籠池氏との関係を懸命に否定する日本会議

天皇主義愛国教育で一体―安倍首相・維新の会森友学園・日本会議

LINEで送る
Pocket

 社会思想史研究 渋谷 要
森友問題の疑惑については本紙3月15日号で展開されている。ここでは教育内容をめぐる問題を見てゆく。

教育勅語復活の閣議決定をめぐって

 森友学園の「塚本幼稚園」では園児が「教育勅語」を暗唱させられていた。この「教育勅語」問題からはじめよう。安倍首相のブレーンに八木秀次氏(麗澤大学教授・法学者)がいる。彼は2006年「新しい教科書をつくる会」から独立してつくられた一般社団法人「日本教育再生機構」の理事長などとして活動している。
 八木氏の主張の一つは例えば「教育基本法―その知られざる原点」(『誰が教育を滅ぼしたか』、PHP、2001年)に展開されている。それは一言でいうならば、戦後の教育基本法は、教育勅語(の精神をもった道徳教育)を排除するものではない、というものだ。八木氏の言葉で戦後教育基本法の「立法者意思」は「教育勅語擁護」だったという。だが1948年、排除(衆議院)、失効(参議院)させられた。だから道徳教育がなくなった、これを取り戻せ、というわけである。
 こう見てくると、現政権が今年(17年)3月にした「教育勅語」に関する閣議決定での論法、「我が国の唯一の根本とするのは不適切」だが「教育基本法などに反しない形で教材として用いる」ことはできるということになるだろう。安倍首相らは、森友学園は切ったとしても、それで愛国教育を否定するとはならない。まさに弥縫策としての閣議決定だ。だが「教育勅語」の核になる部分は「一旦緩急あれば義勇公にして天壌無窮の皇運を扶翼すべし」というものであり、《天皇の國のために死を覚悟せよ》というものだ。それ自体、戦後教育とは矛盾する。

愛国教育・天皇主義で一蓮托生

 実は、この八木氏の「日本教育再生機構」の大阪の組織が、2012年2月26日に大阪でおこなった「教育再生民間タウンミーティングin大阪」シンポジウムで、パネラーをした安倍晋三氏(当時・元首相)と松井大阪府知事が出会い、八木氏がとりもって、教育理念などの問題で意気投合したのが、森友学園「忖度」問題のそもそもの始まりだ、という分析がある。
 そもそも安倍首相は日本会議「国会議員懇談会」の会員であり、森友学園の理事長だった籠池泰典氏は、日本会議大阪支部に出入りし「運営委員」にもなった。また、籠池氏の娘の「瑞穂の國記念小学院準備室長」籠池町浪氏は、例えば今年3月19日開催の「シンポジウムin芦屋 これからの歴史教育を話し合おう」に講師として参加が予定されていた(見合わせたという)が、そのシンポは「日本の歴史文化研究会」と「日本教育再生機構兵庫」の共催だった。また、八木氏も日本会議系右翼学者にほかならない。さらに前記「小学院」の「名誉校長」に安倍昭恵氏が就任した時、2015年9月の同学園の「塚本幼稚園」での講演会では「せっかくここで芯ができたものが(公立)学校に入ったとたんに揺らいでしまう」とまで言い放ったのである。
 まさに安倍首相側、大阪維新の会、籠池氏ら森友学園、日本教育再生機構、日本会議は、すべて天皇主義・愛国教育で一体なのである。
※「瑞穂の國記念小学院」の「瑞穂の國」とは、『日本書紀』の「天壌無窮の神勅」の中に登場する國である。

「トカゲの尻尾切り」は成功するか

 それが今回の森友問題で、「籠池なんて知らない」となり、籠池氏が国会の証人喚問(今年3月23日)のとき、「トカゲの尻尾切りにならないように」との籠池氏の発言となっていった。このトカゲの名前こそ「日本会議」だということだ。
 日本会議大阪支部は、2月17日、籠池氏が「大阪支部長」だと報道した週刊文春と週刊新潮に対し、「支部長ではない」旨の訂正記事を要求した抗議文を送っている。さらに、日本会議事務総局は、3月13日、「6年前の平成27年1月に本会を退会されている」との文書を同組織の国会議員懇談会の各議員に配布している。関係性を否定したいとの考えからだろう。
 大阪維新の会の松井大阪府知事は、籠池氏が国会の証人喚問で「松井知事に梯子をはずされた」と述べたことに対し、「当たるところは僕しかないのか、痛々しくかわいそう」などと皮肉るなど、無関係を装っている。
 また、稲田朋美防衛相も「10年ほど会っていない」「関係は、私にはない。断っている」と国会で答弁しているが、稲田氏は籠池氏が会員として参加してきた「関西防衛を考える会」の「特別顧問」をしてきた。一方籠池氏は、例えば2011年からは大阪護国神社で同会などが開く花見の実行委員長をするなどしてきた人だ。だが関西防衛を考える会は、「塚本幼稚園」などへの寄付などは一切していない、と切り捨てに必死だ(『AERA dot』3月17日、「愛国爆弾が国会で炸裂へ」参照)。
 また、安倍首相は籠池氏との関係について2月17日の国会では、「妻から森友学園の先生の教育は素晴らしいと聞いている。いわば私の考え方に非常に共鳴している」といっていた。だが2月27日には「教育の詳細は承知していない。安倍首相がんばれと園児に言ってもらいたいということは全くさらさらない」となり、28日には「(籠池理事長と)個人的関係は全くない」と、国会での答弁を籠池氏との関係否定に変えていった。
 籠池氏とつながっていた人々がトカゲの尻尾切に追われ、この問題を早く終わらせたい、とやっきになっている。この人たちにとって、ほとぼりが冷めるまでは、森友学園を媒介に作られたいろいろな関係性を後景化させたいところだろう。そして、そこに日本という「土建国家」の官僚の関与の問題も浮かび上がっている。
 1980年代のリクルート事件では、天皇主義者・中曽根康弘前首相(当時)が、自民党を離党に追い込まれ、竹下首相が辞任、竹下内閣は総辞職した。その後の第15回参議院通常選挙では自民党は建党史上、初めての参議院過半数割れをおこして惨敗するなど、自民党にとっての政治危機を招いた。
 この間の森友問題では、安倍首相は「私や妻が関わっていたということになれば、…間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」(今年2月17日、衆議院予算委員会)と言い切っている。だからこそ籠池氏を「トカゲの尻尾切り」にして、逃げ切ろうとしているのだ。

LINEで送る
Pocket