トランプ人事まるわかり

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ブラック企業経営者、KKKシンパ、宗教原理主義者…

アフリカのある部族は指導層の中に必ず酋長と軍(狩猟団)を揶揄する役目の役職を置いて、社会の健全を図っているという話を読んだことがある。安倍にはそんな知恵はなく、「仲良し閣僚」一丸となって、暴力団路線を暴走している。トランプ次期米大統領も同じような人事を行っている。現在わかっていることを記す。(編集部・脇浜)

労働長官アンドリュー・パズダー
 ブラック企業として有名なカールス・ジュニアとハーディーズを運営する外食産業CKEホールディングスのCEO。労働省の調査で、従業員の60%が最低賃金以下で、法基準を超える超過勤務が発覚した。彼は労働者よりロボットを好む。
 「(ロボットは)休暇も取らないし、遅刻もしない。年齢差別、性差別、人種差別なんてややこしいことも言わない」と『ビジネス・インサイダー』で語った人物。労働長官に最もふさわしくない人物。

環境保護局(EPA)長官 スコット・プルイット
 オクラホマ州司法長官で、地球温暖化を認めない人物。2014年EPAの規制に反対して石油会社の味方をしたことをトランプが評価し、「EPAは反エネルギー政策に税金を注ぎ込み、数百万人の雇用を奪い、わが国の農業、工業、鉱業などを潰してきた」が、プルイットがその流れを逆転させると期待して、指名。
 これも環境保護局長官には最もふさわしくない人物で、巷では「環境破壊局」と改名すべきだと言われている。

保健福祉長官トム・プライス
 共和党極右で下院予算委員会委員長。彼は女性の避妊権に猛烈に反対、保険会社に避妊治療費の支払い拒否権を与え、オバマの医療保険制度改革(ACA)から避妊治療項目を削除することを求めた。
 彼が保健福祉長官になると「何百万人の女性が妊娠検査や子宮がん検査や性感染症検査など、家族計画のための予防医療を受けられなくなる」と、家族計画推進団体や女性団体が反対している。彼も役職が要求する資質と正反対の資質を持つ人物である。

教育長官ベッツイ・デヴォス
 現公教育に反感をもつ大富豪の女性実業家で、学校選択の自由とバウチャー・スクール推進など、教育民営化を推進するアメリカン・フェデレーション・フォ・チルドレンの代表。
 彼女の一族の資産総額は51億ドル(5600億円)。同性愛者結婚反対運動に50万ドル寄付するなど、かなり偏った思想の持主で、やはり教育長官にふさわしくない人物である。

国務長官レックス・ティラーソン
 エクソン・モービル会長・CEOで、ロシアと太いパイプを持つ。気候変動と生態系危機の否定論者。
 トランプが彼を指名したことは、米外交が相変わらず石油戦略を軸とすることを物語っている。「彼の指名は米国が昔の悪徳資本企業トラスト時代に逆戻ることを意味する」と、国際環境法センターのキャロル・マフェットが『ロイター』に語った。

司法長官ジェフ・セッションズ
 共和党最右翼で移民排斥運動の最先鋒。1986年に連邦判事に指名されたが、上院が人種差別者の疑惑あるとして承認しなかった。
 KKKを「メンバーがマリファナを吸ったことが発覚されない限りOKだ」と黒人差別団をかばった人物である。
 「セッションズは移民、ムスリム、アフリカ系米国人、ラティーノ、女性、セクシャル・マイノリティに偏見を持つ人物だ」として、彼の司法長官就任に反対する運動が起きている。
 運動の活動家は「彼が司法長官になると、麻薬との戦争が民衆や民衆運動のスパイや弾圧の口実に使われ、特に移民、ムスリム、左翼活動家や市民運動活動家が取り調べられ、収監されることが多くなる」と言っている。

CIA長官マイク・ポンペオ
 キリスト教原理主義者(福音派)の右派下院議員、ティーパーティ運動主導者。中絶と同性愛を病的に憎悪。リビアやシリアへの攻撃を声高に主張し、中東やグアンタナモ基地での拷問を愛国的行動と称賛、CIAの「水攻め拷問」の復活を主張している。
 内部情報を漏らした元CIA職員エドワード・スノーデンを死刑にせよと叫んでいる。「スパイ活動に関する法的規制を撤廃するべきだ」と『ウォールストリート・ジャーナル』に書いた。

住宅都市開発長官ベン・カーソン医学博士
 2015年に共和党初の黒人候補に立ったが、翌年撤退し、トランプ支持に回った。エジプトのピラミッドは聖書に出てくるヨセフがファラオのために穀物貯蔵所として建てたもの、と狂信するキリスト教原理主義者。
 彼は、自分は住宅都市開発長官には向かないと言っているが、その理由は「住宅都市開発というのは共産主義国の事業だ」からである。トランプは住宅都市開発を解体し、営利産業に任せるために、カーソンを指名したと思われる。

イラク戦争虐殺指揮者が国防長官に就任

内務長官キャッシー・マクモリス・ロジャーズ
 彼女は、国立公園や先住アメリカ人の居留地を石油・ガス・鉱山の株を持つ会社の金儲け道具にしようとする共和党議員で、現在スタンディング・ロック・スー族が、黒人やパレスチナ人の支援を得て反対しているダコタ・アクセス・パイプライン計画に対する闘いにとって、非常に有害な人事である。彼女は気象科学の発見と警告を拒否している。

国家安全保障担当大統領補佐官 マイケル・フリン
 元国防情報局長官で、大のイスラム嫌悪者。イスラム教を「癌だ」と表現、米国人のムスリム偏見を「当然のこと」と肯定。ユダヤ人差別のツィートも行ったが、これは謝罪した。(トランプの娘がイスラエル・ロビー大物と結婚、名前もユダヤ名「イヴァンカ」に変え、トランプも、「私はイスラエルを愛している。イスラエルのためなら1000倍戦う」と言っている。基本的には人種差別者だが、どうやら「白人と白いシオニスト・ユダヤ人」以外を差別するらしい)。

戦略担当主席顧問スティーヴ・バノン
 非エスタブリッシュメントの白人至上主義の極右オンライン・ニュースサイト『ブライトハート』の会長。このサイトはいわゆる「オルタ―右翼」(正式なイデオロギーを持たないが、従来の主流保守を否定する極右的人間のあいまいな集合体で、トランプの票田となった)に人気がある。
 彼の主席顧問指名は、白人至上主義者リチャード・スペンサー、米国ナチ党書記長でKKK団長をしたことがあるデービッド・デュークの賛同を得た。女性の避妊権利や銃規制にも反対し、「黒人はみんな犯罪者で、移民は強姦魔で、フェミニストは男をすべて去勢させたがっている」と平然と言う人物である。

国防長官ジェームズ・マティス
 「狂犬」の異名を持つ退役海兵隊大将。イラク侵攻で、戦争民営会社ブラック・ウォーターの傭兵4人が殺害されたとき、その報復に女・子ども・老人を含むイラク人736人を虐殺し、「撃ち殺すのは楽しい」と言った人物。
 ファルージャ攻撃では5000人のイラク民間人を殺害し、死体を「共同墓地」と称する穴に放り込むのを指揮した。アフガン戦争では、「ベールを被らない女性を殴りつけるごろつきがアフガン人だ。こんな連中を撃ち殺すのは愉快だ」と言った、まさに「ランボー」的人物。同地帯は「武器フリー」と呼ばれた。動くものは何でも撃ってよろしいという意味で、その指令を出したのがマティス大将であった。

国土安全保障長官ジョン・ケリー
 元海兵隊大将で、グアンタナモ基地のテロ容疑者収容施設の責任者。この施設の継続と拷問を主張している。移民排斥と麻薬戦争に異常な情熱を燃やす狂信的人物。息子をタリバン掃討作戦で失くしており、厳しいテロ対策が予測される。マイケル・フリン、ジェームズ・マティスと並んで、背筋を寒くさせる人事。

財務長官スティーヴン・マヌーチン
 元ゴールドマン・サックス共同経営者。大学時代構内でポルシェを乗り回していた富豪の息子。不動産の抵当流れなど弱者の弱みにつけ込んで大儲けした人物で、財務長官になれば金融の規制緩和を大きく進めるだろう。

商務長官ウィルバー・ロス
 レバリッジド・バイアウトという手法で、多くの会社を倒産させたり買収したりして、純資産29億ドルを稼いだ人物。「破産の帝王」という異名を持つ。日本政府は知日派人物として期待している。

運輸長官イレーン・ラン・チャオ
 台湾系米国人女性共和党員で、夫は「慢性的議事妨害者」と言われる共和党上院議員ミッチ・マコーネル。
 この指名は想定外。彼女はインフラ整備政策を担当することになるが、トランプはインフラ整備で雇用を創出すると言って労働者階級の票を集めたが、この軽い気まぐれ的人事から見えることは、トランプの真剣さの欠如であろう。

中小企業長官リンダ・マクマホン
 彼女が従業員13人のプロレス興行団体(WWE)を800人を超える従業員を擁する上場企業に育て上げたことをトランプが評価(トランプもWWEの役員)、雇用創出に弾みをつけるだろうと言って指名。一般的な人事と言えるものはこれぐらい。
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 なおトランプ政権閣僚候補23人の資産総額は、350億ドル(約4兆円)という天文学的数字である。大統領が入れ替わると4500人の新しい人間がホワイトハウスに入ると言われる。その人間集団が、米国ばかりか世界の運命を左右することになるのである。
 一部の人事について知り得ることを記したが、大変なことになりそうなのは、ブッシュ時代のウォルフォウィッツ、ラムズフェルド、チェイニー、ライスが経済を破壊し、数百万人の人命を奪ったことを思い出せば、よくわかるだろう。

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