【連載19年入管法改正】入管体制最後の大博打 その3 深見 史

「介護」「日系4世」受入れの失敗にみる「入管法制=建前」の歴史的崩壊

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「技術移転」の建前を投げ捨てた技能実習制度

 2012年、外国人登録法が廃止され「新たな在留管理制度」が始まった。2013年、ジェトロ(日本貿易振興機構)が、不振が続く対日投資改善のために提言を行い、それに即答する形で、2015年にも在留資格の新設・改編が行われた。外国人の会社設立を容易にするため、在留資格「投資・経営」を「経営・管理」へ改名・改編、「経済のグローバル化の中で我が国の経済の発展に寄与する外国人の受入れを促進するため」(法務省)、親の帯同等の優遇制度を付けた「高度専門職」を創設した。

 入管法制の度重なる改正・改編の中で特筆すべきは2017年改正である。技能実習制度の職種に「介護」を新設、同時に在留資格の「介護」を創設、さらに在留資格「特定活動」に「日系4世」を加えた。この改正は、今回の在留資格「特定技能」新設につながる入管法・入管体制の極めて大きな事件だったといえる。

「単純労働力は入れない建前」崩壊の序章

 「高度専門職」が当初の計画・予定を大幅に下回ったこと、数々の方策にもかかわらず労働力不足は補えなかったことを受けて、上記2017年改正は、相当に思い切ったものとなった。

 (1)「介護」の新設は、2008年から開始されたEPA(経済連携協力)によるフィリピン人やインドネシア人「介護士候補者」の受け入れを根本から無駄にするものだった。それまで期限付きで働きながらの過酷な環境で日本の国家資格を得るために勉強をしてきた「介護士候補」の努力は、この在留資格新設で無意味なものとなった。

 「介護」は介護福祉士資格を要件とするが、期限なしの就労を可能とする。さらに技能実習の職種に「介護」が加えられたことで、外国人介護職は無資格者でもよいこととなった。今回の法改正で「特定技能」に介護が含まれていることが何を意味するのか明白だろう。無資格での就労を認める「特定技能」が創設されたことで、専門学校への留学を経て国家試験を受験する外国人が増える可能性は大幅に減った。

 (2)技能実習3号の創設は、「国際貢献・技術移転」の建前を自ら崩壊させた。なぜならば、建前としての技能実習は3年間の実習の成果を母国に還元するために帰国することが前提だったからだ。技能実習3号は、それまでの技能実習1号1年間、2号2年間に加えて、さらに2年間の「実習」を課すもので、どう言いつくろっても「技能のさらなる習熟のため」とはいえない。この改正は技能実習が単純労働力であることを国自らが暴露したことになる。

 なお、「建設」に係る技能実習生は、2014年からすでに技能実習終了後の2年間、「特定活動」として現場労働に従事している。技能実習3号が新設された時点で、建設労働者は技能実習開始から最長で、8年間「技術移転のために勉強に来ている技能実習生」ならいるはずのない場所で働くこととなっているのだ。

「日本文化の学び」という欺瞞は通用せず

   (3)日系4世の例は、今回の新設「特定技能」の今後の展開の参考になるだろう。日系人は3世まで入国・就労が可能だったが、成人した4世は入国できなかった。2017年改正では、日系4世の入国就労を認めたが、その要件は「年齢は18歳から30歳まで、家族帯同不可、入国時に日本語検定2級以上、2年目に3級・4年目に2級で期間更新可、しかし上限5年」だった。

 そして、この在留の目的は「日本文化の学び」であるとする。当初の予定入国者は年間4000人を超えた段階で許可を停止するとされた。現在、この在留資格で在留する4世は4名である。介護と日系4世に係る制度設計は、以上のように明らかに失敗、しかもあり得ないほどの失敗に終わった。かつて「不法滞在者」に、現在は「留学」「技能実習」に依存してきた単純労働力は、もはや解決することのないほどの圧倒的不足を常態としている。「技術移転」だの「日本文化の伝承」などのごまかしを言っている場合ではなくなったことが今回の「特定技能」創設の理由である。(次号…新設「特定技能」は、入管法制初めての「本音」の資格。に続く。)

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