【連載 19年入管法 改正】 深見 史

入管政策 最後の大博打①

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 入管体制が大揺れに揺れている。一昨年法改正を行ったばかりで、改正法施行が開始されたばかりの今年、降ってわいたような感のある「新在留資格創設」「出入国管理在留庁新設」という大改正が行われた。

 改正された入管法は、しかし、内容はただ新在留資格が付記されたのみで、その在留資格の要件にあたるものは、後ほど法務省が決めることになっている。

 今回の法改正の理由として法務省が述べているのは、次のとおりだ(傍線は筆者、以下同じ)。

 「人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に属する技能を有する外国人の受入れを図るため、当該技能を有する外国人に係る新たな在留資格に係る制度を設け、(略)外国人の出入国及び在留の公正な管理に関する施策を総合的に推進するため、法務省の外局として出入国在留管理庁を新設する必要がある」

 人手不足の業界に外国人を呼び込むことが目的だと明記するとともに、入国管理局に代えて出入国管理在留庁を新設することの2点を、法改正の目的としている。

 人手不足解消のために創設される新在留資格は「特定技能」との名称(下表)。

 法別表とは、入管法別表として在留資格の名称と内容を記載したもので、「別表1」は活動資格、「別表2」は身分系資格であり、別表1はさらに5つのカテゴリーに分かれる(下表参照)。上記分類のうち、就労を目的とする資格は1と2であり、3及び4は就労不可の在留資格である。

 法改正に関する報道で「外国人が就労が許されているのは医師や弁護士などの高度専門職に限られ……」等の新聞記事が多数見受けられたが、外国人労働者約130万人のうち、医師の在留資格「医療」で在留する者は1966人(18年12月1日現在値、以下同じ)、弁護士の在留資格「法律・会計業務」で在留する者は1534人しかいない。

 就労カテゴリーのうち、「技術的専門的資格」に分類されない「技能実習」の28万4776人を除けば、「技術・人文知識・国際業務」で在留する21万2403人が最多だ。この資格は大学や専門学校の留学生が資格変更し就労する通常の在留資格であり、外国人が医師・弁護士等の高度な(?)専門職でしか就労できないかのような報道は間違いでありミスリードであることを指摘しておく。

 「高度な専門職」に該当する「高度専門職」という在留資格が3年前に創設された経緯については後述する。なお、本記事で記載する数値は、すべて最新の法務省発表資料から引用した。

 別表2の身分系資格は「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」の4種類であり、このカテゴリーは就労制限を受けない。新在留資格「特定技能」が上記「別表1の2の表」の「技能」の次に列記されたことにより、来春から在留資格は合計29種類となる。念のため付記すれば、「技能」は実務経験10年を要件とする料理人等の専門職であり、新設資格「特定技能」と関連はない。

90年「外国人研修制度」「日系人定住者資格付与」

 今回の改正の何が問題かを語る前に、そもそも「入管政策における問題」とは何だったのか、今回の「新在留資格創設」がなぜ大きな出来事か、政策の歴史を整理し、今回の法改正の位置を明確にしたい。
1 入管法改正の歴史

 「御名御璽」から始まる出入国管理令(1951年)による出入国管理が初の大きな転換点を迎えたのは、難民規条約・難民議定書への加入だった。82年、同令に難民認定関連条項が追加され、「出入国管理及び難民認定法」が成立した。

 入管政策の最大の事件は、90年に起きた。人材不足の解消の途を求めていた事業主団体の要望を無視できなくなった政府は、「外国人研修制度」と「日系人定住者資格付与」を見いだした。労働力の確保という目的を「労働ではなく研修である」とする欺瞞、「日系人は日本に同化しやすいから」という無策な受入れ。この欺瞞と無策が入管政策の基本方針、伝統となったのだ。    (以下次号)

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