雅子を最大限利用したパレードや弾圧に抗し
10月22日即位式、11月10日即位パレード、14~15日に大嘗祭と、新天皇の大規模行事が続く。違憲の宗教儀式、莫大な税金と過剰警備など、天皇制を批判的に考える機会にしえたはずだが、政治やメディアは礼賛に終始。 それでも各地で反対行動が行われ、本紙既報の東京デモへの弾圧は全員釈放された。今回は全国各地―福岡、静岡、富山の運動の動きや想いを紹介する。 (編集部)
差異を捨て反天皇制闘争に団結 福岡市民救援会 事務局長 まえだヒソカ
2016年にアキヒト元天皇が「生前退位」と言い出し、天皇贔屓の報道が増えた。経済的に暗くなりがちだったこの国に「改元」は明るさを演出するワードとして歓迎されたのか。そして「特別な休日」の大安売り、天皇即位祝賀キャンペーンに黙ってはいられなかった。
「天皇制に問題あり!福岡連絡会」(てんもんれん)が呼びかけて、「天皇代替わりを問う九州山口連絡会」を結成し、2018年「いらんばい!天皇制12・22集会」、2019年「いらんばい!天皇制4・29集会」、「いらんばい!天皇制10・19集会」と続けて集会とデモを行った。また、「てんもんれん」で、福岡市議会の天皇即位賀詞決議や記帳所設置への抗議申し入れ。
大嘗祭が行われる当日には、また各地で反対闘争が組まれると思うが、福岡では、なかなか日程が入らなかった。11月14日午後6時半から1時間ほどの天神パルコ前情宣という形になるが、福岡から「やめろ!大嘗祭」の声をあげていきたい。 福岡の反天皇制闘争は、反戦、反原発、反基地、反弾圧などさまざまな市民グループも労働組合も宗教者も、一緒にやっている。まあ、政治的活動に参加する人数が少ないため、細かな差異にこだわっていられないというのが本当のところ。仲良くなくても団結できるところ(闘争)は団結するということだ。
天皇制は権力そのものであり、歯向かえば弾圧の餌食。だから福岡では天皇制反対闘争は、警察・司法権力と闘う反弾圧闘争と同じような体制で取り組まれている。
最近の天皇即位式の前に各地で予防弾圧があった。既に釈放されたが、即位式当日も東京で3人の被逮捕者が出た。関西生コン支部への弾圧の前には人民新聞社への弾圧があった。
権力は多岐にわたる運動の拠点を狙っている。今は労働組合潰しにかかっている。非常に険しい道ながら、人民新聞社が国賠訴訟という形で反撃していることは頼もしい。わたしたちは決して権力にやられっぱなしではいけない。弾圧で潰されるどころか、団結してしまう。そうありたい。
代替わり儀式は憲法違反 「異議あり」と叫び続ける 天皇制を考える会・静岡 山河 進
東京や大阪の先進的な反天皇制運動に学びながら、10年前に会を立ち上げた。以来、4・29「昭和の日」反対、12・23「天皇誕生日」反対の両集会を中心に反天皇制運動をおこなってきた。
前回「代替わり」の時、静岡でも県の集会場貸出し拒否をめぐって大きな裁判闘争があった。東京高裁で、(1)たとえ天皇制に関する内容であっても「表現の自由」は保障されなくてはならない、(2)右翼の妨害があったとしても行政はこれを排除して市民の「表現の自由」を守る義務がある、という内容の判決が出て、これが確定した。「表現の不自由展・その後」展示の中止問題に関連して、ぜひとも記録しておきたい事柄である。
このような先輩たちの闘いを引き継ぎながら、今年は「代替わり」儀式の年ということで2カ月に一度くらいのペースで集会を、そしてデモをおこなってきた。
今回のアキヒト主導の「代替わり」は、単なる個人の健康問題ではなく、天皇制の再編・強化に関わるものだと思う。上皇家・天皇家・皇嗣家のトロイカ体制によって切れ目なく、遅滞なく、強力に「国民統合」をおこなってゆくための改編。
最大の目的は、皇室典範特例法によって天皇の「公的行為」を法文化することだった。
これは、自民党改憲草案の先取りであり、安倍政権の「天皇を戴く」戦争国家作りにかなうものだと言えるだろう。
「王の権力を制限し、人民の権利を擁護する」というのが立憲主義の出発点だとするなら、憲法の主権在民や平等原則、政教分離の規定に反するこのような「代替わり」儀式がまかり通るはずはない。
たとえ人数は少なくとも「異議あり!」と叫ぶ価値は十分あると思う。一億総「祝賀」ムードの中、「民主主義に天皇はいらない!」と叫び続けたい!
敗戦後70余年、アジアからの 責任追及を免れてきた象徴天皇 生・労働・運動ネット 富山
この度の改元/即位の「空騒ぎ」は、明らかにアジア民衆に対する、日本の戦争責任・戦後責任・植民地責任を不問に付す意図を持つものである。私・たちは、そうした国家の意図をくっきりと浮かび上がらせると同時に、今また東アジアの中で孤立を深めるこの日本のあり方からの「脱出」を展望するための手掛かりを求めて、『声のドラマ:〈脱出〉―千波万波をのりこえん―』の上演に取り組んだ。
11月2日(土)、私・たちは、自由で対抗的な論議の創出をめざす「『生の拡充/生のサンジカ』プロジェクト・2019」の一環として、『声のドラマ:〈脱出〉千波万波をのりこえん』の上演を行った。これは、劉連仁さんに関わる木島始の詩『脱出』を、カンタータとして林光が構成したものをもとに、私・たちが「声のドラマ」に構成し直したものだ。
1944年、中国山東省から北海道の炭鉱へと「強制連行」され、炭鉱を「脱出」した後、戦争が終わったことも知らぬまま13年間も北海道内を彷徨った末、雪穴の中で「発見」された劉連仁さん。劉さんの存在は、戦争の最高責任者たる「帝国元帥」の子孫と、その子孫を崇め奉り続ける日本国家を決して許さないものとしてあり続けている(帰国後、劉連仁さんは、日本政府を相手に謝罪と損害賠償を求め提訴。2000年に劉さんが亡くなった後も、彼の息子が訴訟を引き継ぐが、2007年、日本の最高裁判所は劉さんの訴えを退けた)。
敗戦後70余年、一貫してアジアに対して自らを閉ざし、閉ざすことでアジアからの責任追及を免れてきた日本。その日本国家を、この列島に住まうアジア出自の人々とともにアジアに向かって開いていくことが、私・たちの課題ではないか。
また、列島社会の未来を東アジア全体の未来に重ねようとする者たちの「系譜」(その一人として尾崎秀実が紹介された)があり、自分たち自身も、その「系譜」に連なる人々の息吹に触れることで、この列島社会をアジアの民衆へと開いていく展望を引き寄せていきたいと、上演後のフリートークで語り合った。
なお、11月2日の『声のドラマ:〈脱出〉―千波万波をのりこえん―』は、以下の「生・労働・運動ネット富山」のURLで視聴可能。https://net-jammers.net/pro/2019-11-02.html