【時評短評 私の直言】「はじめに結論ありき」大今 歩(高校講師)

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 福島県民健康調査検討委員会(以下、検討委)が2011年以来公表した、甲状腺検査によるがんもしくは、がんの疑いのある患者は今日まで217人に及ぶ。ところが6月3日検討委甲状腺検査評価部会(以下、部会)は14年から15年に実施した小児甲状腺の本格検査の結果について「現時点では甲状腺がんと被ばくの関連は認められない」とする「中間報告」を公表した。これに対してマスコミは、「(個人の)正確な被ばく量は不明」(6月4日「京都新聞」)などと批判するが、そもそもデータ解析に大きな誤りがあり、ずさん極まりない。  

数十倍のオーダーで甲状腺がん発見

同部会は「中間取りまとめ」(2015年5月)において、2011~12年の「先行検査」について「(全国と比較して)甲状腺がんが数十倍の多い」ことを認めながらも、「放射線の影響とは考えにくい」と評価した。「中間報告」も本格検査は「甲状腺がん発見率は(中略)数十倍高かった」とするが、「放射線被ばくとの間の関連性は認められない」とした。まず「中間報告」では、悪性新生物の発見率について、「避難区域等13市町村、中通り・浜通り・会津地方の順に高かった」ことを認めた。明らかに被ばく線量が多い地域順に、発見率が高くなっているのだ。  

ところが、「検査実施年度、細胞診実施率、先行検査からの検査間隔などが影響を及ぼしていることが考えられる」として、「これらの要因を制御するための解析」が必要として、被ばく量と発見率の関連を全く追及しない。都合の悪い結論が出そうなため、放置したとしか考えられない。  

そして、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が2013年に公表した甲状腺被曝量推定値をもとにした、「市町村ごとの甲状腺被曝推定と甲状腺検査結果」(以下、検査結果)をもちだす。これにもとづく解析データにより同部会は、「線量と甲状腺がん発見率に明らかな関連を見られなかった」と結論づけたのだ。  

解析データに大きな誤りが発見されたものの、再検証はなされないまま

しかし、その根拠となった検査結果のデータを再計算すると、同部会のデータ解析よりも甲状腺がん発見率がはるかに高いことが導き出された。同部会の解析には「何らかの間違いがある」としか思えない(牧野淳一郎「科学」2019年5月号)。4月8日に開催された検討委で、前述「科学」の編集長が解析データの誤りを指摘したところ、鈴木元・甲状腺評価部会長は「入力ミス」があったとして「指摘は受け止める」と、あっさり誤りを認めた。そして、「次回の評価部会で正しい結果を出す」との考えを示した。ところが、その結果を公表する前に「中間報告」は取りまとめられた(OurplanetTV7月5日)のである。  

このように「中間報告」は自らも認める、大きな誤りのあるデータに基づいて成り立っていて、UNSCEARの被曝量推定値と悪性率には、明らかに関連が認められる。そして、そのことは「中間報告」が指摘する、「避難区域、中通り・浜通り・会津地方の順に」悪性率が高かったことと合致するのだ。「中間報告」は福島原発事故の影響を覆い隠すため、「初めに結論ありき」(被ばくと甲状腺がん多発は関連がない)の、ずさん極まりない内容である。「中間報告」は撤回されるべきである。  

7月8日開催された検討委では委員の間で、「中間報告」に対する反対意見が続出したため、「中間報告」の表現を一部修正する方針を決めた(7月9日「京都新聞」)。検討委に対しても「中間報告」に反対する意見を集中しよう。

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