宮古島自衛隊基地建設 射程距離300㎞の地対艦ミサイル配備
宮古島への自衛隊基地建設が住民の強い反対にもかかわらず、強引に進められている。政府は、尖閣諸島の防衛を強化するため新型のミサイルを開発し、宮古島市や先島の主要島に配備するという。
開発するミサイルは輸送や移動が容易な車両搭載型ミサイルで、GPS(全地球測位システム)を利用した誘導装置を搭載し、飛距離は300キロを想定している。また、離島防衛強化のため陸上自衛隊に配備する水陸両用車について米国と共同開発も検討している。
こうしたなか宮古島へは、大福牧場と千代田カントリークラブの2カ所に、自衛隊の地対空・地対艦ミサイル部隊、警備部隊など約700~800人を配備する計画が浮上。旧大福牧場地区には、拳銃、小銃、機関銃などの射撃訓練に使う覆道射撃場、火薬類を保管する貯蔵庫、車両整備場などを建設。千代田カントリークラブには、庁舎や隊舎倉庫、車輌整備工場、福利厚生施設、グラウンドなどを整備する予定。(編集部)
防衛副大臣の訪問
9月2日、若宮健嗣防衛副大臣が、突然宮古島を訪問した。前日には、防衛省の来年度予算の概算要求(過去最大の5兆1685億円)が発表されたばかり。そのうち宮古島への陸上自衛隊配備にかかる費用として351億円が当てられ、今年度宮古島に充てられた予算108億円を一気に3倍に増やすという。
9月6日には、稲田防衛大臣が記者会見。まずは千代田に庁舎や隊舎倉庫、車輌整備工場、福利厚生施設、グラウンドなどを整備すると表明した。
日本政府は閣僚による靖国神社参拝や、南シナ海問題でフィリピンへの海上自衛隊練習機の貸与、尖閣沖で領海侵犯する中国公船や漁船の映像を公開し危機感をあおっている。中国脅威論を背景に自衛隊配備を一気に進めようとの思惑だ。
下地敏彦市長の前のめり姿勢
こうした政府・防衛省の動きに対し下地敏彦宮古島市長は、極めて協力的だ。8月22日には、沖縄防衛局の井上一徳局長らが市長を表敬訪問し、(1)陸自警備部隊の宮古島への配備について受け入れの判断に感謝したい、 (2)千代田カントリークラブについては用地取得の手続きを進めていく、(3)大福牧場に替わる代替地については検討していくが市の協力をいただきたい、などと挨拶している。
旧大福牧場周辺で計画されている駐屯地建設については、予定地近くに島内最大の湧出量を誇る「白川田水源」があり、地下水への影響を懸念する声が強く、反対の声が強まっていた。
陸上自衛隊駐屯地の配備が地下水源に与える影響を審議していた市地下水審議会学術部会は、(1)油分・薬物などの漏出が全くないとは判断しがたく、水道水源地下水の水質を汚染するおそれがある、(2)宮古島市の主要で恒久的な水道水源であるため、多段階のリスク管理が必要で、予防原則的に不適切、(3)有事の際、施設が攻撃対象となった場合、その攻撃による水質汚染、地下水帯水層の破壊などが発生しうるとして「学術部会としては駄目だと結論を出した」(5・ 22シンポジウムでの琉球大学・新城竜一教授の発言)経緯がある。
ところがこの報告書について、下地敏彦市長の指示を受けた長濱政治副市長が、地下水源を汚染する恐れから施設の建設・運用は「認められない」とする部会の結論を削除し、全体的に表現を弱めた文言に書き換えるように、学術部会長に要望したが、断られるなど、第三者機関の独立性を脅かす問題も明らかになっている。
また、一連の問題で市は、市民団体から不服申し立てを受けた市が情報公開審査会に諮問するための作業を2カ月近く放置していたり、審議会や学術部会の議事録公表を拒み続けるなど、情報開示にも後ろ向きだ。
こうした下地敏彦市長の自衛隊配備ありきの強引な行政運営に、市民から疑問や怒りの声が相次ぎ、市民の要請で市長を支える与党市議10人が反対の考えを表明。下地市長も旧大福牧場周辺での駐屯地建設については、撤回せざるを得なかったのである。
陸自配備に「ノー」
千代田自治会 市長に反対決議提出へ
9月2日、配備候補地となっている千代田カントリークラブ(上野野原)がある千代田自治会は、千代田公民館で「臨時会」を開き、同地への配備に反対する決議を賛成多数で可決した。下地敏彦市長と市議会の棚原芳樹議長に反対決議文を提出するほか、市議会への要請も検討している。陸自配備候補地周辺地域における反対決議は、野原部落でも決議されている。
臨時会では、反対決議を下地市長に提出するか否かについて賛否を問うた結果、28世帯のうち24世帯が反対決議書の提出に賛成した。
同自治会では、これまで6月末に意見交換会を開催し、7月上旬には防衛省から担当者3人を招いた非公式な説明会と意見交換会を開催。同27日には再度自治会内で意見交換会も開いている。
臨時会に参加した同自治会役員によると、住民からは「ヘリポートによる騒音被害が懸念される」「なぜ、千代田で配備なのかの理由説明がなされていない」「今後さらに施設が拡大されることも予想される」などの意見が出されたという。
また、今回の反対決議に賛同した住民の中には、配備予定地の地権者も複数含まれているという。
野原地区に次いで千代田も陸自配備に反対の意思を示したことで、沖縄防衛局はこれまで「住民に理解してもらうことは大変重要」としていることから、今後の対応が注目される。