なんて言ってんだ!」「変な質問をするんじゃない!」と言われたという(ロシナンテ社『月刊むすぶ』18年11月号)。

 再生された大熊町とは、一体どんな町になるのか。

 その他、放射能汚染物質の処理(減容化施設で焼却されたり、大熊町・双葉町の中間貯蔵施設で保管されることになっているが、環境省主導で汚染土をリサイクル使用する実験が始まろうとしている)や、再生可能エネルギー(太陽光・風力・バイオマス発電や、水素)の欺瞞性についてなども、今後お伝えしたい。

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