【連載】被ばくから命を守る人々(1)

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福島と関東をまたにかける「脱被ばく実現ネット」

 福島原発事故から5年8カ月が経過した。チェルノブイリ事故では、5年目からがんなどの命を奪う健康被害が激増したが、日本でも福島を筆頭に東日本全体で健康被害が急増している(表を参照)。そこで今、被ばくの危険性を告発する運動、避難・移住に取り組む運動、健康被害の当事者が増え始めている。被害の急増や政府の隠蔽は本紙でもたびたびお伝えしたが、本連載では被ばくから命を守る取り組みを東日本や全国の動きを具体的にお伝えしていきたい。
 初回は関東で集会やデモを続ける「脱被ばく実現ネット」の連続行動を報告する。(編集部・園 良太)

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 連載最初にあたり、まずカナダ在住の工学博士・落合栄一郎氏が作成した下の表を見ていただきたい。日本政府は事故による健康被害を一切認めておらず、福島では住民が被ばく問題や避難願望を口にできない状況にある。だが通常100万人に1~2名しか出ない小児甲状腺がんが福島県では174名も確認されている。そして福島県立医科大学付属病院の記録によると、福島県の白内障、脳出血、各種がんの患者が2011年に前年の倍以上に増え、12年もさらに増えている。また日本中の病院データを見ても、全世代の甲状腺がんも2010年と13年では福島県で約2・3倍、関東各県も軒並み1・5倍~2倍に増え、心筋梗塞も1・5倍に増えている。なお東京在住の筆者自身も、昨年30代で心臓の不整脈になり、同世代の友人は末期の大腸がんを発病し、今秋に40代の知人を胆管がんで亡くしている。
 つまり関東・東北在住者にとって、被ばくの健康被害は日常化している。ところが、政府は来春に自主避難者の住宅支援を打ち切る方針だ。こうした中で、事故直後から福島の子どもの「集団疎開」を主張し、今は関東の被ばく問題や住宅支援継続にまで活動範囲を広げているのが「脱被ばく実現ネット」だ。2011年、柳原敏夫弁護士らが自ら福島県に原告家族を探しに行き、郡山市を相手に「福島集団疎開裁判」を起こした。「子どもたちは戦時中のように「集団疎開」をさせるべきであり、行政にその責任がある」というものだ。
 同時に東京でも支援者が集まり、2012年夏から毎週金曜に文科省前での抗議行動、新宿でのデモや街頭宣伝を開始した。裁判のたびにバスツアーを組み、東京から福島へ応援にも駆けつけた。だが国と県の被ばく隠蔽は強固で、福島地裁の一審、仙台高裁の二審ともに敗訴した。3審の仙台高裁は、運動の成果で被ばく自体の危険性は一定認めたが、疎開の権利は認めていない。

世界も注目

 そこで福島では、今度は国や福島県などを相手に2次裁判「子ども脱被ばく裁判」が提起された。また東京の支援者たちも「脱被ばく実現ネット」と名を改め、事故5年目を受けて活動範囲を広げた。すると、福島原発事故は世界中の関心事項であるため、その活動は真実を知りたい世界の人々へと瞬く間に広がった。
 2016年3月に福島と東京で開催された「核と被ばくをなくす世界社会フォーラム」では、「福島での犯罪と命の救済」と題する集会を開き、世界から来日した人々に被ばくの実態を伝えた。そのつながりでさらに郡山市からの自主避難者自身が夏のカナダの世界社会フォーラムに参加した(前々号で詳報)。カナダで共同行動した人々は、続いてエクアドルで開催されていた世界住宅フォーラムに合わせて、10月13日にオタワの日本大使館前で来春の自主避難者の住宅支援打ち切りに抗議した。また10月22日にはフランスのパリの日本大使館前でも同趣旨の抗議行動が行われ、緑の党の大統領候補など100名近くの多種多様な人々が参加した。

生存権としての移住の権利

 一方、東京でも若い世代に問題を伝えるべく、上智大学で6月2日と10月25日に「関東の放射能被ばく」集会を開催し、100名以上の参加者を得た。10月22日の新宿デモも200名近くの人々が参加した。福島・関東の運動圏内でもタブー視されてきた被ばく問題は、彼らの活動によって着実に広がりを見せている。東日本全体の汚染は、日本という国家と住民の住環境そのものを根底から再編しなければいけない問題となるだろう。
 メンバーの岡田俊子さんは、思いを語る。「福島県民のみならず、東日本全体の住民を切り捨てる棄民政策がますます酷くなっていく現実に我慢がなりません。原発事故による避難者への住宅支援打ち切りなど、人命よりも経済優先の国や福島県に抗議し、少しでも多くの人たちに現状を拡散しなければと思い、仲間たちと活動しています。今夏カナダであった開催された世界社会フォーラムに参加し福島の今の状況を訴える事ができ、心温かいたくさんの海外の方々とつながることができたことは本当に感激でした。今後も国内外の皆さんと連携し、被ばくからの避難や移住は生存権だと国に認めさせ、補償させ、避難や移住が実現できるように皆さんと共に行動していきたいと思っています。ぜひ活動にご参加、ご協力をお願いします」。

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