原発のゴミ世界の今 中間貯蔵施設建設では核のゴミ問題は解決しない

核廃棄物処理でも金儲け 国際原子力マフィアの実態

LINEで送る
Pocket

南山大学人類学研究所 非常勤研究員 玉山ともよ
米国では核のゴミの再処理をあきらめ、地中に埋める手段がとられてきた。しかし、廃棄場をマイノリティー居住区域に押しつける差別により成り立っている。
 米国廃炉ビジネスは、日本で使用済み燃料・高レベル廃棄物の最終処分場として適地が見つからない場合のオプションとして発展する可能性もあるため、身近な問題だ。
 核による環境汚染も、地球規模の課題となっている。新たなゴミが生まれることを食い止めねばならない。中間貯蔵施設は再稼働を前提とするため、根本的解決にはなりえない。この問題を研究し続ける南山大の玉山さんに報告をお願いした。(編集部)

Q・米国での高レベル放射性廃棄物・使用済み燃料の処理はどうなっているのか?
A・米国では早くから再処理をあきらめ、直接処分=地中に埋めるという政策が、軍民問わずとられてきた。しかし、日本と違い広大な面積を誇る米国でも、どこに核のゴミを捨てるかについてはいまだに決まっていない。また、全米の核施設で深刻な放射能漏れ事故が起こっている。
 「きちんとした捨て場」とは最終処分場のことで、使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物は、オバマ前政権までは、ネバダ州のユッカマウンテンの250mから500m地下に最終処分場を建設し管理する計画が進んでいた。しかし、ウエスタンショショーニをはじめ近隣先住民にとってはいわゆる聖地であり、同時に火山活動がみられ地震の可能性もあった。加えて地下水の流入も考えられる、地層的にも科学的にも好適地とは判断され難い場所で、地元のハリー・リード前ネバダ州上院議員らによる強固な反対もあり、オバマ前大統領はユッカ案を就任早々白紙に戻した。ブルーリボン委員会を立ち上げ、新たな放射性廃棄物管理を専門とする公的機関を創設し、地元住民の合意に基づくサイト選定などを提言した。
 だが、すでに110億㌦をかけた総額1千億㌦とも言われるユッカマウンテン国家プロジェクトを惜しむ声は、原発関連会社と共和党の間で根強くあった。このためトランプ政権発足後、リック・ペリー(元テキサス州知事・開発推進派)をエネルギー省長官に据え、上院下院で共和党が多数を占める議会とともに、同処分場計画を一気に再認可・推進しようとしている。

「放射性廃棄物政策法」改正法案が下院で可決

 6月26日、米国下院エネルギー商業委員会で放射性廃棄物政策法の改正法案が上程され、28日に49対4で可決された。同改正案は、ユッカマウンテン最終処分場計画を生き返らせ、認可の調査に1憶2千万㌦の予算を付けるもので、同時に民間の中間貯蔵施設の創設も認めようしている。8月末までに下院で通る可能性があり、上院に送られ可決されると、トランプ大統領が拒否権を発動することはありえないので、改正案は早期に成立する。
 法案の趣旨は、全米39州の121の地域に仮保管され行き場をなくしている使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物をまずなんとかしよう、というものだ。
 1982年に制定された放射性廃棄物政策法は、電力会社が1キロワットあたり0・1セントをユーザーから徴収することを認め、放射性廃棄物基金(NWF)として連邦政府が管理してきた。その額は300億㌦にのぼるとされ、2014年まで続けられた。
 同法は、1998年までにエネルギー省へ使用済み燃料をオンサイトからオフサイトへ移動させることを義務付けていた。ところが、廃棄物処理政策の混迷失敗により、米国民の税金から連邦政府を通じていわゆる違約金として原発運営会社に毎年5億㌦、これまで費やされた訴訟関連経費約50億㌦も含めて2022年までに計290億㌦の公費がかけられると予測されている。
 つまり、使用済み燃料の行き場がないことによって、単に安全上や環境配慮の問題だけではなく、莫大な費用が積み増しされ米国民にのしかかる。
 しかしだからといって、中間貯蔵施設建設へのゴーサインは、中間とは名ばかりにそこを最終処分場として実質使うことへ道を開くことになる。すなわちユッカマウンテンが仮にまた迷走し施設がオープンするまで時間がかかろうとも或いは再び頓挫しても、使用済み燃料を中間貯蔵施設に持って行きさえすれば、核のゴミというとんでもない厄介物を抱えている原発受け入れ地域はとりあえず楽になる。それが原発の新設やリプレイスにもつながろうというものだ。というのは米国の原発のほとんどは老朽化しており、米国内の約20%の電力を現在担っているとは言われているものの、稼働期間を60年に延長したところで先は知れている。そこで温暖化防止のためには二酸化炭素を稼働中に排出しない原発が必須だと、使い古されたレトリックをさらに使い回し倒して、なんとか業界の延命を謀ろうとしているのである。。
 改正案のポイントは、使用済み燃料は中間貯蔵施設へ移送される段階で、所有権が電力会社からエネルギー省に移管され、つまり民から公へ処理管理責任が移されることである。つまり、民間会社による中間貯蔵施設であっても、中にある使用済み燃料の所有は連邦政府であるということなる。結局100年から300年民間で管理した後、将来世代のお荷物となって、税金(公金)で民間の原発が産みだしたゴミを、会社でなく政府すなわち国民が背負うのである。ユーザーから電力料金の一部であるかのように徴収された処理費用を積み立てた基金だけでは、到底賄いきれないことを自白しているようなものである。

2カ所の中間貯蔵施設新規建設計画

 特殊なライセンスを得た会社が高額の管理費を請求したとしても、競争相手がいない。そして、契約期間は半永久的にある。事故が起こっても、政府が肩代わりしてくれる。顧客を海外に拡げれば、もっと需要が見込めるのである。
現在計画されている中間貯蔵施設は、(1)テキサス州アンドリュー郡のウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と、(2)ニューメキシコ州リー郡のホルテック社によるエディー・リー・エナジー・アライアンス(ELEA)の2カ所である。
 いずれも人口が希薄な乾燥した半砂漠地帯、僻地に計画されている。
 ニューメキシコ南東部からテキサスにかけては、原子力回廊と呼ばれるほど核関連施設や計画が多い。エネルギー省の核廃棄物隔離試験施設(WIPP)がカールズバッド市にあり、プルトニウムやアメリシウムなどが入った軍事用TRU廃棄物を地下600~700mの岩塩層に埋める深地層処分施設で、「1万年もつ」というふれこみで1999年に操業を開始した。
 ところが、15年目の2014年に放射能漏れ事故を起こした。今年4月に操業再開したが、除染に総額20億㌦がかかる見込みで、事故が起これば、そのツケは非常に高い。

wIIP事故を黙殺する日本

 日本にも国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が所管する幌延深地層研究センターが2001年、北海道幌延町に、東濃地科学センターが2002年岐阜県瑞浪市に、いずれも研究施設として開所している。これらは、米国で既に超長期にわたる地層処分施設のモデルプランが破綻していることをどのように受け止めているのだろうか。しかも、地震や津波といった突発的な事象ではなく、ヒューマンエラーによる放射能漏れ事故であったことが示唆することは、果たして日本で最終処分場を建設するときに同様のことが起こりえないと保証できるのかという問題である。
 1万年にわたり放射能漏れ事故を1回も起こさないで管理できることなど、不可能である。不可能なことをさもでき得ることのように詭弁を弄して科学的有望地を選定し、実際に最終処分場を日本に造ることは、無理難題をどこかに押し付けているに過ぎない。
 だから、そのツケを担わされるのは誰かという点で、常に差別の上塗りがされてきた。形ばかりの住民合意は一時的なもので、将来世代まで含まれないものである。

原子力で雇用を維持

 同回廊には、WCSとは目と鼻の先にあるユレンコ・ウラン濃縮施設がある。ウラン濃縮は、米国では莫大な電力を消費するガス拡散法から遠心分離法への移行がスムーズに行われず、破たんしたユーゼック(USEC)社(元は合衆国ウラン濃縮公社)を尻目に、英独蘭の資本が入ったユレンコの最新鋭の濃縮施設が、ユニスというニューメキシコ州南部のテキサス州境の小さな田舎町近く、荒野に建っている。
 インターナショナル・アイソトープ社による劣化六フッ化ウラン再転換工場建設計画もあり、核依存度が高い。同時にシェールオイルの産出地でもあって、あちこちにオイルリグ(油井戸掘削装置)が見られる。昨今原油の価格は低迷しており、枯渇した時の産業オプションとして、地元では原子力が歓迎されはじめている。
 もともとニューメキシコ州は人類最初の核実験を行ったトリニティサイトがホワイトサンズミサイル演習場の中にあり、北に行けばアルバカーキ市のサンディア国立研究所、原爆を作ったロスアラモス国立研究所といった、核兵器を製造している研究所がある。また、州北西部は、ウラン鉱山開発が行われて放置・遺棄されている汚染地帯が、先住民保留地内あるいは隣接してある。ナバホ先住住民保留地内だけで、500カ所以上未除染地あるのである。
 スザンナ・マルティネス氏(ニューメキシコ知事)は、産業寄りの政策を推進しており、中間貯蔵施設建設計画も支持している。地元同意は共和党支持者を中心に固められつつあり、少数の反対勢力が抗議している。

放射性廃棄物の差別的押しつけ

 中間貯蔵地や最終処分場建設の候補地に挙げられたのは、先住民保留地など、白人が少なく経済的貧困の蔓延する地域である。環境汚染や健康被害をマイノリティーに押し付けることを、「環境不正義」あるいは「環境レイシズム」という。
 WCSやELEAが、ビジネスとして中間貯蔵施設建設計画に乗り出すまで、当初ニューメキシコ州のメスカレーロ・アパッチ先住民保留地が検討され、その後にユタ州ゴシュート先住民保留地のスカルバレーが候補地とされた。スカルバレーは、原子力規制委員会(NRC)に一度認定され(2003年)、計画は頓挫したものの、人種差別も歴史的にあり、貧困に苦しむ人々の頬を札束ではたいてマイノリティー居住地域で計画されてきた。特に一部の先住民政府リーダーに賄賂や権益を与えるなどの分断工作をした後、先住民自治による決定であるかのように見せかけて、差別の固定化を図る政策を長年続けてきたのである。
 今回のWCSやELEAが建設される地域は、先住民保留地ではないものの、チカノ・チカナと呼ばれるメキシコ・ヒスパニック系が多数を占めるコミュニティーで、マイノリティーで失業率の高いことに変わりはない。
 WCS社は、熱烈な共和党支持者の故ハロルド・シモンズが1989年に作った会社だ。埋め立てゴミの処分場を運営していたが、2009年に医療現場から廃棄されるなどの低レベル放射性廃棄物処分場としてのライセンスを取得し、2016年には、使用済み燃料の乾式貯蔵による中間貯蔵施設のライセンスを申請して、アレバ社と日立造船のグループ企業であるNACインターナショナル社の技術協力を得ている。
 ところが今年4月、NRCへの許認可申請費用が750万㌦かかるという経済的理由から、レビュープロセスの中断をNRCへ申し出た。
 また、6月には、ユタ州の低レベル放射性廃棄物処分場を運営しているエナジー・ソリューションズ社によるWCS社の買収が、独禁法により司法省により中止を勧告された。さらにデラウエア地裁でも、それを支持する判決が出(6月22日)、WCS社の裁判関連費用の超過も大きく、ひとまずは高レベル廃棄物処分ビジネスの超巨大化に待ったがかけられている。
 しかし、改正法施行で、エナジー・ソリューションズによる買収が実現しなくとも、WCS社の計画が本格化することは間違いない。

廃炉ビジネスの国際化越境する放射性廃棄物

 ちなみにエナジー・ソリューションズ社は、日本原電と敦賀1号機の廃炉事業で協力関係にあり、福島第一原発廃炉作業でも東芝と汚染水処理でも協力関係にある。同社のWCS買収は、米国廃炉ビジネスの巨大化、カルテルの問題があるだけではなく、日本のバックエンド・廃炉事業にも影響を与えかねない。
 日本で使用済み燃料・高レベル廃棄物の最終処分場として適地が見つからない場合のオプションとして発展する可能性が、否定できないからである。当然それには日米原子力協定を含むさまざまな法改正が必要で、一足飛びに実現されるようなものではないが、単なる妄想として片付けるには時期尚早だ。過去に動燃の岡山県人形峠からウラン残土がユタ州のホワイトメサ精錬所に「資源(alternate feed materials)」として「輸出」されたように、「資源」として受け入れることで莫大な管理費用/処分費用が永年にわたり取れるので、ビジネスチャンスだとみる会社があってもおかしくないからだ。

乾式貯蔵=安全ではない

 ELEA社も、WCS社に続き2016年8月にNRCへ施設の許認可申請をした。その主事業者であるホルテック社は、カリフォルニア州サンオノフレ原発サイトの廃炉事業をはじめ、全世界で使用される使用済み燃料を乾式貯蔵するドライキャスクの製造もしている。
 チェルノブイリでも、同社の使用済み燃料の中央貯蔵施設建設が2019年の完成を目指している。日本との関わりで言えば、三菱電機がホルテック社と小型モジュラー炉(SMR-160)開発で協力関係にある。しかし、「同社のドライキャスクがペラペラで、すでにサンオノフレで放射能漏れを起こしているのではないか」と訴えている地元グループがいる。乾式貯蔵は日本でも確実に広がる傾向で、その安全性が問われている。
 ELEAは、2020年までに処分施設を開設したいとし、受け入れ量は、現在の全米の使用済み燃料の総量が7万5千から8万トン弱であるのに対し、10万トンの計画を持っている。これは、WCS社の4万トンをはるかにしのぎ、ユッカマウンテンが当初目指した7万7千トンよりも多い。全米で毎年2千トンの使用済み燃料がオンサイトに溜まっていく現状では、新たに中間貯蔵施設を建設しない限り、ユッカマウンテン最終処分候補施設だけでは不足している。
 したがって、原発オンサイトから使用済み燃料を運び出すためには、中間貯蔵施設建設が急務であるという、原子力産業業界や共和党側の言い訳が成り立つ素地がここにある。

水質汚染は地球全体の問題

一旦水が汚染されてしまえば、取り返しがつかない。WCSでは、すでにアメリカ中部の穀倉地帯を縦断するオガララ帯水層が、ウランで汚染されているのではないかという疑惑がある。
 目先の経済的利益につられて命の源を失うことを、現世代は慎重に考える必要がある。米国の中間貯蔵施設建設計画は、世界の問題として捉えなければならない。

核のゴミの処理はゾンビ延命モデル方式

以上みてきたように、米国では民間主導の(金儲け主義ビジネスとしての)中間貯蔵施設を、最終処分場が確立する前に建てようとしている。放射性廃棄物政策法の改正法案は、ユッカ再開であるかのように見せかけているが、中間貯蔵施設建設へのゴーサインこそが最大の目的である。私はこれを「ゾンビ延命モデル方式」と命名している。国民を欺きながら、その実何もしない(最終処分場棚上げ)。実質的な解決方法など最初から提示する気がない、金をかける気もないのである。
 老朽原発の場合を考えてみよう。日本でも、原則40年廃炉のところ、20年延長の認可を申請し、原子力規制委員会はただ通すだけとなっている。事故のリスクだけでなく、補修するコストがかかるが、廃炉にしてしまうと除染費用などもっとコストがかかるので、再稼働しないまま、プラス20年間も除染責任から免れるものである。原発を擁する自治体にとっては、固定資産税の目減りが先送りされるメリットもある。
 最後は、最終処分場のゾンビ化である。原子力業界にとっては、目先の利益、再稼働に必要な中間貯蔵さえ確保できれば、当面そちらに使用済み燃料を移し、最終処分場はゾンビでもよい、というものである。核のゴミを生み出して儲けた会社が最後まで面倒をみて環境を原状復帰するのが筋であろうが、汚染者負担の原則を守る気などなく、最終的には公的負担を可能にするのが「ゾンビ延命モデル方式」である。

再稼働前提の中間貯蔵施設では無意味

 核のゴミは人類的な課題だが、後始末を誰が負担するかは、新たなゴミが生まれることを食い止めないと、どうにもならない。再稼働(新設・リプレイス)を前提とする中間貯蔵施設の建設は、核のゴミの処理問題とは切り離して別次元で考えなければならない。
 核ゴミのマッチポンプを止めるために、ゾンビ延命モデル方式の愚を市民は知る必要がある。

LINEで送る
Pocket