時評・短評 右翼革新派としての安倍政権の本質とその歴史的水脈

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福島の最深部に向かう 「虫の視点」で生活を再構築

 

シネマブロス代表 宗形修一

 安倍総理の祖父は、ご存知のように関東軍傀儡の満州政府の革新官僚だった岸信介氏である。岸は、東条内閣の商工省大臣として、戦後戦犯に問われ巣鴨に収監されたが、釈放され、自民党総裁・総理大臣として1960年の日米安保条約改定を国民総反対の中強行採決し、その後辞任した。父親は外務大臣を務めた安倍晋太郎氏で、自らの派閥を率いて総理大臣を射程にいれた距離まで近づいていたが、病にたおれてその志は果たせなかった。
 安倍総理は、第一次政権の時は「戦後レジームからの脱却」とのスローガンでまず国民教育の土台である基本法を変え、学校教育法も変え、日本の国の土台の右翼的再編の基本戦略を整えたが、年金問題で失敗し辞任に追い込まれた。
 2012年、民主党野田政権が議員定数削減に合意し12月に衆議院解散総選挙を行ったが、民主党は57議席の歴史的敗北、自民党は294議席の大勝だった。その大勝の要因は、新自由主義一直線の自らの名前を冠した「アベノミクス」だった。しかし、この経済政策は金融バブルの成れの果てともいうべきで、国債と紙幣を増刷して無理矢理市場に流し込み、実態のない水ぶくれ株高を演出して、円安を誘導しただけであった。黒田日銀総裁は、政府自民党の走狗として走り回っただけで、社会的弱者を守り国民の生活の安定と安心を第一に考える施策は何一つしなかった。
 安倍総理は、この年の衆議院選挙に勝利し、一瀉千里に安保法制の集団的自衛権の行使に邁進する。これも無理を押しての解釈改憲で通してしまったが、2006年からの安倍政権の流れ(2016年12月の年金改悪法とカジノ解禁のIR法も含めて)から、この政権の戦略的意図としてきちんと理解しなければならない。
 それは、日本国家構造の右翼的再編であり、日本の国家意思を十全たる軍事力として行使できる自衛隊の世界への登場であり、世界経済の大国としてあり続けたいとする願望であろう。
 つまり、その右翼的再編とは、戦後憲法を脱構築することであり、その平和は米ソ核大国の軍事バランスで辛うじて守られた平和共存の60年代の平和論でしかない。北朝鮮の核問題が軍事力の行使で片付く問題でないことは、自明の理である。
 1936年、日本陸軍の青年将校たちが、東北の飢饉による国民の窮乏に対する政府の無策に痺れを切らし、天皇親政国家をつくろうとしてクーデターを計画し決起したが失敗し、17名の青年将校と北一輝ら民間人が銃殺に処された。私は、彼らの行動が日本の軍事国家態勢を一層速めたとの歴史観には賛成したくないが、現在の安倍政権には、そのような2・26の青年将校のような拙速な状況判断と独断を感じている。
 多分に安倍政権の中枢には、戦後憲法を脱構築して日本をつくりかえようとする人たちが集結しているのでしょうが、少なくとも2・26の青年将校たちには、疲弊して、役場が人身売買を斡旋するしかない東北農民たちの悲鳴が、その地を故郷とする兵士たちの口から聞かされていたでしょう。処刑された青年将校たちの思いの原点には、窮乏する農民を救わねばならないとの思いがあったのです。
 現在の安倍政権の日本構造改革に、その視点と熱いまなざしは感じられない。そして、安倍国家再編に抗する私たちの視座は、『生活』です。3・11東日本大震災と原発事故で失われた一番大切なものは、『命』でしたが、生き残った私たちが再認識した、私たちを守ってくれたものは、地域共同体です。東電は、この壊れた共同体の価値には一銭の賠償もしていません。私たちが数百年にわたってつくってきたこの地域共同体こそが、私たちの生活を守り、人生を豊かにする源泉だったのです。
 つまり、こういうことが言えるでしょう。私たちは虫の視点で生活を再点検し再構築する。上から目線の再構築は成功しない、私たちはこの福島の最深部に向かおう。

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