【入管法「改正」強行採決】外国人労働「力」導入きあら30年 仮放免者の会・非正規滞在者支援 永井伸和

入管施設での人権侵害 収容者の心身痛めつけ帰国を迫る

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 入管法の改正案が国会で議論され、連日、新聞・テレビを賑わせている。与党はまたも強行採決し、今国会成立を狙っている。深刻な人手不足のなか、政府は財界の強い要請を受けて、外国人労働者の受け入れ拡大へと法改正に乗り出した。昨今はもうひとつの「入管」をめぐる問題も、頻繁に報道されている。入管(入国管理局)収容施設における人権侵害である。本稿では、この収容問題がどのような歴史的な経緯のなかで生じているのか、素描したい。(筆者)

収容長期化と強硬な再収容

 福島瑞穂参議院議員の質問に法務省が報告した資料によると、7月末時点で1309人の外国人が入管の施設に収容されている。そのうち709人は、収容期間が6カ月をこえる「長期収容」だ。2年あるいは3年以上にもわたって拘束されている人も少なくない。

 入管には、茨城県と長崎県に「センター」と呼ばれる収容所がそれぞれあるほか、東京・名古屋・大阪などの各地方入管局に「収容場」が設置されている。

 この1300人超は、罪をおかして罰を受けているのではない。入管が「退去強制令書」を発付した人である。「退去強制」とは、「強制送還」とも呼ばれ、日本に滞在している外国人を強制的に国外に退去させる行政処分である。入管法は、入管がこの退去強制の対象となる人を「送還可能のときまで」収容できる、と定めている(第52条第5項)。つまり、送還のためのいわゆる「身柄」の確保が、この「収容」の目的なのである。

 収容の長期化は近年とくに顕著になっている。9月23日付の「朝日新聞」は、法務省に取材した記事として、6カ月以上の被収容者数が、16年末の313人(約28%)から、18年末の576人(約43%)、今年7月末時点で709人(約54%)と、人数・割合とも急増していることを報じている。

 収容長期化が顕著になり始めたのは、15~16年にかけてである。法務省は、公式見解として、「長期収容は極力回避すべき」と、くり返し表明している。

 入管は、収容期間が長くなったり健康上の問題が深刻な被収容者を、入管局への定期出頭などの条件をつけて出所させる「仮放免」の制度を活用して収容を解いてきた。ところが、15年の秋ごろから、大阪入管で仮放免が許可されなくなった。また、東京入管などは、仮放免で出所していた人を次々と「再収容」し始めた。強硬な運用は、全国の入管施設に広がっていった。

 なぜ法務省は人道上の問題があると自覚しているはずの長期収容をおし進めてきたのだろうか。そこで意図されているのは、「送還忌避者」と法務省が呼ぶ存在が、増加している問題への対処である。

「帰れ」と言われても帰れない「送還忌避者」

 700人以上が6カ月をこえて収容され、仮放免されている人(退令仮放免者)が2017年末の法務省統計で3100人超だ。この計4千人近くは、入管による退去命令を拒否している人たちであり、法務省は「送還忌避者」と呼んでいる。

 上のグラフのとおり、2010年以降、退令仮放免者数は急増してきた。法務省は、「送還忌避者」をなんとか減少させたい意図があると考えていい。入管において、収容とはあくまでも送還の手段だ。長期収容・再収容の目的は、監禁して心身を痛めつけ、被収容者の在留の意思をくじき帰国(送還)に追い込む、ということに他ならない。重要なのは、3000人を優に超える「送還忌避者」が存在するにいたった経緯である。問題は2つある。

 ひとつは、日本が難民条約に加盟していながら難民保護に消極的であることだ。「先進国」が年間数千から数十万人の難民申請者に在留資格を付与しているなか、17年に日本が難民認定したのはわずか20人、人道的配慮として在留を認めた人数を加えても65人である。多数の庇護を必要とする人が難民認定審査でとりこぼされ、退去強制の対象となっていることが、この数字から推定できる。帰れと言われても帰れない人の在留を認めず、送還に固執していることが、多数の「送還忌避者」を生む要因となっている。

 もうひとつは、バブル期以来のご都合主義的な外国人労働力導入政策である。

 80年代後半、当時3K(きつい、きたない、危険)と呼ばれた職種での人手不足は深刻で、外国人労働者の受け入れを求める財界の強い圧力を受け、90年に入管法が改正された。

 ところが、労働者として受け入れるのは「専門的な知識、技術、技能を有する外国人」に限定するという建前は保持され、建前をかいくぐる形で外国人労働者を呼び込み利用することが今日まで行われてきた。

 第一に、オーバーステイなどの非正規滞在者(法的な在留資格をもたない外国人)を労働力として利用することが、80年代後半から行われてきた。日本政府が非正規滞在者の労働力依存をやめる方針を明確にしたのは、03年12月に犯罪対策閣僚会議が発表した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」だ。

財界が必要とする使い捨て外国人労働力

 ここで、04年を初年とする「不法滞在者の半減5か年計画」が謳われ、以後、警察を動員した「外国人狩り」と言うべき徹底的な摘発が行われた。

 第二に、南米日系人の二世三世を、日本人との血縁を根拠にして在留資格を付与するものだ。これは就労のための在留資格を新たに設けず、外国人労働者の受け入れは専門分野に限るという建前を保ったまま、財界の要請に応えて工場労働者を呼び込むための奇策であった。しかし、国の政策に労働者とその家族の権利と生活を守る視点は皆無だった。

 例えば、子どもの教育や失業時の生活保障といった「受け入れ」に不可欠な課題は手つかずのまま、拙速に労働者の呼び込みが行われたのである。これが、犯歴によって在留資格を失い、しかし帰国しろと言われても帰国しようのない人を生み出す要因になったことは、否定できない。

 第三に、技能実習や留学など就労以外の活動に応じた在留資格を、本来の趣旨に反する形で労働者の呼び込みに利用するという、「偽装受け入れ」と呼ぶべき手法だ。

 外国人を単なる使い捨て可能な労働「力」として扱ってきたのである。しかし、日本社会が呼び込んでやって来た労働者やその家族は、人間であって、社会のなかで他者と関係を築き根づいていく存在である。日本社会に定着していった人たちを送還という手段で排除しようとしても、相手が人間である以上、都合よくはいかない。その結果もたらされたのは「送還忌避者」の増大であり、法務省が監禁と拷問によって帰国に追い込む方針に固執していることが、収容所の人権侵害をまねいているのである。

くり返される失政

 外国人労働者を呼ぶ以上、将来その一定数が日本社会に定住していくだろうことは避けられない。この現実を想定しないどころか、忌避しようとしている現在の法改正の行き着く先は、既に見えている。

 いま入管収容施設で起きている虐待・人権侵害が、またくり返されるだけであろう。

 そうならないために、まず取り組まなければならないのは、いま起きている人権侵害をただすことであるはずだ。

 

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