ハンセン病差別百年の責任は誰がとる
政府は12日、国にハンセン病元患者の家族への賠償を命じた熊本地裁判決の控訴断念を閣議決定した。
訴訟は、元患者の家族561人が、隔離政策により家族も深刻な差別を受けたとして、国に損害賠償と謝罪を求めて起こしたもの。6月28日の熊本地裁判決は、541人に対する国の責任を認め支払いを命じたが、残る20人は国の違法行為が続いた2001年末まで本人も周囲も患者家族と認識していなかった、として請求を退けた。
しかし、原告への直接の謝罪はなされていないため、原告団を中心に、各地で謝罪を要求する運動が起こっている。
支援者は「私たちが国の誤った隔離政策を支持し続けた結果、被害者は息をひそめて生きざるを得なかった。消えるはずだった声を拾ってきた弁護団、支援者のみなさん、何より勇気を振り絞って声を上げた原告のみなさんの声を聞かずして、ハンセン病問題の解決はない」と政府への謝罪要求を呼びかけている。
弁護士の八尋光秀さんは控訴断念を受け、「国というのは、一人ひとりの人間を分け隔てなく守るのが、最大の責務。ハンセン病問題では、患者・家族の人たちを、分け隔て、苦しめてきた。国はその責任をきちんと果たすべき」と述べた。
歴代権力者たちが封印してきた 患者・家族差別は消えるのか?
2003年に「ハンセン病問題を考える尼崎市民の会」を立ち上げた中村大造さんは、控訴棄却について以下のように答えてくれた。
「控訴棄却は原告団がよく闘った成果だと思う。元患者が起こした裁判では、2001年に熊本地方裁判所が、国の賠償責任を認め、国会の責任を指摘する判決を下した。当時の小泉内閣は『極めて異例の判断ではあるものの、早期に解決を図る必要がある』と控訴を断念した。今回の判断は、小泉元首相が選挙時期にハンセン病の国賠訴訟の敗訴に控訴をしなかったことに倣ったと考えることもできるが、結果からの憶測にすぎず、大きくは原告側の闘いの賜物だと思う」。
「私たちは、側面的支援をするため、より一層、ハンセン病に対する正しい認識を広めたい」と今後の目標を語った。
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人は納得できる理由がほしいため、いろいろ考える。その結果、導き出した控訴棄却の「理由」が「選挙時期だから」だとしたら、それは原告側の闘いを低く見ているのではないか。
闘う側の力を信じなければ、「御上の決定」に受け身にならざるをえない。熊本地裁により我々も「加害者である」と認定されたが、地裁の認定を仰ぐまでもなく、加害者だという自覚を持って、差別をはじめとするあらゆる問題に、怒りをもって立ち上がらねばならない。 (編集部・村上)