浦島オバさん太郎に日本はすごくない!<第三話 日光の力>大西 ゆみ 大阪生まれのロンドン育ち。長いものには巻かれない頑固者。反原発は動物たちのために!

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本当に素晴らしい天気! 毎日のように青空が朝から広がる「美しい国、日本」。  

私はこの天気のために帰国したんじゃないかと思うほどである。曇りの日が雨の日より嫌い。鬱になりそうな気がするし、何もやる気が起こらない。そう言う人を「SAD」(Seasonal affective disorder)と呼ぶ。鬱の気分が天気に左右される症状のことだ。  

イギリスは毎日がどんよりと曇り空で暗い。空が低く、深いタメ息が出るような薄暗い天気が続く。日本のように天気にメリハリがない。真夏のような天候は一年に2週間あるかないかという感じ。8月の終わりから5月くらいまでは息が詰まりそうなほど暗い天気の下を惨めな顔しながら決して時間通りに来ないバスを待つ毎日。日本では無料の晴天がイギリスでは太陽の光を浴びるためには「お金と時間」が必要なのである。  

イギリスに住んでいる人たちは年に2度ほど長い休暇(Holiday)を取ると、南フランスやスペインの海岸へ行き、太陽の光を浴びながら一日酒を飲む!時々8月くらいに信じられないほどいい天気の日は仕事場で「病欠」が続出する。皆、公園や庭で陽にあたるために仮病をつかうからである。バカ真面目な私は1人出勤して、患者も同僚もいないクリニックの待合室の窓から外をぼんやり見ては、「私も病欠したらよかったなー」なんてタメ息つくばかりだった。  

でも、今じゃ毎日のように素晴らしい天気を手に入れて、休みの日には青い空の下、そよ風に揺れる洗濯物を見ながらワインを飲んで満足感に酔いしれる-なんて安上がりなんだ。  

でも、日本にいる、日本人女性たちは日焼けしないように、日陰を歩いたり、日焼け止めを塗りまくる。  

昔、イギリス人の友人たちとスペインに旅行した時、日本人の観光客がたくさんバスから降りてきた。気温はたぶん42度ほどあるような夏日に、なんと彼女たちは長袖、帽子、サングラス、日傘に手袋! 中にはマスクまでつけている人も。  

イギリス人の友人たちは「日本人は雨も降ってないのに、なんで傘をさすの?」と。  

彼女たちは白い肌が「高級」だと信じているのだろうと伝えるが、理解できない様子。イギリスでは「日焼け」は優越感以外の何物でもない。日焼けしてくると「おっ! どこかへ旅行したの?」と職場でも学校でも話が始まり、自慢話に花が咲く。人工的な明りの職場で書類やパソコンに向かっている時間は長い。  

せめて行き帰りの電車の中では外を眺めて、気分転換しても良さそうなものなのに、皆、スマホ。皆がスマホを見るならば、もう窓なんか必要なくなるのかも。  誰も外を見ようともしない、おまけにもっと酷いヤツラは窓の日よけを完全に下げて私から青空を見るという楽しみさえ奪ってしまう!天気が悪い国もあるんだよ!カルシウムを作るのは牛乳ではなく、太陽の光なのにー!と叫びたい気持ちをグっとこらえて日よけを下げた女の人をじっとにらみつけた。にらみつけられた女性は何なのか分からないまま、またスマホに目を落とす。  

私はイライラとした気分で1人でそっとつぶやいた「日本すごくない!」 (大西ゆみ)

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