世界中に広がる労働者協同組合 地域主権・循環型経済めざす ささえあい生協新潟 高見 優さんインタビュー

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 「ささえあいコミュニティ生活協同組合新潟」(以下「ささえあい生協新潟」)は、高齢者生協として小規模多機能型居宅介護事業所(10カ所)を中心に、若者サポートステーション、障害者自立支援事業なども行う労働者協同組合だ。2006年に生協法人として認可を受け、組合員:1500人(出資金:1億2千万円)、職員:250人、事業高:8億9千万円まで発展してきた。地域政党=「市民新党にいがた」から緑の党へと、地域で政治活動を積み重ねてきた高見優さんは、「政治と経済それに文化の運動を加えてバランスよく、地域に根を張り社会活動をすることが、地域変革の道」と語る。新潟市内でインタビューした。   (文責・編集部)

 かつて私たちは、地域主権と地域循環型経済を提言し、「市民新党にいがた」を立ち上げました。しかし社会には、政治的な活動分野のほかに、経済的な事業活動分野があります。それに気づいた私たちは、事業活動で信頼関係を作り、理念も共有していく実践として、ささえあい生協を2006年に設立しました。  

事業運営で重視するのは、ピラミッド型組織ではなく、分権型です。住民のニーズと思いを出発点として、法人本部はサポートに徹します。独立採算制を採り、決定権と責任を現場に据えるボトムアップ型運営を心がけてきました。  

ささえあい生協の18事業体は、それぞれが経営会議で事業方針を立て、賃金も自分たちで決めています。ボーナスは業績に応じて出すので、理事より高いボーナスの人もいます。これらはすべて公開されています。これが私たちの現場主義です。  

設立以降、各事業所が本部運営費を何%支払うのか?、事業所ごとに異なった給与体系の標準化をどう図るか?といった問題について議論を積み重ねてきました。結成から13年経って、他の事業所や全体のことを考えない傾向=求心力の低下や、法人としての一体感をどう創るかが課題となっています。常にこうした試行錯誤をくりかえすことが重要だと思います。  

「労働」が「資本」を使う

現代資本主義の経営は、株式の時価総額で判断されるので、経営方針も短期的になっています。経営者も労働者も資本(株主)に従属していますが、株主は会社や地域への愛着などないのです。資本主義は根本的にこうした矛盾を抱えています。だからこそ今、資本と経営と労働が一体化した労働者協同組合的実践が、世界的にも見直されているのです。スペインのモンドラゴンなどの実践やソウル市の朴元淳市長が主導したソウル宣言など、協同の取り組みは世界中に広がっています。  

資本主義は、資本が労働を使うのですが、労働が資本を使う労働者協同組合の考え方こそ対抗戦略です。出資も経営も労働も三位一体で、私たちの金融機関、学校、工場、これらを通して協同組合の街=地域の自治を作るという展望です。  

地域に根を張った 社会活動自治

労働者協同組合は、一人一票の原則なので民主的運営ができることも大きな特徴です。株式会社の意思決定は出資金額に応じるので、少数の大株主が全てを決定します。未来社会は、こうした資本主義的な社会なのか、労働者協同組合的社会なのか、どちらがよりよい社会なのかという争いだと思います。  

一方私たちに重要なのは、官僚を生み出さないことです。だからこそ地域に分割した分権化した組織でなければならないと思っています。世界を変えていくには、地域の実践とともに全国構想も必要です。だから地域の小さな芽を全国に広げ、つながろうとしています。  

政治と経済それに文化の運動を加えてバランスよく、地域に根を張り社会活動をすること、しかも事業性(事業として成り立つこと)と社会性(地域全体の課題に対応する運動)を備えた総合力(政治・経済・文化の全領域にわたる人・もの・金・情報など)を高めること、それが市民の自治・民主主義ではないでしょうか。

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