産経・日経・読売・IMFすら苦言を呈するアベノミクス
「企業の内部留保377兆円、4年連続過去最高」(9月1日)、「 労働分配率8年ぶり低水準」(9月2日)、「官民で『賃金デフレ』脱却を」(10月1日)…。
リベラル・左派系メディアの見出しではない。これらは産経・日経・読売新聞から引用したものだ。
内部留保は1991年時と比較して約3倍に膨張中。「アベノミクスの成果」によって、2012年に年間3兆円だった増加額は2014年には26兆円に激増している。
労働分配率については、1970年代比でドイツの2倍、アメリカの3倍の下げ幅を記録している。つまり、内部留保激増の一方で労働分配率・労働者の賃金はほぼ等しく低下している。これについてIMFは日本経済への評価(9月29日付)で次の様に指摘した。
「労働者からの賃上げ圧力が低下し過ぎていることを懸念している」、「日本の労働市場は雇用についてあまりに『柔軟』だ」「アベノミクスの評価について、期間と達成目標を安倍政権自身のために定めてしまっている」。
こう指摘したIMFは過去に、アルゼンチンやインドネシア、韓国などに対し金貸しをセットにした緊縮財政要求によって、世界各地で失業と社会保障の破壊をもたらし、人々を苦しめた実績をもっている。このIMFが「日本の労働者諸君! どこまで賃上げを遠慮しているのか! 正当な要求をしないと、もっと生活が苦しくなるぞ!」と言っているのだ。
上述の各紙も同じく、「海外では上流階級すら自ら『私たちに課税せよ』と主張するのに、日本の資本家はぼろ儲け」「このままいくとマジで社会が崩壊するから、すこし配慮すべき」と嘆いているのだ。「企業収益を社会に還元すること」が社会全体の共通前提であっても、一時的かつ範囲が限定され、トリクルダウンを期待する「大企業社員の賞与引き上げ」ではない再分配の方法こそが必要だ。
各国の最低賃金をみれば、オーストラリア/1517円、フランス/1265円、貧困問題の拡大を受けて昨年初めて最低賃金制度を導入したドイツでは1118円だ。また、日本の正規・非正規間の年収差は平均300万円といわれており、男女間賃金格差ではOECD加盟国でワースト第2位を記録している。また、平均労働時間はドイツよりも300時間長い。同一価値労働同一賃金の推進、長時間労働の是正が欠缺の課題である。
本紙でも1553号(去年6月25日号)で紹介したエキタス京都(取材時団体名・自由最賃同盟)のような、(1)最低賃金の大幅引き上げ(1500円)、(2)社会保険料負担の減免、(3)中小企業支援など、全ての人間が人間らしい生活を送れる制度要求が必要だ。 (編集部・ラボルテ)