【靖国神社】抗議した香港人活動家の不当逮捕 長期拘留に広がる抗議

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戦争責任追求への見せしめ弾圧

昨年12月12日、東京の靖国神社で抗議した2名の香港の活動家が逮捕・起訴され、勾留され続けている。裁判の法廷には右翼が押しかけ「極刑にせよ」と叫んでいるという。なぜ2人は抗議し、長期拘留されているのか。事件の概要と、救援会の方へのインタビューをまとめた。(編集部・園)

抗議文を拒否する 香港の日本領事館

 12月12日は、旧日本軍による南京大虐殺が行われた南京占領の前日だった。昨年同日、郭紹傑さんは、靖国神社の外苑で「南京大虐殺を忘れるな」と書かれた横断幕を広げた。その後「甲級戦犯 東條英機」と書かれた位牌の箱を燃やし、「軍国主義打倒」などと声を上げた。それをジャーナリストの嚴敏華さんが動画撮影した。  

すると、靖国神社の警備員が2名を取り押さえて警察に引き渡し、「建造物侵入罪」で逮捕・起訴された。  香港では毎年、満洲事変・日中戦争開始・南京陥落の日に、日本総領事館前で多数の市民団体が入れ替わり立ち替わり抗議集会を開き、侵略戦争への謝罪を求める文書を手渡していた。ところが第二次安倍政権成立以降、総領事館は受け取りを拒否し始めた。こうしたことが、2名が来日し、戦争責任者が合祀された戦争の象徴・靖国神社で抗議した背景にはある。  

今回の弾圧は異例ずくめだ。過去に数多くの抗議行動が靖国神社の中心部で行われてきた。05年8月15日には、日本会議が靖国の参道特設ステージで開催した集会に日本の学生たちが乗り込み、「小泉首相の靖国参拝を許すな」とコールして警察に連行されたが、釈放された。09年8月には台湾から国会議員ら50人が来日し、神社拝殿の前まで行って「台湾先住民族戦没者の合祀をやめろ」と抗議したが、逮捕もなく自主的に退出した。つまり、起訴・何カ月も勾留されるのは今回が初だ。抗議場所も日々誰もが通行する周縁の外苑に過ぎず、「建造物侵入」による起訴・勾留は不当だ。  

3月から裁判が始まった。東京では2名を支援するため「12・12靖国神社抗議見せしめ弾圧を許さない会」が結成された。「会」の新孝一さんは、異例の弾圧の背景を「安倍政権のアジア民衆への見せしめです」と語る。  

以下新さんに弾圧の背景や救援の様子を聞いた。  

―在香港日本総領事館の文書受け取り拒否も、靖国の弾圧も、安倍政権が戦争責任を根本から否定しているからです。東アジアの日本軍「慰安婦」や徴用工に対する賠償責任が日本政府に問われており、政府は強く反発しています。アジア民衆が国外だけではなく日本国内で直接責任を問う行為は許さない、という見せしめだと思います。

 また、こうした事件は、通常香港や中国政府との間で国際問題になるはずですが、2名は『雨傘運動』など政府批判の活動にも参加していたため、両政府は支援には積極的ではないのでは、と現地では報道されています。戦争責任問題で日本政府と正面対立を避けている面もあるでしょう。  

被逮捕者の支援者も裁判日に香港でデモをしています。みな日本の勾留の長さに驚いています。香港は逮捕されてもすぐ釈放されるからです。  

東京で弾圧事件に取り組んできた弁護士が、逮捕のニュースを見て、「誰も弁護士がつかないのでは」と危機感をもち、直後に接見しました。私たちも反靖国の運動に関わっていたため協力したいと思いました。  

安倍首相の靖国参拝違憲訴訟には、アジアの原告も大勢います。2名の問題提起は正当です。しかしまさかの起訴をされたので、1月半ばに支援会が作られました。5月9日の救援集会も、75人が参加しました。  

母語の使用を禁止、保釈も却下 罵声を浴びせる右翼集団

逮捕直後、郭さんはハンストをしました。嚴さんもとても元気で、日本の運動の本を読んで過ごしています。裁判で郭さんは「南京大虐殺は人類史上まれに見る虐殺。香港も太平洋戦争開始と同時に攻撃・占領され、虐殺、強姦、財産収奪など莫大な被害を受けた。香港でも、安倍首相が極右思想の持ち主で、アジア侵略は侵略戦争ではないと国会で答えたことは有名だ。私の行為は表現の自由であり、背後には多数の香港・中国民衆の怒りがある」と主張。  

嚴さんは2回にわたって「私は祖母から日本軍による強姦の恐怖を聞いて育った。日本に強制連行・労働させられた中国人の話も取材で聞き続けた。郭さんの行動は大きな意義があると思い取材した」と語りました。  

2名は暖かい香港から来たので寒さに苦しみ、拘留のせいで最も大事な2月の「旧正月」を香港で過ごせませんでした。裁判所はいろいろ口実を設けて、まったく保釈申請を認めようとしません。5回目の保釈申請も却下され、裁判所に直接申し入れもしました。香港でも保釈を要求するデモが行われています。  

東京拘置所の一般面会では広東語の使用が認められず、2人は母語の使用が禁止され、北京語や英語での面会を強いられています。広東語と北京語は、ドイツ語と英語くらい違います。裁判も広東語からの通訳が下手で、被告の防御権が侵害されています。  

また、傍聴抽選には50〜60人もの右翼が並び、傍聴席に陣取った右翼は、裁判閉廷と同時に被告に対して「一生出すな! 極刑にせよ!」と罵声を浴びせました。  

見せしめ弾圧のため、現状は楽観できるものではありません。裁判所に不当判決を下させないため、また右翼を傍聴させないために、多くの傍聴参加や全国からの支援を呼びかけます。

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 この弾圧は異例の長期拘留で、日本の侵略責任が被害者から直接問われている。今報道される香港政府だけではなく、日本政府も香港人を弾圧している。事実を広め、支援を強化する必要を強く感じた。 (園)

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