電力自由化だから脱原発の声をあげよう

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使い捨て時代を考える会 槌田 劭

職業としての科学者を離れて「小むずかしい科学技術論争に幻惑されず、いかに生きるか?」と語る槌田 劭さん(81歳)。
 槌田さんは1973年の伊方原発訴訟に原告住民側証人として参加し、理不尽な敗訴を機に京都大学工学部助教授を辞職。現代社会の科学技術の在り方に疑問を感じ、社会や自然の在り方を俯瞰的に捉えるために「使い捨て時代を考える会」を設立した。現在は畑仕事を楽しみながら「電力自由化 だから脱原発の声を上げよう!@京都」などの活動に取り組んでいる。
 槌田さんに今年4月から始まった電力自由化について、(1)新電力会社に対する評価、(2)電力自由化の課題、(3)脱原発運動に求められていること、を聞いた。

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総括原価方式で無能化した経営陣

──消費者電力も、4月から自由化されましたが…
槌田…従来電力は、関西電力に独占され、消費者には選ぶ自由はなかったが、原発が嫌なら新電力会社に契約変更できるようになったのです。原発推進に固執する関電の電力を買い続けることには、共犯関係が生じます。関電との契約を解除して、脱原発の声を関電に伝えたいと思っています。

──新電力への契約変更は、手続きが面倒くさくありませんか? 変更しても電気は安定して届きますか?
槌田…契約変更は、新電力企業に電話一本で後は先方がしてくれます。関電に連絡する必要もありません。関電は大々的にガス事業参入を打ち出しました。これは「大阪ガスが電力に参入するなら、ガスに参入する」という一種の脅しなのでしょうか。
 「市場の自由」で強者が牙をむくやり方です。いずれにせよ、関電には危機感があり、神経をとがらせているのでしょう。関電と競争可能な企業は大阪ガスのみなのでしょうか。
 
──電力自由化は、新自由主義的な流れとも一致しますが…
槌田…自由化には本来、対等な競争条件が必要です。しかし電力業界は、地域市場を独占し、国家との癒着がありました。そうした歴史と背景があるなかで、電力の自由化は可能なのでしょうか?
 市場自由主義では、需要と供給で値段が決まり、企業間競争によって適正価格に落ち着く、とされています。しかし、関電という独占巨大資本が存在しているなかでの電力自由化は、逆に電気代の高騰を招く危険性もあります。自由競争は「神の見えざる手」に任せる古典経済学理論ですが、今回の電力自由化には、競争が可能な力関係が保証されていません。
 そのうえ、電気は、普通の商品とは異なり、貯蔵しにくいだけでなく生産と需要の同時同量の制約もあります。送配電の設備も技術も、関電の独占状態です。関電が経営を維持するために、送電線の利用を名目に、価格を新電力に強制転嫁する可能性には要注意です。今後の課題です。
 さらにいえば、市場開放という考え方にも問題があります。歴史的に振り返ると、日本は近代化にあたって黒船襲来の脅迫を経験しています。世界でも強大な軍事力と経済力をもって強制してきたものです。多くの人々が植民地支配を受けました。従わなければ暴力的に侵略されるのです。
 お金の勘定を中心に動いている金権暴力的世界において、「市場の自由」が意味する犯罪的現実を忘れてはいけません。これは今後の運動にも関係することです。

──自由化には考えるべき問題があるにしても、関電にとっても大変なのでしょう?
槌田…脱原発派にとっては、価格への関心は薄いのかもしれませが、関電の方が、よほど真剣です。電力自由化の影響で、電力需要の4~5%が大阪ガスを中心とした新電力会社に既に移行しており、関電は経営面でもきびしい局面にあります。不景気と節電によって個人消費と企業消費の両方が落ちこみ、電力需要そのものが縮小しています。自由化による顧客離れ、関電にとってはダブルパンチです。原発再稼働を唯一の出口として、本気で推進しています。
 関電の赤字体質は慢性化しています。福島事故後は、原発依存経営のつけで苦しむことになったのです。15年度は黒字に回復していますが、石油価格の低迷のおかげで火力発電の出費が5000億円ほど減ったからです。赤字体質は深刻なままです。
 関電は、全く電力を生産していない原発に年間コスト3000億円を使ってでも、諦めていません。加えて関電は、日本原電から電力を全く購入していないにもかかわらず、購入電気代として毎年約200億円余を支払い続けています。原発依存故の無責任な放漫経営の執念です。
 さらに、経理上のインチキもあります。現役キャリア官僚の若杉冽さんが書いた『原発ホワイトアウト』(講談社刊)に描かれていますが、下請や孫請から20%程度割高に仕入れても儲かる魔法のような仕組みで、問題なく経理処理できるからです。総括原価方式のおかげで、利益が経費の3%自動的に確保できるようになっているからです。出費が多ければ多いほど収益となる。無駄な経費を計上しても利益が増えるというのどかな経営では経営に苦労はありません。無能になるだけでなく、悪知恵が発達するでしょう。この制度を悪用して、下請や孫請から5%をペイバックさせ、電力事業連合会への寄付金などに回収しています。また、そうした金を使って、政治家もマスコミも御用学者も組織してきたのです。原発マフィアが作られました。
 無能な経営者にとっては、原発再稼働以外の対策を思いつかないのでしょう。原発の再稼働は、装置も燃料も確保済みですから、火力発電に比べれば「タダみたいに安い」のです。金だけ今だけ自分だけ。40年超の老朽化した危険な原発の再稼働にも執着するのです。「一度始めた戦争はやめるのが至難」と言います。原発もそうなのだろうか。

経営悪化と労働者へのしわ寄せ

──どのような運動が求められているのでしょう?
槌田…私は、脱原発を訴えて電力自由化の運動に関わっていますが、この機会に原発マフィアの資金を断たねばなりません。「総括原価方式」という金の絡んだ汚い電力システムの結果、電気代は不当に割高となっていたのです。自由化によって関電離れが起こるのは自業自得なのです。関電を経営的に締め上げることが求められています。
 関電の経営は既に破綻状態なのです。福島事故後、原発が停止して、大赤字が続いています。去年は黒字でしたが、これは火力発電の燃料コスト低下によるものです。関電は年間1500億円を越える構造的赤字が続いており、ますます深刻になっています。
 経営がきびしくなればなるほど、関電は原発に固守するでしょう。この無理は労働者にもしわ寄せされます。新聞ニュースで話題になりましたが、関電の課長級職員の過労自殺です。40年超の老朽原発の再稼働申請業務中のことです。
 公害論の常識として、「公害企業には、公害の社会化の前に職場の労働環境問題が生じている」というのがあります。原発再稼働が重大事故を呼ぶ予兆なのだろうか、心配です。
 原発事故をくりかえさないためにも、関電の原発依存体質にお灸を与える必要があります。原発の電気は買わない。すでに関電との契約をやめた、あるいは、再稼働すればやめる。そのいずれかの考えを関電に伝えることです。

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