【文化欄】連載:みんな居場所を求めてる(8) 株式会社Hibana代表 松田直子さんに聞く 聞き手:編集部・矢板

木を活かす京都ペレット町屋「ヒノコ」

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 「ずばり松田さんにとって木とは?」という質問に、少し間をおいて「そうですね、多様性みたいなものじゃないかと」という答えが返ってきた。 そして逆に「何の木が好きですか?」と質問を返される。振り返ってみると、木というものの一面しか見ていなかったことに気づかされる。街に咲く花の木、建材や家具などの材料になる木、燃料としての木。経済的な価値のあるものばかりがもてはやされる昨今、それだけではないということを発信していきたいと言う。

 京都の街なか、寺町二条にあるペレット町家ヒノコは、木質ペレットや火鉢など木や炭に関する製品を販売している燃料屋である。大正時代の和洋融合の町家をリノベーションしていて、二条界隈の街並みにも溶けこんでいる。経営は「株式会社Hibana」。二階はコワーキングスペースになっていて、「田舎生活研究所」「林業女子会@京都」「京都・森と住まい100年の会」の三団体が使用している。すべて木に関わる団体である。

 Hibana代表の松田直子さんは、田舎生活研究所には相談員として、林業女子会にも設立当初から関わっている。Hibana自体は、ヒノコの経営やバイオマス普及のコンサルタント、森林・環境情報の企画制作などをしている。

京都のバイオマス林業の魅力を発信したい

 「林業女子会」は、「薪く炭くKYOTO(しんくたんくきょうと)」と「山仕事サークル杉良太郎(すぎよしたろう)」の代表が当時たまたま女性だったことから、喫茶店で女子会でもやろうかというノリで始まった。

 コンセプトは、林業を地域でがんばっているひとを応援する会。こちらも設立当初は情報発信がメインだった。今は全国、海外も合わせて24の支部がある。数年前に木育部を立ちあげ、いまはそちらの活動が中心になっているという。

 木育とはおもちゃや家具などを通して木の魅力を伝える活動で、木育の活動をするようになってから木のファンや保育園の関係者など、関わるひとの幅が拡がった。

 最近は新たに旅部というのを立ちあげた。岡山県真庭市のバイオマスツアー真庭は木質バイオマスの研修地として有名であり、年間数千人が訪れ、地域にもたらす経済効果も大きい。バイオマス女子と呼ばれ、ガイドには女性たちが活躍している。 松田さんの頭のなかには、好きなことを事業にしたいという気持ちがあり、真庭にはない京都ならではのバイオマス、林業の魅力の発信ができないかと考えている。

「田舎生活研究所」綾部行政と民間とのバランスが良い

 「田舎生活研究所」は、京都府綾部市を中心に展開している不動産屋が立ちあげた。著書「半農半Xという生き方」で新たな生活スタイルを提唱した綾部在住の塩見直紀さんが、副代表として関わっている。

 農村における過疎化が全国的に問題になっているなか、綾部は全国でも移住者数が第三位という統計もでているそうだ。魅力ある農業カリスマやお店などの場の発信。コミュニティの充実。なかでも特徴的なのは、行政と民間プロフェッショナルとの役割分担のバランスだと松田さんは言う。不動産屋や新聞社などが共通した危機感をもって、それぞれの役割を担って連携するかたちになっている。

 研究所は、塩見さんの「若く元気なIターン者が集まる場所は自然エネルギーに取り組んでいるが、綾部は原発が近いのがマイナス面になっている。木育では、自然エネルギーや木質バイオマスの取り組みを『田舎生活研究所』で展開してほしい」との願いから始まった。

 農業面では、塩見さんに刺激を受けた移住者などで充実しつつある。あとは林業や自然エネルギーの取り組みの魅力をどこまで伝えていけるか、相談員の松田さんに期待が高まるところである。

 今、松田さんが関心があること、向かっていきたい方向性などを聞くと、「今、日本社会に息苦しさを感じている人が多い。『それ、いいやん』が増えていって、『しんどいねん』ということが言えたり、政治のことにももっと声をあげられる社会になったらいいなぁと思います。エネルギーのことをやっているので、いつも福島のことは忘れたくないって思います」という答えをもらった。

 松田さんの言葉は、木のそれぞれの多様性に魅力を見いだすところにもつながっている。学生時代に民主党系の事務所にインターンシップやアルバイトを通して関わってきた松田さんのインタビューは、今は疎遠になってしまったと言いながら、そのまなざしは政治や社会全体への思いにも通っているとても興味深いものだった。

ペレット町屋ヒノコ アクセス:京都市中京区寺町通二条下ル榎木町98-7 電話:075-241-6038

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