【人民新聞弾圧】勾留理由開示公判レポート 勾留をつづける合理的理由などない

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 12月8日午後、神戸地裁にて兵庫県警生田署に不当勾留されている当紙Y編集長の勾留理由開示公判が行われた。国家権力が個人の身柄を拘束するという行為に対し、裁判所はそれが正当なものであるかどうか責任を持って審査し、必要に応じて却下する義務を負う。しかし日本の現状においては検察が出した勾留請求をそのまま認めるケースがほとんどである。よっていったん逮捕されれば被疑者は最大23日間にわたり警察署に監禁され、連日取り調べを強要されることから、冤罪・人権侵害の温床であるとして国際的にも批判を浴びている。こうした状況において、裁判所が行った勾留決定の理由を公の場で問い、勾留されている本人も意見を述べるという、せめてもの対抗手段が勾留理由開示公判である。

 寒空の下、大法廷には数十名の傍聴者が各地から続々と集い、直前に行われた神戸地検に対する抗議申し入れの参加者も合流した。静まり返った法廷のなか、係員に付き添われてY編集長が入廷すると大きな拍手が沸き起こり、編集長は手錠をかけられた両手をかかげてこれにこたえた。

 公判では、勾留決定を行った毛受裕介裁判官が検察の言い分をそのまま繰り返し、「罪証隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」などがあることから勾留を認める、と述べた。具体的にどのようなおそれがあるのかと追及する弁護士の質問に対しても、「答える必要はない」の一点張りをくりかえした。傍聴席から怒りの声が相次ぐと毛受裁判官は退廷警告を乱発し、1名の傍聴者を係員に引きずらせて退廷させるに及んだ。こうした態度に対し、弁護士からも「裁判官の職責を放棄しており、あまりひどい」との抗議が行われた。

 続いて弁護士からの意見陳述が行われた。被疑事実である自分名義のキャッシュカードを他人に使わせる行為は、市民が日常的に行っていることであり実質的な被害などないこと、資料・PC・携帯などあらゆるものをすでに押収されているのに、罪証隠滅など不可能であること、職場である人民新聞社を放棄して逃亡するわけなどないこと、勾留によって業務に損害が出ていることが述べられた。在宅捜査で十分であり、勾留の必要などないにもかかわらず身柄を拘束していることは、政府に物を言う存在である新聞社に対する弾圧であり、虚偽の自白の獲得を目的とする憲法違反の行為であると締めくくり、同意の拍手が鳴り響いた。

 次にY編集長からの意見陳述が行われた。まず逮捕勾留は不当、違法であり、自分はそもそもキャッシュカードを騙しとってなどいないので、犯罪そのものが成立しない、と編集長は述べた。取り調べでも「オリオンの会」のメンバーなどについて繰り返し尋問されるなど、別件逮捕であり、政治警察的捜査であること。そもそもオリオンの会の活動自体は数年前から公知の事実であり、100歩ゆずって「詐欺罪」が成立したとしても、逮捕勾留しなければならないような事件ではない、と述べた。続いて、留置場では着ていた衣服を規定に合わないとして奪われ、抵抗したら数時間懲罰房に入れられたこと、番号で呼ばれ、意味不明な規則に従わされるなどの非人間的な扱いについて報告した。いっぽう、最近では取り調べの刑事もおざなりな質問しかしておらず、無意味な勾留は相手にとっても苦痛なのではないか、と苦笑をまじえて語り、勾留生活中に新聞の新企画の着想も続々と得られ、職場復帰する準備は万全である、と元気いっぱいに述べた。被害者不在の「犯罪」で勾留をつづける合理的理由などない、と締めくくり、万雷の拍手のなか陳述を終えた。

 いずれの側に道理があるのか、だれが聞いても明白であるような公判であった。途中から神妙な顔をしてY編集長の陳述を聞いていた毛受裁判官が、一刻もはやく良心を取り戻し、不当勾留を取り消すことを望む。さもなければ、公安警察の言論弾圧・人権侵害に加担した判事として、歴史に汚名を刻まれるだろう。(編集部・金津)

本人陳述の全文はこちら

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