浅野教授の同僚5人「怪文書」名誉毀損裁判

Pocket

フリージャーナリスト 佐竹純一

 浅野健一・同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻博士後期課程教授が2015年3月に東京地裁へ提訴し、京都地方裁判所第3民事部(久保田浩史裁判長)へ移送された怪文書5人組(同専攻の渡辺武達、小黒純、竹内武長、佐伯順子、池田謙一各氏)を被告とした名誉毀損訴訟の判決言い渡しが、7月13日あった。久保田裁判長は「原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」という主文を読み上げた。
 裁判長は、極右TVタレント、村田晃嗣学長(当時、現法学部教授)の指揮の下に強行された解雇を正当化し、ヘイト文書を名誉棄損に当たらないと判断。裁判長は、同大の定年延長制度についても、「対象者に定年延長を求める権利があるわけでない」と認定した。これは、3月1日の京都地裁(堀内照美裁判長=現名古屋高裁判事)による地位確認裁判の棄却判決を踏襲した不当判決だった。浅野教授は7月24日、一審判決を不当として大阪高裁へ提訴した。
 2月25日号で詳報したように、この裁判は渡辺・小黒両氏と浅野教授が法廷証言し、4月13日に結審していた。
 判決を傍聴した支援者3人は、「大学の中のことに裁判所は関与したくないとして、門前払いという感じだ。京都のトップ大学に不利な判決は出さない、と最初から決めていたのではないか」と感想を述べた。
 怪文書は、13年10月30日の社会学研究科委員会(教授会)で配布された資料。裁判長は、虚偽だらけの怪文書の多くの記述を「意見の表明」として真実性についての判断を避けながら、小黒証言を事実と認めた。
 判決は、被告らによる、浅野教授が職場にいることで帯状疱疹、突発性難聴に罹ったという記述について、小黒氏本人がストレスで罹患したと法廷で証言したことを根拠に、不問とした。野田正彰・前関西学院大学教授は、「帯状疱疹はウイルスによって起きる疾病。ストレスがたまったから発病したというのは、科学を無視した認定だ」と、判決を批判している。
 浅野教授の代理人の山縣敦彦弁護士は、「資料配布が不法行為に当たるのは『審査の目的を離れ、専ら人身攻撃を目的とした場合に限られると解するのが相当』と判決は書いているが、怪文書はまさに浅野教授の人身攻撃を目的にしている。地位裁判で大阪高裁が一審判決を見直す意向だ。この裁判も逆転勝訴を目指す」と話している。
 7月25日号で、早野慎吾教授が、怪文書の浅野教授の研究業績に関する小黒氏の記述に捏造があることが報じられているが、この鑑定は怪文書裁判の結審後に行われた。
 弁護団は9月中旬に控訴理由書を提出するが、浅野教授解雇を決めた教授会の審議資料の重要部分が捏造だったことを控訴理由に挙げる方針だ。

お詫びと訂正

 前号(1622号)「浅野健一氏の定年延長に不正過小評価するための捏造か」の記事中に間違いがありましたので、訂正をしてお詫びします。文中最後の「なお、大学と早野教授にこの原稿を送って疑惑の回答を求めたが、回答はなかった」は間違いで、回答を求めたのは「同志社大学広報部と小黒純教授」です。早野教授ならびに関係者の方々には、たいへんご迷惑をお掛けしました。重ねてお詫び申し上げます。

(編集長・山田洋一)

 

 

Pocket

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。