芸能人を使った無意味な普及策
最近、政府広報制作のマイナンバーカードのCMをテレビでよく目にする。お笑い芸人がアルバイトの面接のコントをする。店長「採用するから学生証と保険証とマイナンバー持ってきて」学生「え? かも南蛮?」店長「マイナンバーだよ」学生「めんどくせぇな、辞めようかな」店長「なんだお前!」。とそこにマイナンバーのマスコットが出てきて「マイナンバーカードを作れば、これ一枚でバイトの面接OK! しかもカードは無料! 学生さんおたすけカードです!」「よし! マイナンバーカードを申請しよう」で終わる。
何としてでもマイナンバーカードを普及させようという、政府の悪あがきにも見えるが、マイナンバーを提示しないとアルバイトができないなんてことはないし、カードは税金で作っているので無料でもなんでもない。なんともごまかしが多い。
制度が始まって2年が過ぎた。マイナンバーカードは当初、2019年度までに8700万枚を普及させる目標だったが、2018年3月時点で約1300万枚と目標達成は無理な状況だ。
政府は行政の効率化や国民の利便性の向上がメリットだと謳っているが、市役所は個人番号を扱うことによって事務作業の手間と財政負担が増えた。職員から迷惑だという声も聞く。高槻市は昨年、マイナンバーカードを使いコンビニで住民票が受け取れるサービスと引き換えに、駅前などの出張所を廃止した。
しかしコンビニ交付は伸びず、出張所がなくなったあおりで市役所の窓口来場者が1・5倍に増えてしまった。
政府の「マイナンバーカード利活用推進ロードマップ」には、オリンピックやカジノ入場時の本人確認など、多くの市民にとってまったく実用性のないものも散見されるなか、今後さらなる利用拡大が進められていくのは間違いない。なかでも現在検討されている戸籍事務へのマイナンバー利用については今年1月、日弁連が「戸籍を個人番号に紐付けする必要性がなく、取り返しのつかないプライバシーへの悪影響を与え、新たに莫大なシステム構築費用が発生する」と警鐘を鳴らし、反対する意見書を政府に提出している。
また4月には健康保険証をマイナンバーカードにするとの報道もあったが、日本医師会などが「医療情報を保護する法整備がなく、プライバシー性の高い病歴が生涯にわたって個人番号に紐付けされるのは極めて危険」と保険証の一体化に反対する声明を4年前に発表している。
そして先日、日本年金機構の500万人分の個人情報のデータ入力を受託した業者が、禁止されている再委託を中国の業者にしていたことが発覚した。マイナンバーの流出などはなかったとのことだが、またしても個人情報のずさんな管理体制が明らかになった。今後、さらに深刻な事態が起こらないとも限らない。その前にマイナンバー制度は中止にするべきだ。