韓国で拡大する「反安倍」デモ 李慈勲さん(ソウル書林)・李哲さん(在日韓国良心囚同友会代表)インタビュー

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民主化運動市民団体が主導

 7月27日、ソウル市光化門広場北側広場で、「安倍糾弾 第2次キャンドル文化祭」が行われた。主催は「安倍糾弾市民行動」という596の市民団体やNGOによる連合体。「全国民主労働組合総連盟(民主労総)」をはじめ、韓国最大の農民団体「全国農民会総連合(全農)」やキリスト教団体の「韓国YMCA全国連盟」、南北の和解協力を目指す「6・15共同宣言実現南側委員会」など韓国民主化運動の主要団体が名を連ねている。同文化祭は全国各地でリレー進行され、釜山、慶尚南道などでも開かれている。  

日本のメディアは「反日デモ」などと報道しているが、「抗議は安倍政権への怒りであり、韓日民衆連帯を望んでいる」と李慈勲さん(ソウル書林)は語る。徴用工問題に端を発した日韓両政府の深まる対立と韓国市民の思いについて、李慈勲さん、李哲さん(在日韓国良心囚同友会代表)に話を聞いた。(文責:編集部)

怒りに火をつけた 経済制裁

 安倍糾弾デモを主催したのは、「民族自主派」といわれる市民団体だ。「第2次キャンドル文化祭」という集会名称からも推測できるとおり、「2016~17年に朴槿恵大統領(当時)を退陣に追い込んだ『キャンドルデモ』を主導した勢力であり、韓国民主化運動の核心部分と言っていい」(李慈勲氏)という。  

民族自主派は、南北融和=統一をめざしており、「安倍首相が唱える自主憲法とは、戦争ができる国への回帰であり、植民地支配と戦争犯罪を認めようとしない戦争勢力の復活」(同氏)の基本認識がある。今回の「安倍糾弾デモ」も、「徴用工問題・経済制裁を直接的なきっかけとしながら、こうした戦争勢力への抗議として展開されている」(同氏)という。  

日本のマスコミは、韓国におけるこうした活動を単純に「反日」感情の高まりと伝え、日本のナショナリズムを煽る報道が多い。しかし、反安倍=日本社会全体への敵視ではなく、安倍政権と市民を明確に分けて批判していることは、注意すべきだ。  

安倍首相は、日韓請求権協定によって個人賠償問題は解決済みと主張している。しかし、日本政府が、1965年の日韓請求権協定締結当初から個人請求権は消滅していないと解釈していたことは、外務省の内部文書に書かれており、1991年8月、柳井俊二(外務省条約局長)が参議院予算委員会で、「(日韓請求権協定は)いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではない」と答弁もしている。  

李哲(在日良心囚同友会代表)氏も、「日本全体への敵視ではない」と語る。村山談話や河野談話で、公式に謝罪しているにもかかわらず、「慰安婦は売春婦」(自民党・桜田義孝衆議)などと発言する閣僚も登場した安倍政権。「韓国の抗議は、歴史をねじ曲げようとする政治家に対する批判」と語る。  

「観光旅行を自粛するという動きはありますが、日本との友好関係を維持すべきだという意識は多数派。安倍政権のように南北融和を妨害し、軍国化を進めるような政権に対しては、厳しく批判していくという姿勢」(李慈勲氏)だ。  

歴史ねじ曲げる日本政府 韓国民衆の抗議は長期化

一方で、韓国内の右派は、沈黙しているという。「韓国右派は、同時に親日派であり輸出規制への抗議活動には一線を引いている」(李慈勲氏)そうだ。「朝鮮日報・東亜日報は、元を辿れば日本帝国主義に協力した残滓勢力なので、反安倍の世論とは一線を画し黙っている」(同氏)。日本では報道されないが、日本のマスコミとは全く違う状況だ。  

今後について両氏は、「長期戦となり先鋭化する」と語る。朝鮮半島では、歴史的な南北融和が進みつつある。「日本政府は、道徳的にも歴史的にも南北統一を積極的に応援しなければなりませんが、全く蚊帳の外であるばかりか、妨害すらしているために、人々は安倍政権を批判している」と語るのは、李慈勲さんだ。  

韓日民衆連帯を

李哲さんは、最後に次のように語った。「韓国と日本は、隣国で一番近い国。政府間対立を超えて民衆連帯が重要です」。  

安倍政権が主導した日本の韓国への経済制裁は、「徴用工・慰安婦問題」への報復措置であるのは明らか。にもかかわらず強引に「ホワイト国指定解除」を口実にした輸出規制を決定した。問題の根底には、豊臣秀吉の「朝鮮征伐」以来の、朝鮮半島植民地化と抵抗の歴史がある。日本では、韓国に対する輸出規制の撤回を求める「韓国は敵なのか」署名活動などが、始まった。

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