利用者負担を際限なく求める「制度改革」

反貧困ネットワーク大阪連続学習会第1回:「介護」のいまとこれから

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大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員 日下部 雅喜

 政府主催「一億総活躍社会集会」批判(3月25日号)、『ブラック化する保育』(5月15日号)に続き、今回は介護問題の実態と現場に迫った記事を2つ、読者のみなさんに紹介する。安倍政権が標榜する「一億総活躍社会」とは何か? 関連する個別具体的なテーマを取り上げながら、報告を続ける予定だ。

(編集部・ラボルテ)

 介護保険制度が始まった当初、利用者は約149万人でしたが、16年経った現在は500万人を超えました。介護問題の現状と政府の「改革」をみていきましょう。
 まず、サービス提供主体である介護事業所は、主に介護保険から報酬を得て運営しており、報酬額は3年に1回見直されています。報酬額は引き上げられていますが、物価などの実質ベースでみると、昨年の介護報酬は平均5%の減少です。
 これは、「とんとんだった事業所が赤字になる」ということです。実際に事業所の約30%が事業の縮小・整理・撤廃を余儀なくされていることが明らかになっています(大阪社保教・2015年)。
 労働問題でみれば、介護労働者の89%が女性であり、約6割が50歳以上なのです。圧倒的に「高齢女性ヘルパー」が多いのです。10年後に、身体介護や夜間訪問など肉体的負荷の強い業務は成り立つのでしょうか? 介護労働者が集まらない理由として、他産業との比較で介護職の月額給料は10万円ほど給料が低いことがあります。これは保育士不足と重なるところで、「やる気のある人」か「他の産業で働くことが難しい人」しか集まってきません。
 一方、介護利用者の側は介護施設に「何年も入れない状態」が続いており、「要介護4や5で入所できない人」は52万人です。日本全国の介護施設のベット数は51万床なので、待機率は100%に近いのです。また、「介護退職」は、年間10万人、介護心中は、明らかなケースだけでも年間50件を越えています。介護労働者が集まらず、制度の実質的な利用のハードルが高く、制度として家族介護を前提としているがゆえに、介護退職に追い込まれます。生計者の退職によって貧困に追い込まれ、その上で保険料を払い続けなければならない現状を踏まえれば、制度が成功しているとはいえません。

「軽度者」切り捨て

 政府は、社会保障費の自然増に対して、年間3000~5000億円を削減する、と閣議決定(骨太の方針・2015年)で明らかにしました。介護保険は、所得に関係なく1割負担でしたが、(1)一定以上所得者(所得換算で年収160万円以上の層)、(2)1000万円以上の預金のある非課税世帯、(3)配偶者が課税の人を対象に、2割負担に変更するとしています。
 介護保険について、昨年10月に財務省が出した資料によれば、「要介護1・2の軽度者」への支出を見直すとしています。低所得者層に対して一部補助とするとしているものの、軽度者への生活援助(掃除・洗濯・調理など)を介護保険からも市町村事業からも外して「原則自己負担」化し、車いすや電動ベッドなどの福祉用具についても原則自己負担化されます。デイサービスについては、利用できるかどうかわからない、市町村事業への移行を検討しています。
 究極の「軽度者切り捨て」が、堂々と掲げられているのです。これは、遅くとも来年の通常国会に法案として出される見通しとなっています。

マイナンバー活用「安価な労働力」確保

 次の改革課題では、2019年までに74歳以下一律2割負担が掲げられていますが、これは70~74歳の医療保険2割負担への移行を踏まえて、「公平性」を保つことを理由としています。また、介護分野を含めた社会保障全般にマイナンバーを活用した新たな利用者負担を求めることも閣議決定されており、介護保険利用について、一定以上の資産が明らかになれば2割以上の負担を求めていくとしています。
 利用者の負担増や介護労働者の不足に対して、政府の対策は、(1)NPOやボランティアの活用、(2)無資格ヘルパーの公認、(3)外国人労働者の導入、を検討しています。
 7月に参議院選挙が控えています。憲法9条や25条を踏みにじる暴走を続ける安倍政権への闘いも含めて、今後は、監査請求や訴訟などを通して情勢を変えていきたいと考えています。

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