性急な関西空港の再開に不信 フリーライター 谷町邦子

万博誘致・オリンピックを意識した安倍首相・松井知事の号令か!? 

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 関西国際空港(大阪府泉佐野市)は9月4日、台風21号による高潮で浸水、停電。また、空港と陸をつなぐ連絡橋に、タンカーがぶつかり、利用者・従業員合わせて8000人もの人々が取り残される事態となった。復旧は急ピッチで行われ、7日には国内線の第2ターミナルの運用を再開。性急だという意見の一方で、交通や物流の拠点である空港再開を支持する声もある。台風直撃時の空港内の様子や運用再開後の様子について、第1ターミナルで接客業務にあたっていたAさん(仮名)に話を聞いた。

電気も電波もないターミナル

 4日、「台風の被害により連絡橋が通行できません」という放送の後、しばらくすると部分的に停電し空調が止まり、蒸し暑くなったという。それからアナウンスはまばらになり、WiFiもつながらず、外の状況も分からなくなった。

 電波がほとんど無いため、ターミナル内を歩き回り電話ができる場所を探した。

 通信会社によっては混線したり切れたりしたそうだ。「1本でも電波がたてば、たまったメールやラインを一気に受信し、返信しようとすると電波が消えました。歯がゆかったです」。

 事務所の電話も使えず、夜、手が空いた時に、公衆電話に並んで家族に帰れなくなったことを告げたという。

停電・蒸し風呂状態の中で

 空港内に取り残されたAさんは、備蓄の水やダンボールを配るなど利用者への対応に追われた。 Aさんらスタッフは、夜は事務所で雑魚寝。ダンボールは利用者に配ったため、新聞紙を敷いた。夜はエアコンが切れ蒸し風呂状態で、全く眠れなかったという。

 フライトが無いので度々休憩は取れたが、気が休まらず、貧血気味で気分が悪くなった女性スタッフもいた。

「再開の目途が立った」に違和感

 6日午前には、非常災害対策本部会議で安倍首相が7日に再開の目途が立ったと表明。大阪府の松井知事は、9日、連絡橋へのタンカー衝突を「人災」と表現している。帰宅後、安倍首相、松井知事の発表を、SNSと報道で見たAさんは、驚きのあまり2度見したという。

タンカーに責任押し付ける知事に不信

 「知事は『タンカー事故さえなければ』というような発言をしましたが、責任の所在を一つにするのはちがうと感じました。私も最初はタンカーを恨んでしまいましたが、今は間違いだと思います。衝突は関西エアポートや、海上保安庁が、タンカーにきちんと警告し、安全な場所を示していたら防げたのではないでしょうか」。Aさんは、今後、各所が協力し、ルール作りをするべきだと考えている。

 また、関西エアポート株式会社の社長に先立ち首相が会見し(社長の会見は6日午後)、さらに、6日の時点では復旧できていると思えなかったため、違和感があったそう。

 さらに管理職が「国から怒られたから、必死でやらねば」ともらした、「オリンピックや万博誘致に向けて今月中にフライトの便数や輸送できる旅客の人数などのレポートが必要なので躍起になっている」との噂もスタッフの間で囁かれていたという。

営業再開を喜ぶ一方で揺らぐ空港への信頼

 空港は1カ月営業できないと聞き、収入減を心配したAさんは、予想より早い復旧を喜んでいる。また、利用客のためにも再開は必要だと感じている。

 しかし、空港を運営する関西エアポートへの信頼も揺らいだ。ターミナルに閉じ込められている間、正式な案内がなく、空港勤務のスタッフは困惑。社員同士の「誰が物事を決定すればいいのかわからない」というやり取りもあったという。

 空港の再開から約1週間後も、混乱は収まりきっていなかった。Aさんは取材時、第2ターミナルで利用者の誘導・案内などの業務に就いていた。社員の中にフライト情報や開いている店舗などを全く把握していない人もいて、社内連絡がまともになされていないと感じたという。Aさんら末端従業員が自分たちで調べながら、営業中の店舗や利用できるチェックカウンターについてポスターを作り、利用者に周知しているのが現状だそうだ。

 現在では運航、連絡橋の鉄道も再開した関西国際空港。万博などにむけて現場を急かすのではなく、利用者、空港で働く人々のために、情報の共有や災害時に向けた体制作りが優先されるべきではないだろうか。

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