黒字のGMが北米3工場の閉鎖を宣言ウォール街は歓喜GM株が急上昇 トニー・ギルピン(翻訳…脇浜義明)

出典…『レイバー・ノーツ』 2018年12月15日

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 GM(ゼネラルモーターズ)は黒字続きなのに、今年北米の三つの組み立て工場と二つの小規模な伝動装置工場を閉鎖すると発表した。デトロイトのハムトラマック、オハイオ州のローズタウン、カナダのオタワの3工場閉鎖で、6000人の労働者とその家族、地域社会、その他多くの人々が困窮する。

 ローズタウン工場に20年勤務したナネット・センターズ(55歳)は、「これでは楽しい新年が迎えられない」と泣き声で語った。彼女はUAW(全米自動車組合)の組合員としてかなり良い賃金を貰っていた。しかし、労働費用は車1台の生産費用の1割以下であり、労働コストが工場閉鎖の理由ではない。

 GMのCEOメアリー・バーにとって、従業員の不幸は取るに足らない。株主の利益と経営幹部の利益が最大の関心事だ。2017年に株主報酬と先物取引で2200万ドルをGMから稼いだメアリーを、フォーブス誌はGM最優秀CEOと称賛し、ウォール街は工場閉鎖に大喜びし、GM株は急上昇した。

 だが、工場閉鎖は金儲けが目的であり、生産を犠牲にして自己利益やウォール街の仲間の利益を稼ぐ経営者は最低だ。むしろ、ラインを追われた労働者に経営を任せれば、もっと立派な製品を作り、公共の利益に貢献する経営をするだろう。

 この度の工場閉鎖について、GMは「顧客の志向変化」を理由にあげた。つまり、人々がセダン型乗用車に乗らなくなったと、顧客に責任転嫁した。しかし、米国人は今も乗用車に乗っている。

 GMは、同じ生産コストで高く売れるSUVやトラックの方が儲かると思ったのだ。GMが宣言した「排気ガス・ゼロに向けて努力する」という公約にも反する。

工場閉鎖攻撃に対し労働組合は経営権を握れ!

 工場閉鎖や工場再開をちらつかせるのはGMの常套手段で、今回の閉鎖宣言も、来年の労使交渉への先制的威嚇攻撃という面もある。労働者の中に不安と猜疑を作り出し、組合の基礎である団結と連帯を崩そうとしている。 だが、1936年の坐り込みを闘った労働者は、工場は法的にはGM経営者の所有物だが、労力という資産を長年注ぎ込んできた工場は自分たちのものだと語った。大恐慌のなか、世界最大のGMと闘う過程で、当時の労働者は産業民主主義の一片を実現した。

 GMはその後、納税者のカネを吸い取って再び荒稼ぎをするようになった。今こそUAWは、産業民主主義に再挑戦すべきだろう。事実カナダでは、オタワ工場の閉鎖宣言に対し、ビジネス評論家がGMカナダの国有化を提案している。「GMに長い間好き放題させてきた。今度はこちらから主体的に行動すべき時だ」。

 自動車労働者が主体的に行動して、経営の主導権を握ってはどうだろうか。メアリーに雇用確保を懇願するのでなく、彼女の一派を経営の座から追い払い、組合か民主主義的な公共機関が経営するのだ。人民がGMを経営するのだ。自動車産業の公的管理の歴史は米国にある。例えば戦時中がそうだ。市場ではなく政府が生産物、価格、賃金を統制した。今でも政府に代わって人民管理ができるはずだ。
  
 2008年にGMが債務不払い危機に陥ったとき、映画監督マイケル・ムーアは「GMを公的所有にすれば、わが国の産業インフラが守られ、ラスト・ベルトを生き返らせることができる」と言った。今はもっと事態が急迫し、労働者の生活を支え、有害排出を抑える「グリーン・ニューディール」が必要である。包括的経済成長と環境保護のためには、その道しかない。

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