宮古島市長選惜敗市議会は野党が多数に

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【沖縄】軍事要塞として戦争準備の進む宮古島(3)

 宮古平和運動連絡協議会共同代表 清水 早子
 2月1日、私たちは4つの市民団体と議員有志連名で、日本政府・防衛省・沖縄防衛局宛てに「千代田カントリークラブ用地測量・ボーリング調査の即時中止を求める抗議声明」を出した。以下はその要約である。

*  *  *
 「2017年1月25日の地元新聞は、沖縄防衛局が陸上自衛隊宮古島駐屯地(仮称)配備計画で、予定地の千代田カントリークラブで用地測量調査などの調査業務を着手していることを報じた。
 調査は、インフラを整備するための準備作業で、…(中略)同クラブに配備が予定されているのは…『地対艦誘導弾部隊』、作戦部隊及び重要地域の防空を担う『中距離地対空誘導弾部隊』からなり、人員規模は700から800人となっている。…ミサイル本体は配備するが、弾薬庫はないと、非現実的な説明もなされている。
 2016年6月、市長は議会で陸自配備を容認した。そして9月議会で受け入れの前提として、大福牧場のみならず当時経営難に陥っていた千代田カントリークラブへの配備も行うよう、2015年3月ごろ防衛省に働きかけていたことを認めた。
 しかし防衛省と市長は、未だに配備計画の全容、陸自配備の具体的な内容や機能の十分な説明を、情報公開を求める市民にも議会にも行っていない。また、基地建設による命の水である地下水への影響、自然環境への影響、産業・文化・経済に及ぼす影響などの具体的な調査も行っていない。
 防衛省は、2016年度予算108億円、2017年度予算351億円を用地取得などに計上しているが、基地建設後に起こりうる地下水汚染、基地が攻撃された時の被害など、島の全住民にも及びうることを考えた時、「地権者の土地を購入したから基地を造る」で済まされる問題ではない。全住民の命の問題である。
 昨年11月の沖縄・キャンプコートニーで、海兵隊と陸上自衛隊が合同で宮古島の地図を取り囲み、戦場に見立てた戦闘訓練をしている写真を(海兵隊がFB上で)公開したことは、市民に衝撃を与えている。また、2017年度防衛省予算の中に『野戦病院の調査研究費』として2000万円が計上されているが、なぜ、宮古島を含む沖縄県南西諸島に「野戦病院」の調査が必要とされるのか?やはり、この島々が戦場になることを前提に配備計画が進められようとしているのではないのか?
 このような事実への不安や現在の陸自配備の進め方に対する批判から、先の市長選で1万9千を超す住民が、配備推進に対し「慎重に/または反対」の意志を示している現実を直視し、陸自配備に対する議論をもっと深める必要がある。…防衛省が千代田カントリークラブ用地測量・ボーリング調査を直ちに中止することを求めるとともに、その強行に強く抗議する」。

「オール沖縄」つぶしが激化

 以上の声明にあるように、宮古島市では、1月22日投開票の市長選挙が行われた。
 現市長・下地敏彦の、あまりの不祥事続き、不透明な金の流れという疑惑により、住民訴訟や議会の百条委員会にかけられているため、さすがに配備容認派の与党も市長刷新を掲げ、分裂選挙となった。一方、反対陣営も、私たちが推し、翁長知事も支持した「オール沖縄の前県議」の他に、反戦・反基地のどの場面にもこれまで登場したことのない「自称オール沖縄」の候補が出馬し、それに社民党が摩訶不思議にも推薦を出し、分裂選挙になるという、不可解な状況が生まれた。結果は、376票(現市長9588票、私たちの推す候補9212)の僅差で敗北した。
 宮古島市長選最中のタイミングでの、安慶田沖縄県副知事の「口利き疑惑」スクープ報道は、明らかに宮古島市長選挙での反基地候補への妨害であり、オール沖縄つぶしの攻勢が始まっているといえる。
 国、自民党本部、日本維新の会、防衛省、日本会議、幸福実現党、ネット右翼などの介入が、今回の宮古島市長選挙で組織的に行われ、大量の人と金が投入された。まさに、先行してかけられた沖縄つぶしのリハーサルとも言えるものであった。
 そのような大攻勢の中でも、現職市長以外の3候補の「基地建設反対&もっと慎重に」の票を合わせれば、今回の宮古島市民の投票者数の3分の2である19000票の民意は、現市長の「陸自配備容認」の9500票をはるかに上回っている。結果、市議会の構成が、与党の分裂で与野党逆転し、野党多数となったことは画期的なことであり、今後の展開に一抹の希望が生まれている。

国家暴力は差別的指導者の反映

 民意に反して、沖縄防衛局は宮古島の候補地への土地調査を早くも開始しているが、高江のヘリパッド建設強行、辺野古での海へのブロック投入などと同時進行であり、安倍政権の戦争遂行国家への意思の表れである。
 アメリカでは、トランプ大統領を誕生させた市民社会の差別排外主義が強まり、ヨーロッパでも右派勢力の台頭が市民社会に広がっており、日本でもまさにそのとおりである。差別的な指導者の存在が、国家権力の暴力機関の手足に真っ先に顕著に表れて、差別と暴力を生み出しており、警察、海保の暴言・暴力・人権侵害などが、国策に盾突く沖縄の人々にかけられている。
 山城博治さんらへの根拠なき不当な長期勾留を認めている司法も、すでに死に体である。
 私たちは、3月19日に『陸自新基地建設で、宮古島はどうなる?』という大規模な講演会を準備しており、さらに反対の民意を大きくしていく決意である。

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