[入学式現地取材] 加計獣医学部は閉鎖を!

元同志社大学メディア学科教授 浅野 健一

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既成事実化で幕引きもくろむ加計理事長と安倍首相

 日本の記者クラブメディアは既成事実に弱い。次の選挙で反対する党が勝てば悪法を廃止できるのに、現体制が変わらないと思っているから、抵抗を諦めてしまう。安倍晋三首相の米留学時代からの親友、加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人加計学園が運営する岡山理科大学獣医学部の入学式が、4月3日に行われた。彼らは「学生が入学し、勉強を始めた」という既成事実で、加計疑獄の幕引きを目論んだ。

 ところが、安倍記念小学校疑獄の再燃に続き、4月9日から、NHK、朝日新聞、東京新聞などが、2015年4月2日の首相官邸での柳瀬唯夫・首相秘書官と、今治市、愛媛県、加計学園の関係者との会合に関するスクープ報道を展開した。首相はいつ政治家を引退し下関に戻るかが、焦点になってきた。

 岡山理大獣医学部の「入学宣誓式」は、愛媛県今治市のキャンパスで行われた。入学者数は獣医学科が147人、獣医保健看護学科が39人だった。獣医保健看護学科の定員は60人で、21人も定員割れした。

 メディアは受験者数が多かったと書いたが、加計獣医学部が第一志望だった受験生は1人もおらず、金持ちの開業獣医が子どもに継がせようと入学させたケースがほとんどだろう。安倍首相らは「獣医学部の空白地域」に作ると強調していたが、獣医学科の四国入学枠は、募集20人に対し4人にとどまった。四国のためというのもウソだった。

 入学式を伝えたメディアは、「えこひいき政治」により、半世紀新設が認められなかった獣医学部が誕生した経緯にほとんど触れず、学園の取り組みが評価されたこと、獣医学部新設が望まれていたことを掲げる加計理事長の勝利宣言を垂れ流した。また、日本会議顧問の加戸守行・元愛媛県知事は、角帽に黒衣姿で「ハリー・ポッターのような気分。岩盤規制を突破して(新設が)認められた。そんな意味では、魔法にかけられることで出産した獣医学部だ」と挨拶した。魔法をかけたのは安倍首相だろう。

 朝日新聞によると、新入生代表の獣医学科の佐々木旭美さんは、「高い意志を持ち、この獣医学部を素晴らしい学校にできる」と決意を述べた。公務員獣医師志望の大岡美咲さんは、「(新設をめぐる問題は)獣医学の勉強には関係ないので心配ない」と話した。テレビのコメンテーターたちも「加計獣医学部ができた経緯に問題があるが、入学した学生には責任はなく、頑張ってほしい」と強調した。

入学した学生にも責任が問われる

 2月に前川喜平・前文科事務次官の講演会を開いた今治市民ネットワークの村上治共同代表は、「選挙権のある大人なのだから、行政がゆがめられて誕生した大学を選んで入ったことに責任が生じる」「入学式に来ている加計理事長は、きちんと公の場でこの問題について説明すべきだった」と指摘した。

 村上さんは、入学式が行われた体育館近くの県道付近で車を止め、加計獣医学部反対のチラシを配布しようとしたが、いつも車を駐車していた砂利道にカラーコーン約40個が置かれ、背広姿の男性2人が「出て行け」「カラーコーンが見えないのか」などと妨害した。市役所が用地の占有使用許可を出したのではなく、秋山直人・企画課長が口頭で許可を出していたという。

 村上さんは入学式の後、約1時間、テレビ・新聞各社の取材に応じた。しかし、村上さんの声をオンエアした放送局はNHKだけだった。同番組は東京から2人を出張させていた。そのNHKも、村上さんの最も伝えたかった「学生にも大きな責任がある」というコメントは使わなかった。

官邸主導で工作が行われる今治市は回答拒否

 朝日新聞などの調査報道で、加計獣医学部を国家戦略特区のトリックを使って認める工作は、2015年4月2日午後、首相官邸で決まったことが明らかになった。私は『紙の爆弾』4月号で、柳瀬秘書官と面談したのは、今治市の秋山直人・企画課長、波頭健・課長補佐(現在主幹)、愛媛県の高石淳・地域振興局長、宇佐美伸次・地域政策課主幹、加計学園の渡邉良人・常務理事(法人本部事務局長)ら3職員であることを明らかにしている。私のブログ「浅野健一のメディア批評」でこの記事を読める。

 村上さんらが開示請求した出張記録で、今治市は柳瀬氏の名前などを黒塗りにしている。15年6月5日の国家戦略特区ワーキンググループ会合の記録も同様だ。16年に一度開示された記録を17年に再度開示請求したら、改ざんされた記録が出てきた。

 私は2月22日に菅良二・今治市長らに、官邸会談などについて質問書を送り、4月9日に再質問書を送ったが、今治市は回答を拒否している。

 加計獣医学部は閉鎖するしかない。入学した学生たちは、特別措置で獣医学部のある16大学に8人ずつ引き取ってもらえばいい。今なら間に合うと思う。

 こんな重大な時期に、安倍首相が訪米する必要はない。電話会談で十分だ。対話を拒否して制裁を叫び、朝鮮民主主義人民共和国と国交のある160カ国に国交断絶を呼びかけている国の首相が、朝鮮情勢について言うべきことは何もない。米国でまさかゴルフはしないと思うが、この時期に米フロリダまで行っている暇はないはずだ。

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