いまパレスチナでは

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避難所、自由な行動、奇襲、イスラエル兵を捕虜にするチャンスを提供 ガザのトンネルは重要な抵抗ツール

 

ハムザ・アブ(ガザのジャーナリスト)6月27日「電子インティファーダ」

翻訳・脇浜義明

 ガザ市東北部ジャバリアは蒸し暑い夜だった。激しい揺れに襲われ、アブ・ゼインと妻は地震だと思って飛び起きて外へ飛び出した。外は何事もなく静かだった。やがてハマスの武装組織カッサム旅団の戦士が2人やってきて、どこか壊れたのなら修理すると言った。翌日作業員が来て修理、補償金も払ってくれた。
 ガザのパレスチナ抵抗組織は、地下トンネルを長い間軍事作戦として利用してきた。彼らは、それをベトナムの対米戦争から学んだ。またレバノンのヒズボラも、イスラエルのレバノン占領への抵抗や、2006年のイスラエルのレバノン侵攻への抵抗闘争でも、トンネルを使った。
 抵抗組織にとってトンネルは、物資密輸、イスラエルへの侵入、防空壕など多様な目的に役立っている。空襲や空からの監視からの防御や、2004年にはラファのイスラエル監視所攻撃、2006年にはイスラエル兵ギラド・シャリト誘拐作戦などにも役立った。ゼインの体験からは、ガザの下には幾層ものトンネル・ネットワークがあることがわかる。
 2015年、アルジャジーラのワーエル・ドゥハドゥーハ記者がガザ西部のトンネルを取材したドキュメンタリーが発表されたが、トンネルでは戦士が忙しく活動していた。このドキュメントでは、狭くて、窮屈で、曲りくねったトンネルが無数に作られ、ところどころ広い空間があって、貯蔵所、寝室、居間、浴室、台所になっていた。
 辛い体験からデザインされたトンネルだが、トンネル掘りは危険な作業である。「平らな天井は崩れ易いので曲線状にした」と、カッサム戦士がアルジャジーラ記者に説明するシーンがある。戦略的に重要で、攻勢のときばかりでなく、「イスラエルの執拗な猛攻撃からも戦闘員を守る」と、PAを退職したユセフ・シャルカウィ少将が記者に説明する場面もある。トンネルは戦士に避難所、自由な行動、奇襲、そして時にはイスラエル兵を捕虜にするチャンスを提供する、と彼は語った。
 またドキュメントは、トンネル技術者が以前には手に入らなかった精巧な装置を使っていることも示している。トンネルは、コミュニケーション・ネットワークの役割も担い、戦士たちが傍受される心配なしに情報交換できる。
 ドゥハドゥーハ記者がカッサム旅団のトンネル掘り作業隊と遭遇、その作業について質問した。約4000人の人が作業に従事、月給は200~400㌦。24時間シフトで、労働はきつく危険である。「呼吸困難になる」と、一人の作業員がしわがれ声で言った。「しかし、なんとか慣れるものだ」。「地盤崩壊の恐怖を信仰の力で克服するのだ」と別の一人が言った。カッサム隊員服で公衆の前に現れるのを規制する防衛規則があるので、彼らはすぐに姿を消した。作業員たちは勇敢だけれども、事故はかなり多いようだ。1月には悪天候による地盤崩壊で7人が死んだ。
 このような危険にもかかわらず、カッサム旅団はトンネルの戦略的重要性を熱心に説く。今年の年初に、旅団はトンネルを使った戦果をウエブサイトで発表した。13回の作戦で70人のイスラエル兵を殺害、129人を負傷させ、2人を捕虜にした。
 イスラエル軍が、トンネルを重要視しているのは確かである。セメントや木材などの物資がガザに搬入するのを止めるために、トンネル破壊作戦に躍起である。繰り返されるイスラエルのガザ攻撃で破壊された市民生活インフラ─上下水道や家屋─の再建を妨害するために。イスラエル軍は、トンネル破壊技術に何百万ドルも投資している。4月に軍は、30メートルのトンネルを発見したと発表した。その発見に、イスラエルは400万㌦使った。一方、そのトンネルを掘るのにパレスチナが使ったのは200万㌦である。イスラエルはこのようなトンネル発見作業に、米国から大枚1億2千万㌦の支援を受けている。それでもカッサム旅団は挫けない。ドキュメント撮影後、カッサムの指導者は仲介者を通じて、「誰も我々のトンネル作戦を止めることはできない。…イスラエルはトンネルの入り口をブロックしたなどと宣伝しているが、みんな嘘だ」と、文書で連絡してきた。
 ガザのアル・アクサ大学のファイーズ・アブ・シャマーラ教授はフェイスブックで、「イスラエルがトンネル発見・破壊技術を進歩させても、それを上回る士気の高さでパレスチナ人が対抗。ハマスの上層部から聞いたが、ごく最近50メートルの深さのところに攻撃用トンネルを掘るのに成功した」と書いた。
 2014年のイスラエル軍のガザ侵攻の目的は、トンネル破壊だった。しかし、侵攻後もトンネルが存在し続けているので、ネタニヤフは狼狽、次はもっと激しい攻撃をすると息巻いた。2014年侵攻で2200人以上のガザ住民を殺したのに、それ以上殺すと言っているのだ。
 先月、極右アヴィグドール・リーベルマンを国防相に任命した。彼は、パレスチナ人民族浄化を公言している人物だ。トンネルがイスラエルにとって大きな脅威になっていることの証拠である。

なぜPAは中国の植民地主義を支持するのか?

       

エオイン・マレー(カナダ在住ジャーナリスト)9月9日「電子インティファーダ」

 米政府が湾岸戦争の準備をしていた頃、何人かのパレスチナ知識人がマンハッタンに集まって、1990年のサダム・フセインのクウェート侵攻に対し、パレスチナ解放機構(PLO)はどういう態度を取るべきかを討議した。パレスチナ人権センターのラージ・スーラーニ所長によると、長い討論の末、「誰にどんな責任があろうと、また、差し迫っていた米国の戦争も同じように悪いことであるが、やはり占領はよくない」という結論に達した。それで彼らは、パレスチナ民族評議員である故エドワード・サイードを、当時PLOがいたチュニスへ派遣。PLO議長ヤセル・アラファト(当時)にイラク非難声明を出すよう説得した。しかしアラファトは、サダム支持を打ち出したため、イラク軍がクェートから追い出された後、クウェートで働いていたパレスチナ人40万人が追放された。
 さらに、パレスチナ自治政府(PA)は今年、中国の南シナ海領土主張を支持した。これは、パレスチナ人を代表する組織がやるべきことではない。パレスチナの人倫的・政治的主張はすべて国際人道主義的人権法に依拠しているからである。国際諸機関とその理念はパレスチナ人の闘争にとって非常に重要で、それは2004年国際司法裁判所が、西岸地区にイスラエルが建てた分離壁は違法であると裁定したことにも見られる。
 昨年、イスラエルが2008年以来、3度の大爆撃でガザ回廊を攻撃した後、PAはイスラエル軍高官を戦争犯罪で国際司法裁判所に告発した。イスラエルは狼狽。米の親イスラエルロビーは激怒した。一方、フィリピンは、中国をハーグの常設仲裁裁判所に訴えた。中国が近隣諸国沿岸に近い無人島や岩礁に建築物を造って、自国領・自国領海という既成事実を作り出していることに反発したのである。中国の小島や岩礁の開発は、西岸地区へのイスラエルの入植活動を思い起こさせる。イスラエルもやたらと「聖なる」歴史的権利を引き合いに出して、国際法が認めない領土権を主張する。
 対中関係PA外交官アッバス・ザキは、「中国の主張をまるごと支持する」と宣言した。このPA声明は中国の海洋占領を容認することであり、イスラエルとの自由貿易を推進しようとする中国を認めることになる。イスラエルは、中国に対する武器供給国の一つである。中国の武器製造会社のカタログでは、同社の最新鋭発射制御レーダーがイスラエルの武器会社エルタが製造するELM-2052とまったく同じであると記されている。
 占領政策でも両国は酷似している。1950年、中国はチベットへ侵攻し、抵抗運動を抑圧し続けている。パレスチナを代表するなら、抑圧される人民の側と連帯するのが筋だ。もちろん国際法というのは、法による支配よりも政治の力で左右されるが、侵略犯罪を防ぐ国際法は必要であり、大切である。世界の国々は、たとえ自国の利益にならない場合でも、国際法の決定を守るべきである。
 PAが政治駆け引きで利口に振る舞いたい気持ちはわかる。中国はパレスチナ国樹立を支持してくれている。しかし、中国の国際法侵害を支持するのは、国際法システムを通じて要求するパレスチナ人の主張の信ぴょう性をも崩すことになる。PAは沈黙すればよいし、何かを発言しなければならない場合は、ナクバで故郷を追われた難民、クウェートやイラクやシリアやヨルダンやレバノンから追われた難民であるパレスチナ人民に相談すべきである。

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