人種差別・民族差別は心を破壊する
アイヌからの略奪 知らなかった自分
香:「アイヌの歴史」を小学校で習うけど、土地を収奪した話はされません。文化もエキゾチックなものとして扱われ、私たち「和人」がそれを禁止したことには触れません。
戸:「開拓してみんなで近代化しました」と?
香:アイヌから全て奪って私たちが入植したということを大人になってから知って、ほんと自分が恥ずかしいです。
戸:でも「土地を手放します」とも言えないし。
香:そうです。だから今動き出しているヘイトに反対することが、私ができるせめてもの行動だと思ってます。
アイヌヘイトも「在日がなりすましてるんじゃないか」とか、結局は在日ヘイトとつながっています。ここまで妄想的な在日ヘイトが起こるのは何なんだろうと。
戸:ネットでは「断固闘ってくれるアネキだ」という香山さんへの評価があります。
香:もう50代後半で、まだ元気で頑張れる人生が何年残っているか分かんないし、今さら遠慮しても後悔が残る気がするんですよ。
私自身は大学教授で、医者で安定雇用の身分ですよね。日本人だし。マジョリティの人たちが「こんな世の中おかしいよ」って声を上げるのが大事だな、とは思ってますね。
私は、若い時にバブルの華やかな時代の中でものを書いたりメディア出演したりして「いい目」にあってるわけですよ。そのあとの果ての社会がこんな荒んだ状況になっていて、今の若い人たちには「こんな世の中にしちゃってごめん」みたいな気持ちがありますよね。
戸:闘う女性は増えていますね。
香:女の人は社会的に弱い立場だから、もともと地位や権力を手にできていない。だからこそ保身に汲汲としてない。そういうの見て「すごいな」って思います。
戸:ヘイト問題の社会的認知については?
香:まだまだみんな知らないんですよね。東京のカンナマ弾圧反対の集会で、ヘイトスピーチのようすが上映されました。憲法の問題などに取り組んできた市民ですら、それでやっと「ヘイトってこんなにひどいんだ!」と知ったようです。
戸:その動画を作った側として嬉しいです。
―取材を終えて
香山さんと私は「ネット的には旧知」でも4月市議選でサプライズ応援に来てもらった時が「初遭遇」。そして私が落選しても応援してくれ、カウンターの人たちが開いてくれた激励会にも参加。そこでこのインタビューが生まれた。
取材では香山さんの「差別の入れ子構造」への洞察と義侠心を再認識した上に「アイヌウタリ侵略者としての北海道民という自己認識」が香山さんの反ヘイトの基盤にある重さを初めて知ったことが印象深かった。