大義のない解散総選挙が始まった。与党300議席超かと報道されるが、昨年の参院選で自民党が全敗したのは東北・北海道だ。福島原発の被害、TPPによる農業切り捨てなどへの怒りが表明された。今回の選挙はどうか?市民はどう動くのか?を取材に出向いた。山形で自律的な農業に、福島で労働組合や反原発運動に取り組む人々に話を聞き、原稿もお願いした。
また、小池新党の登場でメディアが政局報道一色になり、国会冒頭解散の問題や改憲などの政策が論議されない影響も大きい。小池知事の足下・東京で運動に取り組む方にも原稿をお願いした。各地の声をお送りする。(編集部)
地方の疲弊を招いたアベノミクス
「圧政」の域に入った安倍政権
山形県おきたま興農舎代表 小林 亮さんインタビュー
東北・北海道は、社(旧)・共を合わせれば、全体の約3~4割を占めるくらいの基礎票があり、中選挙区なら1.5人の議員を当選させることができる力量があります。昨年の参院選では、自・公vs野党共闘という構図となり、東北農村部としてベストの対決構図で、民進党候補を勝利させることができました。
ところが民進党は、これを自分たちの力量と勘違いしてしまったようです。民進党は、これを今回も取り込めると勘違いしている節があり、希望へと流れ込んだようです。
民進党から希望の党に移った議員たちは、安保法制や改憲への立場を曖昧にして耳障りよく話をすれば票がもらえると、甘く見ています。そんなもんじゃない。ここまで政治路線の違いが明確になってしまうと、旧社会党や共産党支持者が投票するはずがないのです。
今回の野党再編劇の中で、彼ら議員たちがどちらを向いているのかが、明確になりました。結局、彼らが見ているのは我々地元の選挙民ではなく、中央のポストが欲しいだけであることがわかりました。
政権選択の中身こそ重要
根本的な選挙の争点は、グローバリズムやアベノミクスが、本当に国民の暮らしを豊かにしたのかであるはずです。格差の拡大が田舎にしわ寄せされてしまっています。最低賃金を見ても、東京=958円に対し、山形・秋田・青森は、739円程度。こうした格差を拡大したのは、安倍政権です。大資本の都合によって、「協同組合」の枢軸たる農協すら潰そうともしている。「自由と民主」とは相容れない「圧政」の域に入っているのが現状です。
「政権選択」がテーマになっていますが、その中心的課題は何かを明確にすべきです。都市と地方の格差は、何によって生まれ、どうすべきかこそ問われなければなりません。
不公正な行政運営、暮らしの貧困化と格差の拡大は、安倍首相自身が口にする民主主義という言葉が実態とかけ離れている現実を明らかにしています。これを強く意識している人は少ないかもしれませんが、みんな「どこかおかしいぞ」という感覚はもっています。この普通の人の感覚を、専門的な政治用語ではなく普通の人の言葉で表現する力量が、私たちに問われています。安倍首相ですら「自由・民主主義」を建前として口にします。この価値観は否定できないのです。
実態を伴った言葉を
「人は生まれながらにして平等である」ことは、民主主義の基本であり、政治はそのための道具でなければなりません。若い人たちを見ていると、差別・格差を当然視し、不平等への怒りがなくなっているように見えます。教育の責任もあるでしょうが、社会の責任が曖昧にされ、どんな不平等や差別も自己責任に解消されてしまっています。
仲間が増えていかず縮小再生産を続ける左派の再建は、容易ではありません。しかし、道理や良識を選択の基準とする勢力が地域でなかまをふやすのは可能です。価値観の違いに囚われず、「ともに生きていく」という生活者の論理で粘り強く働きかけることが重要です。価値観といっても、違いは偶然の産物であったりするからです。
改憲が現実化しかねない今日、実態を伴わない言葉が溢れていますが、地域のなかで平等・互恵の関係性を構築するには、やってみせるしかありません。そうした実績を伴った言葉を創り出したいと思っています。