権力による学問への介入、歴史修正主義、フェミニズムバッシングに抗う フリーライター 谷町 邦子

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第3回フェミニズム科研費裁判、杉田被告の「一般論」「論評」との抗弁に反論

2月13日、「フェミ科研費裁判」第3回口頭弁論が京都地方裁判所で行われた。杉田水脈衆議院議員による、科学研究費を使用したジェンダー研究への中傷が、「名誉棄損」の成立要件=「事実の適示」ではなく「論評の範囲」だ、という被告側の主張に反論した。

裁判の流れを止め 傍聴人の前で杉田氏側主張に反論

 15時から行われた裁判では、88名もの人が傍聴に集まり大法廷は満席。第1回から見守り続けている人や、中には傍聴自体が初という人も。


 裁判は当初、被告側の主張が書かれた準備書面に対し、原告側が用意した準備書面で反論する形で進み、傍聴席からはやりとりの内容がわからない状態で裁判は終わるかに思えた。しかし、原告側の吉田弁護士が「口頭で陳述させてください」と流れを止め、被告側代理人が渋る場面もあったが、鳥飼晃嗣裁判長をはじめとする裁判官らが協議の結果、許可された。吉田弁護士は、杉田議員が原告の研究者らの発言や論文を明示したうえで、研究が正当性のないものとしたり、科研費が不正に使用されていると思わせるような発言を行っていたと、被告側の「論評」という主張を否定した。


 支援者集会では「(名誉棄損について争う)今回の裁判では、何が『事実』かが非常に重要」と、原告側の上瀧弁護士が解説。裁判における「事実」は真実とは異なり、「何年何月何日に誰々はここで泥棒した」などという、確認できる具体的な事柄を指す。


 相手が「事実」を述べていることが裁判官に認められたら、今度はそれが本当かどうかを実証する「真実性の実証」という段階に入ると、裁判の仕組みを説明した。

旧日本軍「慰安婦」研究示し 「ねつ造」も「一般論」と主張

 杉田議員は牟田教授のTwitter上での「『慰安婦』問題は#MeTooだ!」という発言を引用した上で「ねつ造はダメです」と発言。また、動画で岡野教授の論文を指し示し、「慰安婦は性奴隷」という結論ありきで、自分の論に沿う感想を適当に拾ってきているだけと述べるなどしている。


 被告側は準備書面において、杉田議員の言動を「論評の範囲」、あるいは「一般論である」とし、名誉棄損の要件である「事実の適示」に当たらないと主張していたが、上瀧弁護士は「『事実』は、直接的な言葉で『何年何月何日にやった』と言わなくても、文脈から具体的に事実を伝えていれば認められます」と反論。


 上瀧弁護士は杉田議員の言動の悪質さを、嘘を言って貶めたことにあるという。例えばある人物に対して「あの人はバカよね」と罵倒するより、「泥棒をした」という具体性のある嘘のほうが社会的な評価を貶める度合が大きく、名誉棄損に当たるからだ。


 今後は、「一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは(中略)事実の摘示を含むものというべき」という「平成9年9月9日最高裁判所第三小法廷判決」に基づき、杉田議員の一つひとつの発言を取り上げて「事実の適示」を主張していくとのこと。


 次回期日は4月20日(月)15時30分から。国会議員による学問への介入、日本の戦時性暴力の歴史の修正、フェミニズムバッシングなどに対する闘いを今後も見守りたい。

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