共同して自己責任論を批判し続ける

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どこまで行くの?「社会保障制度改革」 ~「障がい」のいまとこれから

きょうされん大阪支部事務局長 雨田 信幸さん

9月30日、反貧困ネットワーク大阪主催の学習会「『障害』のいまとこれから」が開催された。講師は雨田信幸さん(きょうされん大阪支部事務局長)。小泉政権時に進められた利用契約制度の問題点を改めて振り返るとともに、2013年に施行された「障害者総合支援法」の課題を中心に紹介する。(編集部)
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障害者の尊厳 傷つける応益負担制度

 問題点のひとつは、利用契約制度です。障がい者福祉が「措置から契約へ」の名のもとに契約制度になり、現金が介在した制度の枠組みに変えられました。また、応益負担制度が導入され、あらゆる支援に対する1割負担が決められました。しかし、生きるために必要な支援が利益といえるのでしょうか? 国は「サービスを使う/買うのだから負担は必要だ」と説明していますが、歩くにもトイレに行くにもお金がかかることになります。
 また、作業所の工賃が就労支援B型などで時給100円以下と極めて低く支給されるのが一般的です。加えて、働きにいって社会参加しようとしても、そのお金は「サービス利用料」で消えてしまうのです。この制度は障がい者の生きる尊厳と人権を傷つけています。この応益負担制度は、当事者運動の成果として、また障害者権利条約の批准によって、民主党政権時に原則無料となりました。しかし、非課税世帯以上などを「一般所得者」として、「応益負担」を名目に事実上の利用料が課せられています。
 もうひとつの問題点は障がい程度区分や要介護区分が加わり、本人の必要性よりも、区分で受けられるサービスが変わります。障がい者施設の利用料も月割算定ではなく日割算定となりました。「利用者の選択肢が広がる」と厚労省は説明しましたが、事業所は結果として2~3割の収入減です。
 例えば、台風16号がくると、学校や保育所は休みになり、障がい者施設も休所になります。休みになると、日割の算定なので、お金が入ってきません。法人という単位になると1日数百万というお金が入ってこなくなり、運営が厳しくなります。これに対して国からは何の支援もありません。事業が安定しないということは、支援の不安定化につながります。
 利用者の側としても、「1日で○○円」と積み上がり、食材費も実費負担に変わりました。結果的に、作業所に毎日通っていた人が、部分的にしか通えなくなることにつながっています。
 「作業所に行かない/行けない」ということは、生活リズムが崩れ、身につけていた力が発揮できなくなることを意味します。障がいの重度化に伴う本人と家族への負担によって、家族内で加害/被害事件が発生する新たな要因となっています。

生活実態無視した 総合支援法の運用例

 2013年に施行された「障害者総合支援法」は、介護保険と似ています。事業としては、(1)地域生活支援事業と、(2)自立生活支援の2つにわかれています。
 地域生活支援事業は、市町村が実施する事業で、財源は国の総合補助金です。必須と任意のものがあり、組み合わせは市町村の判断になっています。これによって地域間格差が激しくなり、住んでいる地域によって受けられる支援が異なるという事態が発生しています。
 大阪南部の事例を紹介します。ある訪問介護利用者が、移動支援制度を使ってカラオケに行き、帰り道に洗剤を買いました。自治体に請求を出すと、担当者が「洗剤を買うのは介護保険でやりなさい。移動支援ではダメです。買わずに取り置きしてもらいなさい」という対応で、実態を無視した制度ありきの運用となっています。
 「自立生活支援」については、グループホームの利用者で一人暮らしを希望する人に「自活して生活できるよう援助していく」とされています。ところが実態は、障がい区分=軽度1・2の人がグループホームから排除されてしまうような流れが前提となっています。
 また、高齢障がい者の介護保険対象者は、原則的に介護保険利用となります。65歳以前には利用料負担のなかった人が、65歳を迎えると「介護保険の利用を優先」させられ、1割負担が課せられます。
 さらに、介護保険の認定区分との差異もあり、事業者・職員も変わります。このため、慣れたヘルパーさんによる病院への付き添いができなくなる、あるいは、入院すると「医療対応」となってヘルパーからの介助が受けられない、といった問題が発生しました。
 こうして障がいや必要に応じた個別性が無視されたために、障がいが重度化し、自傷行為を行うといったことも発生しています。
 このため、生活実態を無視した介護保険の適用をめぐって、訴訟が各地で起きました。2013年、浅田達雄さんは、上述の問題点から介護保険利用を拒否するという抗議の意思を示し続けました。浅田さんが65歳を迎えた途端、市から重度訪問介護の打ち切りが言い渡されたからです。249時間/月の自立支援給付がゼロになり、ヘルパーさんにきてもらうと全額自己負担です。浅田さんの裁判は、4年目を迎えています。
 障がいと貧困の問題は密接です。障がい者本人の貧困だけではなく、家族も貧困に陥いることになります。また、介護労働者の賃金水準も非常に低いままです。私たちは、共同して自己責任論を批判し続けなければいけないと思います。

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