南北和平に危機感 対立煽る安倍政権 ソウル書林 李 慈勲さん インタビュー(聞き手 編集部 村上)

内政の行き詰まりを外にそらせる権力者の常套手段

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 慰安婦・徴用工、レーダー照射問題と、日韓関係が悪化している。特に日本の韓国敵視が目にあまる。安倍政権は、軍事拡大や国民統合のために緊張を煽り、朝鮮半島が和平に向かうことを妨害しているかのようだ。

 韓国で生まれ、大阪で韓国・朝鮮専門書店を営みながら日韓関係の発信をし続けてきた李慈勲さんに、日韓の対立の歴史的な背景と、問題のありたかを聞いた。(村上)

編…このところ日米韓の関係が複雑化していますがその背景は?
 1番重要な背景は、冷戦時代以降、日韓関係が変貌しつつあることです。 世界で唯一残っているのが朝鮮半島の冷戦構造です。冷戦時代は、日米韓の軍事同盟が中国・ソ連・朝鮮民主主義人民共和国と対峙する構図でしたが、朝鮮半島が対決時代から和平の時代に変わりつつあることです。

 2番目は、資本主義全体が矛盾に満ちた結果、アメリカの力が大きく衰えています。不平等な社会が蔓延し、働く人間が資本の奴隷にされています。製造業がグローバル化によって衰退し、民主主義の基盤である中産階層が崩壊しつつあり、アメリカ内部の社会の危機が深刻になっていることです。

 3番目は、トランプ大統領の米国一国主義は、世界の警察官の役割より国益を重要視する姿勢です。日本や韓国に対し、軍隊の費用は自国で負担させようとしています。沖縄基地をはじめとして、本土の基地負担も要求してくるでしょう。韓国はすでに負担費用の問題で決裂しています。アメリカの政策が時代の変化によって、修正に追い込まれているのです。

 反面、日本の保守勢力は冷戦状態に引き戻そうとしています。これは安倍政権の末期症状で、内政の行き詰まりを外にそらす保守側の常套手段です。

 7月の参院選・衆院選に向け、政権基盤を結集するために、マスコミを使って外に向け問題を複雑化しているのです。

日米韓軍事同盟に軋み韓国は南北平和を最重視

日本が望んでいる日米韓の軍事同盟は、すでに歪みが入っています。朝鮮民族が自主性を持たない場合は、南北間の平和は保たないという原則に立ち、韓国は日米韓よりも南北の協力関係を望んでいます。

 戦前の国家主義に戻りたい安倍政権としては、朝鮮半島で敵対関係が続き緊張が激化するほど好都合です。しかし、板門店宣言(2018年)以降、朝鮮半島は平和統一路線に向け動いています。

 南北和解に向かえば日本の軍事拡張路線が問題になるため、政権側は危機感を募らせ慌てているのです。そこへ徴用工や慰安婦問題が発生したから、文政権を叩くことで、自分側の政権基盤をより強固にしたいとの思惑が働いているのです。済州島南方の離於島でも自衛隊機が国際法に反する低空飛行をしました。韓国から見れば挑発です。

 済州島で行われた海軍の軍艦閲覧会に参加するにあたり、日本は自衛隊の軍艦に日帝時代の旭日旗をつけることを申し出、それが受け入れられないと参加を拒否しました。国際的にも顰蹙をかう問題です。戦前の歴史認識を清算していない証拠です。安倍政権になってから専守防衛に徹するはずが、軍備が拡大されて憲法違反の状態が続いています。

徴用工とは「過酷な強制労働」謝罪も賠償も行っていない日本

編…徴用工問題をどう考えますか? 
 徴用工問題は、(1)歴史認識の問題、(2)日本が解決済みだと言っている日韓条約(1965年)による請求権協定の問題、(3)朴槿恵政権の慰安婦処理の問題、(4)ろうそく革命以降の朝鮮半島の和解が関係しています。
 日本の新聞では「徴用工」と言われてますが、歴史的に見れば日本は国家総動員法(1938年)を作って1941~44年までには250~300万人の労働者を強制的に連れてきました。歴史的には「強制労働者」と呼ぶほうが正確です。日本の全産業分野で過酷な労働をさせられた上、賃金はほとんど支払われていません。
 同じ侵略国家であったドイツは、周辺国家に対しても、ユダヤ人虐殺に対しても真相究明した上で謝罪・賠償をしました。周辺国家に払った賠償金は1223億マルク(約7兆9495億円)、個人的な賠償でも100億マルク(約6500億円)です。そのためドイツはEUから信頼を得てEU統合に中心的な役割を果たしています。その上で歴史教科書を造る時も周辺国家と相談するくらい過去清算をしています。
 一方日本は、ドイツに比較すれば未熟です。特に戦前の流れをくむ安倍保守政権の歴史認識がアジア全体に不信感をもたらしています。
 徴用工問題では、日本の大手メディアが政治権力の意のままの報道をし、一部の民衆は鵜呑みにしています。それが東アジアの不安要素になっています。
 日本では、文政権のバッシングばかりが報道されます。歴史を忘れ「済んだことを今更引っ張り出すな」と、短絡的な論理が目立ちます。
 韓国民衆と日本の民衆は、根本的に民主主義に対する姿勢が違います。韓国は、腐敗し民衆を抑圧する権力を打倒する歴史を70年間積み上げています。李承晩政権は学生革命(1960年)によって、朴正煕(79年)、全斗煥(87年)の軍事政権も打倒されています。民衆の力によって民主化を成し遂げてきています。総決算がろうそく革命(2017年)です。

編…日本で強調される「反日の感情」については?
 日本はさかんに文政権を左翼政権だと罵倒しています。しかし、文政権は基本的に保守政権です。従来の保守よりは非常に良心的ですが、社会主義を目指す左翼政権ではありません。

 韓国の反日感情は、日本の保守勢力が作り上げた虚構です。韓国の民衆は、日本と仲良くしたいという意見が圧倒的です。

 なぜ大手のマスコミが「反日感情を抱いている」と煽るか? それは安倍政権の支持基盤をより堅くするためです。それを日本民衆は見抜いていかなければならないのです。

編…徴用工の請求権の協定については?
 日本政府は、日韓条約締結にあたって「独立お祝い金」という名目で2億ドル、経済借款で3億ドル、と政府間の協定で曖昧に決着をつけたことで「戦後賠償は終わった」とし、慰安婦・被爆者・サハリンの問題や個人的な請求権を認めません。

 1961年に始まった韓日交渉に、学生をはじめ韓国全国民が反対運動を展開したのです。日本でも反対運動がありました。しかし朴正煕政権は戒厳令で弾圧し、アメリカの力によって政権を延命した上で、1965年の国交正常化にこぎつけました。日韓の国交正常化は国民の反対を無視して作られているため、正当性が乏しいのです。

 1991年の自民党政権下で、当時の外務省の柳井条約局長が野党議員の質問に、「個人請求権は消滅していません」と答弁しました。個人請求権を当時の外務省の局長が認めたのです。

 徴用工は強制労働者として日本に連行され、当時の日本のエネルギーの主であった石炭工場、水力発電所の建設、道路の建設、トンネルの建設、軍事工場に動員されました。今日の日本の資本主義のインフラの構築に、朝鮮労働者250万人が働きました。朝鮮人労働者から搾取したことで今の日本があるのです。ですから歴史的な過ちを認めた上で、強制労働者たちに賠償する姿勢を持たないと解決しません。

問題未解決の根源は戦中権力者の復活

編…「慰安婦」問題などが解決されない理由は?
 慰安婦は帝国主義の反文明的な犯罪です。金学順女史の告白(1994年)以降、国際問題となり、自社さ連立の村山政権は、河野談話を発表しましたが、今になって安倍政権は、朝日新聞の植村記者の報道まで、あげ足をとってひっくり返す形でキャンペーンをしました。

 しかし、韓国では日本が否定すればするほど反感が高まります。朴槿恵政権時に安倍政権と手を打ったのが、治癒財団設立です。韓国の国内では猛烈に反対の声があがりましたが、アメリカの強い働きによって、国民の反対を押し切って政権同士で片づけてしまったのです。

 これらの争いの根源は、日本で政治・経済・文化・言論・学会など、あらゆる分野で戦前の流れをくむ既得権勢力が全部リバイバルしていることです。

 韓国では民主化により日帝の残滓と冷戦保守勢力は既得権を失いつつあります。

 自主的、自決的な原則によって朝鮮半島統一に向かう勢力と、冷戦を基盤にして戦前の流れをくむ日本の右翼勢力とは、全然歴史認識が違うのです。日本の民衆が右翼勢力を止めるしかありません。

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