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トランプのムスリム入国禁止令その目的と政権の統治手法とは?

 

イラン系米国人研究者 ラレー・ハリリ(truthout 1月31日)

翻訳・脇浜義明
 中東・アフリカ7カ国の国民の米国入国を禁止する大統領令は、未熟なホワイトハウス住人の焦りの表れである。この禁止令に至る過程と論理を見ると、反トランプ運動に対抗するために考えられた施策であることがわかる。
 大統領になった後のトランプ・チームは、「米国へのテロリストの入国から国民を守る」と題する大統領令を出して選挙公約を履行した。それは、(1)ビザを所有していてもシリア難民の無期限入国禁止、(2)イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イェメンの7カ国の国民、正式ビザを持っている者も含めて、4カ月間の入国禁止、(3)同7カ国のグリーンカード保持者の入国制限、(4)同7カ国の国民で対象外の国のパスポートも保持する者にも4カ月間の入国禁止(現時点で(4)が実施されるかは不明)。トランプが入国禁止にした7カ国は、米国の地政学的敵対国になるが、いずれの国民も米国本土でテロ行為を行ったことはない。
 これら矢継ぎ早の大統領令頻発は、支持基盤へのメッセージであり、ムスリム入国禁止令は露骨な外国人嫌悪・白人民族主義者向けのものである。「ムスリム入国禁止」と「メキシコ国境の壁」は選挙公約であり、トランプ支持者にとって彼が「政治的正義」の面をした偽善者でないことの証拠であった。この二つは「米国第一」スローガンの具体化で、大統領幹部補佐の極右スティーブン・バノンの団体がスローガンとして掲げていたもので、彼が1年前から作成していたものだという。
 大きな反発(大規模デモ、訴訟、連邦判事の大統領令の効力の部分的停止命令)を受けたトランプは、大統領令の「倍賭け」に出た。「エジプトやサウジアラビアやその他の国もリストに入れることもあり得る」と示唆したのだ。普通、大統領令を出す前には、関係省庁のトップと相談したり、一部を事前にリークして世論の反応を確かめたりするものだが、そういう手続きなしで発表した。そのため体制内での混乱が見られた。
 1月27日午後に署名、同時に発効とされたが、本文発表は数時間後であった。本文発表はないとさえ報道官が言った。国土安全保障省(DHS)は常識的にグリーンカード(永住ビザ)保持者を除くと解釈したが、バノンとミラー補佐官はその解釈を否定した。土曜日、二重国籍を持つ7カ国人も排除の対象となると国務省が発表。全国移民税関捜査局職員組合と全国国境警備職員組合がトランプ支持を表明し、連邦判事が大統領命令の効力停止命令をだした後でも、それに従わない現場組合員がいた。
 土曜日には、大規模デモが展開された。主要空港には難民支援団体、黒人差別反対グループ、ムスリム、公民権運動などが集まり、ケネディ空港ではニューヨーク市タクシー組合連合が抗議スト、空港からと空港へのサービスを拒否した。3000人の弁護士が移民・難民の法的支援に立ち上がり、移民技術者が欠かせないネット業界も大統領令に反対、フェイスブックCEO=マーク・ザッカーバーク、アップル社CEO=ティム・クックなど、資本家の一部も反対表明した。配車アプリ「リフト」はスト破りをせず、アメリカ自由人権協会(ACLU)に100万㌦を寄付した。
 ACLUは、米軍に協力したイラク人通訳、イラン人教授、グリーンカード保持者、他60人について、大統領令暫定的差止め命令を求める訴訟を行った。
 カナダ政府は、国家安全保障顧問=マイケル・フリンと折衝、「二重国籍者を事実上入国禁止対象にしない」という言質を引き出し、ホワイトハウスもグリーンカード保持者の入国禁止を取り消した。
目覚めた民衆は止められない
 大統領令が巻き起こした混乱は、「政権の未熟さ」ではなく、意図的なものだ。第一の特徴は、大統領令や種々の覚書の不透明性だ。命令や法の解釈が曖昧なほど権力者が好き勝手でき、権力者の恣意が発揮できるからだ。
 第二に、反対意見の可能性を事前に排除すること。ムスリム入国禁止令の直後に、トランプは多くのメモを乱発したが、特に注目すべきは、CIA長官と統合参謀本部議長をNSC(国家安全保障会議)の閣僚級委員会のメンバーから外し、代わりに大統領個人の顧問にすぎないバノンを常任委員にしたことである。こういう自由裁量性や冷酷さで反対派の出鼻をくじくのだ。
 第三に、これまでの国を支えてきた諸制度や、それを公的に管理する機構への多面的な攻撃だ。自分の考えに反発が予測される行政部に対して事前に牙を抜き、大統領に黙従するように手を打つ。環境保護庁の予算をカットし、環境悪化政策に協力させる圧力をかけ、国務省・外交官のパージを行っている。1月30日、「大統領令は憲法違反だから従わなくてよい」と司法省職員に言ったサリー・イェイツ司法長官代行を解任した。また、省庁間の協力体制や事実調査制度、公と民の間の連絡体制、大統領令に関する法的助言を求める仕組みなどを無視または機能停止にしている。
 企業や労働組合など民間部門も、トランプの恫喝に屈し、黙従または積極的協力を行っている。大労組幹部がトランプの食事会に喜んで参加、配車大手のウーバー社がスト破りをし、ルフトハンザ航空とカタール航空は7カ国のグリーンカード保持者に対して乗機拒否を行った。経済界がトランプを歓迎しているのは、株価上昇で明らかである。
 しかし、行政と企業や組合を操作できても、操作できないのは民衆である。目覚めて政治化する民衆こそが、トランプにとって最大の脅威である。ムスリム禁止令がそれに火をつけたのだ。日和見主義の民主党派弁護士も、民衆の圧力に押されて反対の声を出している。米国史上前例のない民衆決起は、トランプ政権だけでなく、二大政党代議制政治そのものをも突き上げる勢いである。

グーグルとアップル・マップス社イスラエルと共謀してパレスチナ村を抹消

 truthout2016/12/12

 イスラエル、グーグル、アップル・マップス社がスーシャなどのパレスチナ人村を地図から削除する。そんな行為に米国政治家が反対の声を上げている。イスラエルは、スーシャ村を破壊、村人を追い払い、そこに入植地を建設しようとしてきた。これに対し、イスラエルの熱心な支持者であるカリフォルニア選出のダイアン・フェインシュタイン上院議員が反対の声を上げたのである。彼女は、ネタニヤフ首相に反対の意を伝える書簡を何通も送っている。
 同州の下院議員=アンナ・エシューも反対の声を上げ、ケリー国務長官に「スーシャ破壊を止めるために、即刻行動してほしい」と要望した。イスラエルの人権NGO「ハーケル」の設立者=アリク・アシェルマン・ラビも、パレスチナ人村を地図に載せることを要求し、GPSデータをグーグルに送った。マイク・ホシダ下院議員もイスラエルに破壊されたパレスチナ人村々を地図に復活させよとアップル社に要求した。
 なぜ主流派リベラルが突然こういう問題に関心を持ち、オンライン地図にこだわるのか。フェインシュタインのネタニヤフ書簡の中には「…民間人の建物を壊し、罪のない住民を追い払うのは、イスラエルの安全にとって好ましくなく、またイスラエルを政治的に孤立させる」という懸念がある。しかし、イスラエルに耳を貸す気配は毛頭ない。そもそも米国は過去にパレスチナ人村破壊と入植地建設を「違法で和平への障害だ」と表明したが、イスラエルに無視され、事実上追認している。
 イスラエルの主張は、「問題の場所はパレスチナ人の居留地でない」ということだ。ネタニヤフは「パレスチナ人村というのは嘘で、休戦の隙に何軒か家を建てて、先祖代々の村だと言っているだけ」と、フェインシュタインに答えている。だがネタニヤフの方が嘘で、イスラエル人権団体ベツェレムは「キルベト・スシャ(スーシャ)村は100年間存在しており、1917年の地図にもちゃんと載っている」と言っている。
 地図は人間の存在、歴史、文化の証拠であるが故に、地図製作者の政治観に左右される。ハイテク時代では、自らの存在証明もデジタル・メディアに依存、キーボードを叩いて出てくる映像と文字に我々の存在・非存在が決定される危険な時代である。
 最近、グーグルの地図から西岸地区とガザが消えた。グーグルはコンピューターの故障と釈明したが、前述のスーシャ村の消滅は「誤り」ではなく、意図的である。アップル・マップスの地図では、少なくとも550の村が消されている。グーグルの地図では約220の村(特にC地区の村々)が消され、代わりに不法入植地や入植前哨地の名前が載っている。数百のパレスチナ人村が無人の地と記されている。オンライン世界には、パレスチナ人もその村も存在しないのだ。
 ラビのアシェルマンは、「これはイスラエルの安全保障問題ではない。人権問題だ」と語った。「スーシャと同じ事態が何年も続いている。村人たちは何度も移動させられ、その心理的障害は大きく、子どもには心的治療が必要だ」と述べ、「米国の数少ない政治家がこの問題を取り上げたのは、パレスチナ人の人権を守る草の根運動があるからである」と言った。

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