越境組織犯罪防止条約を口実に、共謀罪を成立させようとする政府 本音は国民対象の治安立法

またもや共謀罪 国会上程へ(1)会話だけであなたも逮捕?─「国際協調」は政府の建前

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 犯罪行為がなくても、700に及ぶ犯罪について共謀(相談)しただけで処罰される共謀罪が、次期国会に再提案されそうだ。今臨時国会で安倍政権は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)承認案などの審議を優先すべきだと判断。「テロ等組織犯罪準備罪」の法案提出は見送られたが、2020年の東京オリンピック開催に向けて、テロ対策の重要性を強調。組織犯罪処罰法を改正し、「テロ等組織犯罪準備罪」を新設する法案を計画している。
 共謀罪は、「処罰の前倒しの究極だ」と指摘するのは、永嶋靖久弁護士だ。「治安維持法の再来」と呼ばれ、「思想・良心・表現を大きく制約し、密告と監視で労働組合の活動やさまざまな市民活動を抑圧しようとする希代の悪法」と批判する。
 10月17日、「共謀罪の国会上程を許すな! 大阪緊急集会」(主催/共謀罪に反対する市民連絡会・関西)での同氏の講演内容や日弁連の資料を紹介しながら、共謀罪の危険性を考えたい。政府与党は、共謀罪法案の過去3度の廃案を教訓とし、議論のいとまを与えることなく一気に成立させることをめざして、反対運動の動向をうかがっている。慎重に検討されているのは、国会提出のタイミングだ。3回にわたって掲載する。

(文責・編集部)

共謀罪って?─具体的事例

 法務省は、共謀罪について「暴力団による組織的な殺傷事件や悪徳商法などの組織的詐欺などが対象で、国民の一般的な社会活動に適用されることはない」と説明している。しかし、共謀罪が規定する「団体」は、犯罪組織に限られていない。法案内容を適用すれば、次のような行為はすべて「共謀罪」として捜査・逮捕・起訴の対象となる。
 まず、共謀罪に反対する市民団体が指摘する身近な例から紹介する。
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★購入したCDをコピーして友人に売る相談
 個人用に2400円で購入した人気歌手のCDを5枚コピーして友人に400円で譲ることを提案し、合意すると、「著作権法 著作権等の侵害」で共謀罪成立。
★雑誌の写真を使って作ったしおりをフリーマーケットで売る相談
 雑誌に載っているかわいい猫の写真を貼って作ったしおりをフリーマーケットで売ろうと計画し、写真の選定、切り抜き、貼り付けなど役割分担を決める。これも「著作権法 著作権等の侵害」で共謀罪の対象。
★新入生に一気飲みさせようと相談
 サークルの新入生歓迎パーティで順番に一気飲みをさせようという話になり、いっせいに盛り上がるが、数日後、以前他のサークルで飲めない学生が急性アルコール中毒になったと聞いて、やめることになった。これは、「組織犯罪処罰法・組織的強要」の共謀罪の対象だ。いったん「やる」と合意をしたら、あとで「やめる」と決めても共謀罪は成立する、という。
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 次に、「社会運動が狙われたら?」という例だ。
★悪徳企業の商品を買うのをやめようとPTAで相談
 発がん性添加物の使用記載を何年も怠っていた食品会社に憤慨し、その全商品を買うのをやめようとPTAの会合で意見が一致した。これは、組織犯罪処罰法と組織的威力業務妨害の共謀罪。
★悪徳企業の前で不買呼びかけのビラをまこうと相談
 貴重な海外原生林を違法伐採した木材で製品を作る家具メーカーに対し、何度も抗議文書を出すが、対応する兆しが見えないので、会社前で不買を呼びかけるビラをまこうとミーティングで決める。組織犯罪処罰法 組織的威力業務妨害。
★要求に応じるまで社長を缶詰にして交渉しようと相談
 経営難のため、工場の安全対策経費を削減しようとする社長に対して、労働組合側が社長にその方針を撤回するよう求めにいくことにする。つい最近も仲間が事故にあった数人が熱くなり、社長が要求を呑むまではぜったい家に帰さないと息巻く。組織犯罪処罰法 組織的な監禁。

曖昧な基準「あうんの呼吸で成立」?

 共謀罪の要件は、(1)団体とは、2人以上で役割分担があれば成立するので、3人以上の高校生が万引きの相談をしたとすれば、繰り返す可能性が認定されれば、共謀罪が成立する。
 また、(2)共謀の内容について法務省は、「具体的・現実的な合意」とされ、「漠然とした相談」「意気投合した程度」は成立しない、と答弁している。
 しかし、「両者は程度の問題であり前者と後者を区別することは不可能」というのが、永嶋弁護士の見解だ。さらに、血判状が共謀罪成立の要件とされているわけではないので、「あうんの呼吸で成立する」と法務省官僚が国会で答弁している。
 つまり、「何が犯罪となるのか? 団体の要件も、どの時点で共謀罪が成立したとされるのか?も曖昧模糊とした法案となっている」(同弁護士)という。
 こうした曖昧な基準で共謀罪が適用される犯罪(700以上)の一部を紹介しておく。―窃盗・詐欺・恐喝・横領・組織的な強要・準強制わいせつ・特別公務員職権濫用・協同組織金融機関の財産を危うくする罪・受託収賄・危険運転致傷・業務上過失致死傷等・同意堕胎致死傷。
 後述するが、体感治安の悪化を根拠に刑罰の重罰化が進んでおり、共謀罪対象犯罪は今後も増え続ける。
 さらに永嶋弁護士は、「既遂で無罪となっても、共謀罪は成立する」と指摘する。現行刑法は、既遂処罰が原則で、未遂は原則として罰せられないし、未遂犯の刑罰は軽減される。したがって予備罪は、例外中の例外だ。
 ところが「共謀罪は、別々の犯罪なので、既遂で無罪となっても、共謀罪で裁判となり有罪もあり得るのです」(同弁護士)。驚くべき指摘だが、ロス疑惑の三浦さんは、殺人罪で無罪となったが、「殺人の共謀」(米国法)が疑われてグアムで逮捕された。

【お詫びと訂正】
 本記事中、訂正ないし説明を要する部分がありました。(※についてはWeb版では修正済みです)
 (1)見出し 「越境組織犯罪防止法」ではありません。「越境組織犯罪防止条約を口実に、共謀罪を成立させようとしている」と表現すべきでした。※
 (2)共謀罪の身近な具体例は、「日弁連」ではなく、「共謀罪に反対する市民団体」が指摘している例です。※
 (3)共謀罪の要件は、「(1)団体とは,2人以上で役割分担があれば成立するので、3人以上の高校生が万引きの相談をしたとすれば、繰り返す可能性が認定されれば…」と書きましたが、正確な共謀罪の要件は、(1)「団体とは多数人の継続的結合体」とされるが、共謀罪の成立には団体が現に存在している必要はないので、2人以上の高校生が万引きの相談をしただけでも、団体として繰り返す可能性が認定されれば共謀罪の対象となります。
 以上、お詫びをして訂正いたします。(編集部)

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