韓国 新自由主義に翻弄される若者・非正規労働者

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キャンドル革命と大統領罷免

ソウル書林 李 慈勲

韓国大統領選挙(5月9日)は、世論調査で「国民の党」の安哲秀候補が支持率トップに浮上するなど、左派系とされる「共に民主党」の文在寅前代表の独走状態が一変した。共和国との対応・統一問題が、選挙戦の争点に急浮上したからだ。継続的で大規模な街頭デモによって大統領罷免を勝ち取った韓国民衆の動きやその背景、さらに大統領選の行方を李 慈勲氏に聞いた。(文責・編集部)

編:キャンドル革命に参加した若者たちの思いや背景は?
:韓国では、新自由主義政策の導入によって資本主義が全面化。非正規労働者は6割を超えています。OECD諸国の中で自殺率は最高です。資本が集中する一方で労働側は分断され、非正規労働者は過酷な生活を強いられています。これらが、キャンドル革命の背景となっています。
 韓国の大学進学率はOECD諸国中トップで、毎年50~60万人が求職活動をしますが、これを満たそうとすると、6%以上の経済成長率が必要です。ところが現実は2%なので、若者の失業率は、実質15%を越えています。高い授業料を払って卒業したのに就職できないのです。今の若者に共通する人生観は、「金のスプーンを持つ人と土のスプーンを持つ2種類の人がおり、その身分は生まれた時点で決まっている」というものです。低賃金の非正規労働では結婚もできず、人生に絶望しています。
 韓国は、1999年の経済危機以降、IMFの経済政策を受け入れ新自由主義を積極的に導入しました。規制緩和政策のなかでも特に労働の規制緩和が大胆に進められ、一気に非正規労働が拡大しました。金大中政権時代、労働問題は、政・労・資による「労働調整委員会」で議論することになっていましたが、数年で機能しなくなり、韓国は世界で最も労働規制が緩和された国家の一つとなり、労使の力関係は逆転しました。
 韓国GDPの70%が輸出に依存しており、輸出産業はわずか30程度の財閥に牛耳られていることが、根本的問題です。IMFの経済政策は、(1)破綻した大手財閥企業を公的資金によって救済し立て直す、(2)外資の導入です。世界1位を誇るサムスン電子は、68%が米国資本(GE)です。韓国電力・浦項製鉄など主要企業は、米国資本に乗っ取られました。グローバル資本は、規制緩和によって労働者を非正規化し、搾取して得た利益を外国に持ち去っています。
 韓国資本主義は、大きな壁にぶち当たっています。財閥の基盤である造船業、海運業、電子産業、自動車産業は、いずれも中国に追われ、窮地に立っています。例えばサムスン財閥は、約50社のグループ会社のうち黒字は20社程度です。韓国にも独占禁止法はありますが、機能していません。財閥が、金融・流通・市場を独占し、膨大な利益を外国の株主に配当しています。財閥企業が保有する資金は、約400兆ウォン(40兆円)に達しています。本来、労働者に配分し、国に税金として納めねばならない金です。資本主義が発展するには、再分配が必要なのですが、新自由主義は、再分配を拒む経済システムなのです。
 次期政権は、経済的不平等の是正に関する革新的な政策が必要です。経済民主化を要求する勢力は、全国経済人連合会(全経連)を解体すべきだと要求していました。しかし今や、財閥企業自ら脱退を宣言しています。2月に現代自動車グループが全経連脱退を宣言し、起亜自動車、現代製鉄など系列企業11社も脱退します。昨年末のLGに続いて、サムスンとSKもすでに脱退しており、4大財閥グループが脱退するので、全経連は実質的に崩壊しました。
 つまり財閥は、成長率も頭打ちになって自らを維持するためにも構造改革をしなければならない立場に置かれています。韓国の中国に対する貿易依存度は26%です。韓国企業が製造した中間財を中国が輸入して世界に輸出してきたのですが、大きく変化しようとしています。長期的に見れば、韓国経済界が構造改革を怠った場合、破綻は不可避なのです。
編:キャンドル革命に参加した若者たちの思いや背景は?
:韓国では、新自由主義政策の導入によって資本主義が全面化。非正規労働者は6割を超えています。OECD諸国の中で自殺率は最高です。資本が集中する一方で労働側は分断され、非正規労働者は過酷な生活を強いられています。これらが、キャンドル革命の背景となっています。
 韓国の大学進学率はOECD諸国中トップで、毎年50~60万人が求職活動をしますが、これを満たそうとすると、6%以上の経済成長率が必要です。ところが現実は2%なので、若者の失業率は、実質15%を越えています。高い授業料を払って卒業したのに就職できないのです。今の若者に共通する人生観は、「金のスプーンを持つ人と土のスプーンを持つ2種類の人がおり、その身分は生まれた時点で決まっている」というものです。低賃金の非正規労働では結婚もできず、人生に絶望しています。
 韓国は、1999年の経済危機以降、IMFの経済政策を受け入れ新自由主義を積極的に導入しました。規制緩和政策のなかでも特に労働の規制緩和が大胆に進められ、一気に非正規労働が拡大しました。金大中政権時代、労働問題は、政・労・資による「労働調整委員会」で議論することになっていましたが、数年で機能しなくなり、韓国は世界で最も労働規制が緩和された国家の一つとなり、労使の力関係は逆転しました。
 韓国GDPの70%が輸出に依存しており、輸出産業はわずか30程度の財閥に牛耳られていることが、根本的問題です。IMFの経済政策は、(1)破綻した大手財閥企業を公的資金によって救済し立て直す、(2)外資の導入です。世界1位を誇るサムスン電子は、68%が米国資本(GE)です。韓国電力・浦項製鉄など主要企業は、米国資本に乗っ取られました。グローバル資本は、規制緩和によって労働者を非正規化し、搾取して得た利益を外国に持ち去っています。
 韓国資本主義は、大きな壁にぶち当たっています。財閥の基盤である造船業、海運業、電子産業、自動車産業は、いずれも中国に追われ、窮地に立っています。例えばサムスン財閥は、約50社のグループ会社のうち黒字は20社程度です。韓国にも独占禁止法はありますが、機能していません。財閥が、金融・流通・市場を独占し、膨大な利益を外国の株主に配当しています。財閥企業が保有する資金は、約400兆ウォン(40兆円)に達しています。本来、労働者に配分し、国に税金として納めねばならない金です。資本主義が発展するには、再分配が必要なのですが、新自由主義は、再分配を拒む経済システムなのです。
 次期政権は、経済的不平等の是正に関する革新的な政策が必要です。経済民主化を要求する勢力は、全国経済人連合会(全経連)を解体すべきだと要求していました。しかし今や、財閥企業自ら脱退を宣言しています。2月に現代自動車グループが全経連脱退を宣言し、起亜自動車、現代製鉄など系列企業11社も脱退します。昨年末のLGに続いて、サムスンとSKもすでに脱退しており、4大財閥グループが脱退するので、全経連は実質的に崩壊しました。
 つまり財閥は、成長率も頭打ちになって自らを維持するためにも構造改革をしなければならない立場に置かれています。韓国の中国に対する貿易依存度は26%です。韓国企業が製造した中間財を中国が輸入して世界に輸出してきたのですが、大きく変化しようとしています。長期的に見れば、韓国経済界が構造改革を怠った場合、破綻は不可避なのです。

相似形の安倍首相と朴前大統領

編:次期政権の方向性は?
:韓国における新自由主義は、破綻しているのです。民主化とともに政権に就いた金大中政権が新自由主義を導入し、引き継いだ盧武鉉政権も修正できなかったという厳しい評価が民衆にはあります。もう一つ重要なのは、「左派」と言われ、次期大統領の本命とされている文在寅さんですが、我々が願っているような「左派」ではないことです。韓国の民主党は保守政党です。独裁政権下で民主化闘争を担った中道左派的な人物もいますが、基本的に反共であって保守政党なのです。韓国で労働者や疎外された民衆側に立ち、中産階級以下の利害を体現する政党はありません。統合進歩党(民主労働党・国民参与党・進歩新党脱党派の「新しい進歩統合連帯」が合同して結成)は、その萌芽でしたが、憲法裁判所が「強制解散」を宣言し、潰されてしまいました。
 社会的矛盾が溢れているので、次期民主党政権は、国民の要求に添う政策へと修正するでしょう。民衆の要求に反するような政策を採れば、国民の抵抗によって倒されるからです。文在寅候補が大統領選挙で訴えているスローガンが「積敗清算」です。積もり積もった「腐敗」を清算するという意味で、(1)腐敗した政治勢力を一掃する、(2)経済面では大企業と政治の「政経癒着」を清算し、大企業中心主義を改める。それから(3)言論改革です。言論の本来の使命は反権力です。政権の腐敗を暴露し批判して国民の側に立つべき言論が、御用化されているので、社会的弱者や女性、正義の立場に沿ったメディアに改革していくというものです。これらは、民衆が要求している政策です。
編:安倍政権が森友学園の件でスキャンダルになっています。朴元大統領のスキャンダルとの共通性は?
:両者共に、(1)反共理念を持っている右翼であること、(2)二世政治家であることを指摘しておきます。権力が世襲されること自体がおかしいのです。ブルジョア民主主義の構造的な矛盾だと思います。(3)番目は、アメリカに忠実な家来であり、(4)番目は独占資本、大企業中心の代弁者であることです。よく似た政治家です。

民衆政党結成の可能性

編:民衆運動の中から新たな政治勢力を創り出すという動きは生まれていますか?
:文在寅氏が大統領になったとしても、民主党は国会で過半数を得ておらず、4党連合政府となります。極めて不安定な政権運営となるでしょうから、改革法案が国会で頓挫し、改革が進まないという事態になれば、政界再編も起こりえます。 韓国社会の発展と統一のためには、解散させられた「統合進歩党」のような革新政党を再建しなければなりません。疎外された民衆と労働者の立場に立った「革新政党」は、必然的に「南北融和」を目指すでしょう。
編:注目される社会運動は?
:大別すれば、アソシエーション運動と労働組合運動です。ソウル市長=朴元淳(パク・ウォンスン)氏は、民主的で革新的人物です。彼は、社会連帯システムという観点から、小規模な労働組合運動を積極的に支援しています。彼は市民運動家として出発しました。「参与連帯」という運動に資産を投げ出して参加し、政治家に転身した後も弱者の立場でやってきています。
 労働運動の側も、指導部を形成する40~50歳代は、「民主労総」に加盟しており、主要な加盟労組である全教組は世界最大規模の組合です。これら労組活動家が、連動して社会連帯運動をやっているのです。
 農民運動も強力です。資本集約的な農業に反対して、自活・自立と連帯できる農村共同体をめざして農民運動をやっています。彼らは根本的に新自由主義に反対です。
 韓国のキャンドル革命は、遠因としては長く続いた保守政権の残滓がありますが、近因として朴槿恵大統領と親友である崔順実よる不正の問題がありました。ただし、崔順実の政治介入は、個人的なものではなく、米国の意向を代弁する反共勢力が背後で暗躍していると感じています。
 いずれにせよ、持続的で大規模なデモによって政権を打倒した意義はとても大きいし、新大統領もこうした民衆の力を無視することはできません。財閥自体も構造改革不可避を自覚しており、今後の変化に注目したいと思っています。

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