ソウル100万人デモ報告 政権打倒から民衆革命へ

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126万人が朴大統領の退陣要求

朴槿恵(パク・クネ)大統領への退陣要求が高揚する韓国へ行った。11月12日には「民主化以降最大」といわれる126万人ものデモが行われ、ソウルの中心部から大統領府までが全て群集で埋まった。朴槿恵のスキャンダルは日本でも連日報道されているが、民衆運動の歴史的な高まりは、わずかしか触れられない。「革命前夜」ともいわれる126万人デモと人々の今をお伝えする。 (編集部・園)
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財閥支配への怒り労組はストで抗議

 大統領のスキャンダルは10月後半に火がつき、10月29日は3万人、11月5日は20万人が退陣を要求してソウル中心部の広場を埋め尽くした。今も連日、ソウル中心部でキャンドル集会が行われている。
 スキャンダルとは、朴槿恵が知人の民間人・崔順実(チェ・スンシル)氏に国家機密情報や大統領の声明文などを流出させていた問題だ。国策に大統領の知人が関与し、巨大な利益を得ていたことから、韓国政府に自律性がなく、朴槿恵が政治家資質のない操り人形であることが露呈した。また、崔氏が娘を梨花女子大に不正入学・単位特恵をさせた問題も浮上した。これに広く市民や朴政権を支持する保守層までが政権を見放し、支持率は韓国大統領歴代最低の5%に落ちた。
 11月は、左派労働組合「民主労総」がソウルで労働者大会を開いており、12日は、同労組の大会が朴槿恵退陣運動の高揚と重なった。そこに史上最大級の人々が結集した背景には、朴政権と韓国資本の癒着と矛盾への怒りが結合したことがある。民主労総の人々に話を聞いた。
 (1)昨年の労働者大会では、機動隊が催涙放水銃で農民=ペク・ナムギ氏を直撃して重傷を負わせ、今年になり亡くなった。政府は死因を「病死」で片付け、遺体の引渡しを拒否した。また民主労総の委員長は、4月に「デモが交通妨害」という理由で懲役5年の不当判決を受けて獄中へ入れられた。これらの弾圧に人々が怒っている。(2)昨年4月のセウォル号事件の真相究明を政府が全く進めず、遺族は大統領邸宅「青瓦台」前にテントを張って闘い続けている。(3)朝鮮を敵視する「THAADミサイル」の韓国配備、戦後初となる日韓の軍事情報協定の締結など、戦争政策への怒り。(4)韓国の国定教科書で朴槿恵の父親の独裁者・朴正煕時代を正当化するように書き換える問題、昨年末の日本軍慰安婦の日韓「合意」問題に大学生や中高生までが怒った。(5)脱原発運動も進み、ヨンドクの新旧原発を自治体が停止。来年1月の大統領選挙では、脱原発候補の擁立が始まる。(6)そして、極限までの経済格差と人々の生活水準が悪化し、今回のスキャンダルでも政権と財界の癒着・腐敗が問題化。労働運動は今年9月27日に公共運輸労組15労組がストライキを行い、鉄道労組のストも継続している。
 韓国は、日本の植民地支配と戦後の軍事独裁政権の中でも抵抗運動が続いてきた。どの政権も、末期は退陣運動が起きている。それに加え、現代社会全体への怒りが前述のように拡大している。こうした中で11月12日を迎えた。
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地鳴りのようなコール中高生の「時局宣言」

 ソウルは市役所の手前から大統領の邸宅前までが「光化門広場」と呼ばれ、巨大道路が1キロにわたり一直線に伸びている。集会は14時から市役所広場で行われ、すでに車道まで全て群集で埋まっていた。前述のあらゆる闘いの人々が発言を行い、16時からの本集会では拘禁中の民主労総委員長の映像が流された。「ハオ・ハオ・ハオ・ハオシチョラ! パークネルハオシチョラー!」(下野・下野・下野・朴槿恵は下野しろ!)と軽快なコールを繰り返す。百万人の人数と一体感は圧倒的で、筆者はこれほどの人々が一箇所に集まった場は初めての体験だ。その規模で歌い、踊り、政府の政策や弾圧に怒りのコールをするため、空間全体が地鳴りを起こしていた。
 この背景には人々のどのような思いがあるか。壇上で70歳のおばあさんが、「テレビを見ていて朴政権に腹が立ってきた。80年代の独裁政権時は子どもに『危ないからデモに行くな』と言っていたが、今度は私がデモに来た。こんな社会を作ってしまい、若者たちに申し訳ない」と話していた。
 筆者が乗ったタクシー運転手も「自分たちも労働環境が本当に悪化しており、朴は退陣が当然だ。デモで交通は麻痺するけど、それはしょうがないことだ」と話した。若者たちは大学生に続き中高生もデモを行い、「時局宣言」を出した。「青少年は過去においても、現在においても運動と社会変革の主体として登場している」と訴えた。
 また筆者はTHAADミサイル配備候補地である韓国中部の星州(チョンジュ)も訪問した。毎晩開かれる反対集会で、活動家ではない地元住民が「朴政権を倒すだけでなく、世の中を変える革命が必要だ」と話していた。また朴親子の地元である亀尾(クミ)では、朴正煕の誕生祭が開かれていたが、参加者は例年より大幅に減っていたという。そして韓国南部からは農民が朴打倒を掲げてトラクターでソウルへ向かい始めた。全国各地で人々の意識が覚醒したことが大集会を支えていることが、よくわかる。
 集会を終え、17時にデモが出発するが、すでに道路全体を人が埋めているため全く進まない。大統領邸宅の最前線に向かう人々はさまざまな路地を通った。それらソウル中心部の全ての道路は参加者で埋まり、車も警察も全く入れない完全解放区と化していた。光化門広場は1キロにわたり巨大な街頭ビジョンと音響設備が置かれ、活動家、市民、有名ミュージシャンが発言やライブを繰り広げた。そして先頭から「ワーーッ!!」と大声の歓声を上げてウェーブのように街全体へ広がるアクションは全身に鳥肌が立った。人々が手にするキャンドルは、夜間でも街全体を鮮やかに明るくし、上空撮影で126万人が街を埋めたことがよくわかった。
 夜遅くまで集会が続き、地下鉄のホームも、スタッフが交通誘導する「人民駅」と化していた。そして、朝まで闘い抜く覚悟の人々は、夜が深まるにつれ学生を先頭に大統領邸宅への突入を試みた。機動隊が築いた特製の壁をよじ登り、機動隊を押し返しては盾やメットを奪い、人々の渦に放り込んだ。激闘が続いたが、朝4時に機動隊が解散命令を出し、従わなかった学生数十人が検挙された。
 翌日ソウル市は、当日の地下鉄駅利用者数から「参加者は約126万人」と発表した。警察発表は26万人で日本メディアもその数字で伝え続けたが、ソウル市が正確だ。まさに史上空前の民衆行動だった。当日の全映像を「オーマイニュース」のネット生放送https://www.youtube.com/watch?v=11hPOB9oOdg&feature=youtu.be で視聴できる。同番組は今後も視聴できる。
 朴大統領は、政権にしがみついているため、抗議行動は拡大・深化することは確実だ。毎土曜日に全国同時集会が行われ、11月26日、12月3日は再びソウルで、今回を上回る規模の抗議行動が行われる。民主労総は、11月30日までに朴槿恵が退陣しなかった場合、ゼネストに突入すると発表した。
 隣国の韓国が戦後最大級の闘争に入った。人々は検察にしか起訴権限がない韓国の権力体制に限界を感じており、それは日本の植民地支配の遺産でもある。朴政権の悪政の多くが安倍政権との協力で行われた。今の韓国は安倍政権を止められない日本の人々と運動にも多くの事を伝え、問いかけている。現地で闘う人々のうち、日本の「サンケン電気」の韓国子会社に不当解雇された労働者16名が来日し、埼玉の日本本社前で毎朝解雇撤回闘争をしている。今後も継続的に韓国の闘いと日本の連携を伝えていきたい。

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