際限ない自営業化と給率性(賃金を売り上げに連動させるシステム)の一般化
4月30日、「自由と生存のメーデー2017 あなたの時給はいくら? ~ハラスメントと『払われない労働』~」が開催された。主催はフリーター全般労働組合。長年、同労組の活動を担っている司会の山口素明さんは「典型的な働き方は存在しない」と口火を切り、組合員によるリレー報告が行われた。以下、登壇者3人の報告を抜粋して共有したい。
いつでも働ける宅配業
まずは、鈴木さんが働く「ウーバー」だ。ウーバーはアメリカでスマートフォン・アプリを利用した白タク仲介業者として発達し、日本では東京23区を中心として宅配業者として進出している。他の宅配業者との違いは、「スマホのアプリに登録するだけで、誰でも・いつでも働ける」という点だ。当初は「短くやっても週10万円は稼げていた」とのことだが、業者元のウーバーとは「請負契約/個人事業主扱いとなる」ことから、労働法が適用されない。登録者の増大から、一方的に賃金計算方法が変更され、賃金は低下する一方だ、という。「時間帯によっては、東京都の最低賃金を下回る時給700円で働いた」とのことだった。また、「請負契約」とされていることから、労災保険はなく、事故時はすべて「自己責任」となる。フルタイムで働いても、健康保険や厚生年金などの社会保険に加入できない。ガソリン代などもすべて自費で持つこととなる。
―高校中退だし、3年前に身体を壊しているから『ふつう』に働けない。ウーバーは、履歴書は要らないし、都合のいい時にいつでも働けるから働いている。でも、なにもかも自己責任で、急に賃金が変わる。これからも賃金は下がり続けると思う。(鈴木さん)
鈴木さんは「新自由主義的な働き方だ」と形容した。
過労死ライン超えたWワーク
奥山さんは、昼に飲食店で8時間、夜にキャバクラで7時間勤務している。過労死ラインを超えたダブルワークだ。―お金はないと不安だから。前の仕事は東証1部上場の大手企業だったけど、残業代が出なかった。いまは働いた分だけお金がもらえるから、その点で安心して働いている。(奥山さん)
1日15時間労働の奥山さんだが、前職に比べて非正規労働・ダブルワークの現在のほうが安心できる/生きている実感を見出せる、という。また、「一方で解雇されたとしても、もう一方の仕事がある」と安心できる点を強調して述べた。長時間労働のなかでもフリーター全般労組の活動に携わる理由は、「職場は味方だと思っていた人が敵になる。労働相談・争議活動に感動し、サークル活動のような居心地よさ」を覚えているのだという。
キャバクラの複雑すぎる給与体系
最後に、フリーター全般労組共同代表の田中さんの報告だ。田中さんは、共同代表としてキャバクラ関連の労働相談・争議を活発に担う傍ら、自身がキャバクラで働いている。キャバクラ労働に対する質疑応答のなかで、(1)店が掲げる時給と給与実態の乖離、(2)実費負担の多さ、(3)「毎日5時間飲み続けること」のしんどさ、を挙げた。
「キャバクラで働く=稼いでいると思われがち」だが、現実は大きく異なっているという。給与計算方式そのものが複雑であり、ヘアーメイクから終電後の送迎車の経費に至るまで全て自己負担で、結果として大きく給料は目減りする。相談を受けた中には、時給の最大4割が不透明な「税」や「福利厚生費」として天引きされる例もあった。稼げる人はごく一部で、ノルマ罰金なども常態化しており、手取りは20万円を切る人が多い。
―キャバクラでは多くの店が給料に「給率制」「ポイント制」を導入しているが、私自身がいまも説明できないし、覚えきれない。いま私が働いている実際の時給がいくらなのかもわからない。店はいくらでもごまかすことが可能だ。給料が出てから初めて、「自分の賃金がいくらなのか」がわかる。(田中さん)
「バトルなくして権利はない」
他の登壇者から「セクハラは『ふつう』で、客から熱湯を掛けられたことや追いかけ回されたこと、などのキャバクラの被害実態、生活保護を受けることそのものがひとつの労働であり、雇用貢献していること、障がい者運動の視点から「バトルなくして権利はない」こと、30件以上の不当解雇の経験を通して「お茶汲みをしないことが解雇につながった」ことや「求人雑誌を読むだけでゲロが出そうになる」ことが語られた。
なお集会の終盤では、キャバクラ経営者を詰めていく数々の労働争議の映像が映された。労働組合の力が一目瞭然でわかるような作品で、観ている私自身の心が熱くなった。今後、ネットでの一般公開を視野に編集中とのこと。フリーター全般労組の今後の活躍に期待したい。
(編集部・ラボルテ)