今こそ住宅支援の継続、コミュニティ丸ごとの避難、収束作業員の権利保証を

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原発事故から6年拡大する被害

  

小出 裕章さん(元・京都大学  原子炉実験所助教)インタビュー

2月9日、東電が「福島第一原発2号機の格納容器内で過去最高の毎時650シーベルトを計測」と発表した。人間が即死する数値だ。
 だが、事故から丸6年を迎え、廃炉準備作業が進む中で明らかになる作業現場の過酷さと、国・東電の相変わらずの無責任・ずさんな体質に、「またか」と多くの人が慣らされている現状がある。その中で収束作業員が無権利状態に置かれ、東日本全体に健康被害が広がり、住宅支援が打ち切られる。今の状況は? そして必要なことは何か?─元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんに電話インタビューした。(編集部)

被曝はあらゆる病気を起こす

――東日本全体で放射能汚染による健康被害が拡大していると思います。
小出…2011年の3月から、膨大な放射性物質がまき散らされ、東日本全体が広範囲に汚染されました。事故の収束も全くしていません。現時点で福島原発から出ている空気中の放射性物質は、2011年3月後半に比べればかなり少ないです。ですから、事故直後の半月にまき散らされ、大地を汚染している汚染物質とどう向き合うかが大きな課題です。
 そして放射性物質はどんなに微量でも人体に病気を引き起こします。日本政府は事故直後から「年間100ミリシーベルトまでは健康に影響がない」という政策を行っていますが、まったく違います。現在福島では、子どもの甲状腺がんが従来の知見からすれば異常な割合で増えています。それが被曝の影響なのかを明確にするためには国がきちんと調査することが必要ですが、隠すことしか頭にないから調査をしない。おそらく、甲状腺がんの増加は認めると思いますが、他の病気の増加や影響は一切認めないでしょう。
 被曝はあらゆる病気を引き起こします。東日本で現在出ている多くの病気に、被曝が影響しているはずです。被曝を減らすことが不可欠です。日本が法治国家なら、やるべきことは人々をコミュニティ丸ごと移住させる政策です。しかし、政府はやろうとしません。ですからすでに保養キャンプを全国の市民が頑張ってきましたが、まず子どもだけでも移住させることが必要です。

――昨年6月のインタビューで、「政府は『原子力緊急事態宣言』により、人々を避難させるのではなく、汚染地帯に放置した」と批判されましたが、今や浪江や富岡など避難指示が次々と解除され、区域外避難者の住宅支援が打ち切られようとしています。
小出…とんでもない政策です。2011年3月から、福島県や東北地方、関東地方の広範囲が「放射線管理区域」並みの汚染になっています。そこは一般の人の立ち入りが禁じられ、かつての私のような「放射線業務従事者」だけが立ち入りでき、しかしトイレもなければ飲食も禁じられた場所です。そこに普通の市民や赤ん坊も捨て置いている。大変なことです。しかも、政府は「福島に戻ってこい」と住宅支援を止め始めた。これでは人々は汚染地に戻るしかなくなります。避難をした人、したい人への住宅支援は、必須の政策です。

地上と地下に三基分の石棺を

 
――東電が「過去最高の毎時650シーベルトを計測した」と発表しました。人間が入れず、ロボットも故障するとてつもない線量の中で、建屋内の状況と、必要な収束作業をお聞かせ下さい。
小出…650シーベルトは、人が1分以内で必ず死ぬ線量です。そして数値だけでなく、どこでそれが計測されたかが重要です。コンクリート製の台座=「ペデスタル」の壁と格納容器の壁の間でした。国や東電が発表した廃炉工程表の中で、熔け落ちた炉心をいつどのように取り出すかが書かれています。ペデスタルの内部に饅頭のように堆積しているとして、それを掴み出して収束させる、と言ってきました。
 しかし私は、「熔けた炉心は、ペデスタルの外側に流れ出ているはずだ」と言ってきました。今回の調査で、外部に流れ出て飛び散っていることが証明されました。それがあの線量です。熔け落ちた核燃料を、東電が言うように掴み出すことはできません。
 石棺を作り、封じ込めることが必要です。しかし、チェルノブイリ事故の石棺は1基のみで地上だけに作りましたが、福島は外側から地下水がどんどん流れ込むので、地上と地下の両方に作ることが必要です。しかも三基分です。とてつもなく長く大変な収束作業になり、今生きている私たちは、誰もその終わりを見ることはできません。

――そうなると凄まじく多くの作業員が必要になりますが、現実には作業員の労働者としての権利や健康維持は踏みにじられています。
小出…チェルノブイリの収束作業は80万人もの人々が必要とされました。しかも、事故後30年たった昨年末に新たに石棺を作り直しましたが、その第2石棺も耐用年数は100年。そのたびに新たな作業員が必要になります。
 福島はさらに時間がかかるため、何十~何百万人もの作業員が必要になります。政府は、福島原発事故を忘れさせるためにオリンピックを盛り上げ、労働者を五輪に吸い上げているため、作業員は不足し、手当もされません。すでに山谷や釜ヶ崎の日雇い労働者も多く働いていますし、外国人労働者も増えて、現場で言葉が通じなくなっていると聞いています。今後、ますます外国から労働者を大量に収束作業へ連れてくるでしょう。そのような形での作業員の投入や差別的な扱いは、許されません。

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