拡がる貧困格差、独裁政権の腐敗
香港の民衆蜂起を継続的に紹介してきたが、世界中で独裁的政府の腐敗や経済格差・貧困に対する民衆反乱が多発している。気候変動、米国の一国主義、資本主義世界の矛盾が極点に達している。弾圧も激化している。今年の最終号は、世界各地民衆の反乱と要因を簡潔にお伝えする。(文責:編集部)
世界に広がる「未来のための金曜日」自治権求める民衆反乱
2010年代の民衆運動は、広場の占拠運動に始まり、先住民や南側諸国を筆頭に地球温暖化対策の要求運動が全世界で高揚した。
今年は、スウェーデンの高校生グレタさんが座り込みを始めたことも共感を呼び、「未来のための金曜日」として世界に拡がった。学生の学校ストライキに大人たちも合流し、9月20日(国連気候サミット)、11月29日(COP25)には全世界同時デモが行われた(日本各地でも開催)。行動は連日続き、英国では10月に「絶滅への反抗」が、非暴力直接行動でロンドン要所を占拠し、警察が強制排除した。世界同時行動は今後も続く。
地球と生命の存続か、資本主義の延命による破滅かが問われている。
香港は、区議会選挙で民主派が歴史的圧勝をし、「5大要求」実現を求め12月8日も80万人デモが行われた。
スペインのバルセロナがあるカタルーニャ州の独立運動は、スペイン政府が2年前の独立住民投票の勝利を認めず、州政府閣僚らを国家反逆罪で逮捕。今年10月に州の前副首相に禁固13年の最高刑などが下されたことに抗議。州全域で数十万人のデモが続いている。香港との連帯も進み、カタルーニャでも空港封鎖を実行。10月24日には同時集会が実現した。
インドネシア領パプアニューギニアでも、学生の大量逮捕を契機に独立を求めるデモが8月から始まった。軍の導入で多くの死傷者が出ている。
また、シリア北部から北東部にかけて広がる事実上のクルド人自治区「ロジャヴァ」は、13年にシリアからの独立を宣言した。だが米軍撤退後の今年10月からトルコが武力侵攻してきたため、抵抗が続いている。同自治区は、民族国家ではなく各地区の住民自治組織を基本にした連邦制という、世界的にも希有な試みを続けている。
軍事独裁政権の汚職貧困に怒る中東人民
欧米大国の介入の犠牲にされてきたアラブ諸国でも反乱が起きている。米国の武力攻撃によって国家を破壊されたイラクの民衆は、厳しい貧困と、15年間で約5兆円を横領していた政治家腐敗に対し10月から怒りのデモを開始。首相は武力弾圧で200名以上を殺害した。
エジプトでも、9月から大統領と軍部の汚職発覚を機に辞任要求のデモが拡大、3000人以上が逮捕された。
スーダンでは、昨年末から食料値上げに抗議し大統領辞任要求デモが勃発。弾圧で数百人もの死者を出しながらも闘争を続け、8月に軍事独裁政権から民主政権への移管手続きを勝ち取った。
アルジェリアでも、腐敗した現体制の総退陣と新共和国の樹立を求めてデモが拡大している。
多国籍企業への優遇措置 運賃値上げに数百万人が抗議デモ
中米ハイチでは、大統領や役人がベネズエラからの援助金を横領していた疑いが出て、9月以降、人口の半分の約500万人が抗議デモや道路封鎖に参加した。政府はギャングを雇って弾圧、100名近くも殺害した。水道や食糧配給など都市機能全体が停止した。
中東レバノンでは、ガソリンや携帯電話SNSへの課税抗議をきっかけに、全政治家の退陣を求めて数十万人の民衆が広場へ繰り出した。首相は課税を撤回したが民衆は抗議を続け、内閣総辞職に追い込んだ。
ハイチやレバノンに共通するのは、多国籍企業への法人税を安くし、企業の税逃れに依拠し利用される経済体制が作られていることだ。こうした経済体制と腐敗した政府の両方を変革するため、人々は闘っている。
南米は00年代から続々左派政権が生まれ、新自由主義を是正する多くの改革を行ってきた。しかし近年は失墜し、ブラジル・ボルソナロに代表される極右政権が台頭している。
1970年代から新自由主義の実験場にされてきたチリでは、物価が日本とほぼ同じなのに、平均月収が約7万円にとどまる貧困と、国民所得の上位10%が下位10%の25倍という格差が拡大している。
同国でも、新たな運動が始まった。10月7日に交通費値上げに抗議する学生たちが首都で地下鉄無賃乗車運動を始め、18日から全土で公共サービスの回復と格差是正を求める巨大な抗議運動に発展した。このためAPECもCOP25も中止に追いこまれた。大統領は「非常事態」を宣言し、運動を武力弾圧。多数の死者と逮捕者を出しながらも反乱は続いている。
エクアドルでも、10月1日に政府がIMFと合意した燃料補助金制度の廃止令に抗議し、翌日から先住民や労働組合が全土でストや道路封鎖に突入。多数の死傷者を出しながらも、政府に廃止令を撤回させた。
安倍政権の腐敗に沈黙する日本のメディア・民衆
中南米や中東~アフリカに共通するのは、欧米の新自由主義経済の押しつけと、それを利用した自国政権の独裁・腐敗だ。闘わなければ生きられない状態に追い込まれ、闘争が拡大している。世界的矛盾の中心にあり続けたパレスチナ・ガザでは、昨年3月から「帰還の大行進」がイスラエルの弾圧に抗して続いている。
矛盾は日本や「北側諸国」にも広がっている。フランスの「黄色いベスト」運動なども、12月5日には年金改悪に抗議するゼネストを全土で行い、ほとんどの公共機関を止めた。
日本も韓国への経済制裁や「桜を見る会」に象徴される安倍長期政権の腐敗は根深いが、間韓日の民衆運動は、日本の戦争責任追及と「反安倍」での連携を深めている。
来年も世界と日本の民衆闘争に注目する。