【中東ではいま】サウジ―イスラエル関係緊密化 サウジ代表団のイスラエル訪問に抗議

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「電子インティファーダ」7月29日号
アリ・アブニーマ
翻訳・脇浜義明

 サウジアラビアと湾岸諸国のパレスチナ連帯活動家たちは、サウジ代表団のイスラエル訪問に抗議。アンワール・エシュキを団長とする学者・財界人イスラエル訪問が、こともあろうに2200人のパレスチナ人を殺害した2014年のイスラエル軍ガザ攻撃の2周年記念日にあたるので、市民団体BDS湾岸は怒りを露わにし、エシュキや元諜報部長トゥルキ・アル=ファイサルなどのサウジ高官の動きが、サウジーイスラエル関係親密化を表し、パレスチナ軽視につながっている、と声明を出した。
 エシュキはバンダル・ビン・スルターン王子の顧問や諜報機関の長官、米国への大使などを歴任、現在「戦略研究」シンクタンクの所長をしている。サウジや湾岸諸国のコメンテーターやソーシャル・メディアは、彼の訪イスラエルを非難。エシュキは最初、訪問を否定しようとしたが、それに失敗すると、PAに招かれて、かつてサウジが提案したアラブ和平構想を復活させるために行ったと、言い訳に切り替えた。しかし、彼の訪イは、核開発に関するイランと欧米との和解以降、対イラン敵意という共通利害で一致、関係親密化の表現である。

隠れ蓑にされるPA

 BDS湾岸の声明を受け、BDS運動を世界に発信するパレスチナ市民連合であるBDS全国委員会(BNC)は、アラブ政権とイスラエルの関係正常化はパレスチナ人の闘いを「著しく傷つける」という声明を出し、イスラエルとアラブ諸政権の関係正常化促進に一役果たしているPAの「恥ずべき」役割を批判した。
 先週イスラエルのハアレツ紙は、エシュキがイスラエル外務省のドーレ・ゴールド長官、COGAT(占領地のイスラエル民政官事務所)のヨアヴ・モルデカイ少将と会談したことを報道した。さらに、クネセトの議員団とも懇談した。
 そのくせエシュキはアラブ・メディアの取材に対し、「私はイスラエル訪問に来たのでなく、PAの招待でラマッラー訪問に来たのだ」と言い、「殉教者」家族を慰問し、イスラエル刑務所に収監されているマルワン・バルグーチの息子さんの結婚式に参列したと言った。「イスラエル新聞が私がイスラエル訪問したと書いているのは、彼らがエルサレムをイスラエル領だと思っているからだ」と弁解。
 しかし、イスラエル高官や議員との会談が明らかになると、PAの要請だとか何とかPAを隠れ蓑にする話をでっち上げた。そもそもこれはパレスチナ訪問団で、ファタハの実力者で元PA諜報部長だったジブリール・ラジューブの要請によるもので、2002年にサウジ王が提案したアラブ和平構想を促進し、パレスチナに我々の心と支援金で以って連帯の意志を表明するために来たのだ、と説明。ドーレなどイスラエル高官や議員との会見も、「パレスチナの地」である西エルサレムのキング・ダヴィデ・ホテルで行われ、和平推進が目的だった、と弁解した。
 しかし、西岸地区やガザのパレスチナ人にとって、エルサレムは立入禁止地区である。そこのホテルで撮られた新聞写真には、イスラエル高官やラジューブと一緒に写っていた。

イスラエルとサウジの共通利害とは

 エシュキは、PA首相ラーミー・ハムダッラーとも会談したことをあげ、目的は和平推進だと言い張った。ネタニヤフはサウジのアラブ和平構想を一貫して拒否、先月も改めて拒否したのである。それに対して提案者のサウジアラビアが外交関係正常化で応えようとするのは、奇妙である。あの和平構想は、イスラエルとの関係正常化の前提条件として、イスラエルの占領地からの全面撤退とパレスチナ人の権利尊重をあげていたはずである。エシュキの弁解にかかわらず、彼は以前に、イランという共通の敵がいるためにイスラエルとの関係緊密化が必要だと言ったことがある。彼は、イスラエルとサウジアラビアは「お互いに助けあう必要がある」と述べ、両国を「中東地域に騒動を望まない」国と説明した。
 米国生まれのタカ派ユダヤ人ドーレ・ゴールドマンは、シャロンやネタニヤフの顧問などを歴任した人物。イスラエルはサウジアラビアを理想的パートナーと見ている― 両国とも宗教的狂信主義で排外主義的という共通性がある。イスラエルは以前、PLOを崩すために中東地域の宗派、特にスンニ派を懐柔しようとしたことがあった。ハマスがその一例だが、ハマスは反対にPLO以上に反イスラエルになった。ゴールドマンは先月の演説でこの戦術の推進を語ったが、宗派の信徒の中にはそれを好ましく思わないものも多いから、事を秘密裏に運ぶ必要がある、と言った。
 エシュキも2015年にウォール・ストリート・ジャーナルに、「自分が最初にゴールドマンと接触したのはパレスチナ問題に関してだったが、その後イラン問題に変わった」と語った。「イランに対する我々の考えと彼らの考えは一致した」。エシュキはイランの支配者をもっと柔軟な指導者にすげ替えることと、中東地域の再分割を望んでいる ーこれは米国極右とイスラエル極右と共通した考えである。
 そのとき、彼は中東ビジョンとして、アラブ・イスラエル和平、イランの政権交代、アラブ世界の民主主義、クルド人国家の建国をあげた。さらに、イスラエルに対するパレスチナ人の武装抵抗に反対を表明した。サウジアラビアはパレスチナ人に生活できる金を援助しているが、イランはハマスに武器を援助していると、イランを批判した。しかし、米国がイスラエルに武器援助していることには触れなかった。
 両国は今のところ外交関係がないが、上層部が和解へ向かって進んでいることは明らかである。トゥルキ・アル=ファイサル王子などは、イスラエル承認を口に出し始めている。

トルコ政府による大量拷問 クーデター未遂事件後の大弾圧

Alter Net 8月1日号
サラ・ラザール(米国反戦活動家、Alter Netスタッフ)

 アムネスティ・インターナショナルに、トルコ政府がクーデター未遂事件後性的拷問を含む大量拷問を行っているという「信頼できる証拠」が届いた。アンカラとイスタンブールで、警察が拘束者を48時間無理な姿勢に保たせ、食事も水も与えず、気分悪化を訴えても治療なし、そのうえ絶え間なく罵り言葉を浴びせるのだ。「最悪の場合は厳しい殴打や拷問、性的拷問さえもある」。
 匿名を条件に弁護士、医師、拘置所の役人からアムネスティが引き出した情報によると、「恣意的に拘留され、それも正規の留置場でないところに監禁される。弁護士や家族との接見も禁じられ、公正に裁判を受ける権利も無視される」アムネスティの報告の一部を紹介する。

激しく殴打された拘留者

 アンカラで拘留者の代理人を引き受けている2人の弁護士は、拘置されている上官軍人が警官によって警棒や指で性的拷問を受けているのを見たいう拘置者の証言を、アムネスティに伝えた。アンカラ警察署体育館の当番役人は、明らかに激しく殴打され、顔が腫れ上がった拘留者を見たと話した。彼は立つこともできず、目の焦点も定まらなかった。ついに彼は意識不明となった。僅かな薬をあてがわれることはあるが、たいてい警官は大ケガの拘留者への治療手当を拒否した。当直の警察医が「死んだってよい。ここへ運ばれてきたときすでに死んでいたと言えばよいのだ」と言っているのを聞いたと、一人の役人が言った。彼は、アンカラ警察署体育館には650~800人の男子兵士が収容されていると語った。そのうち300人には殴打された形跡があった。打撲症、切り傷、鼻の骨折などが。傷がひどくて歩けない者は40人ほど。立つことすらできない者が2人。別棟に拘留されている女性は顔と腹や背中に打撲の跡があった。
 「殴打や強姦や性的虐待などの報告は、拘置者の著しい多さから見ても、安易な事態ではない」と、アムネスティ・ヨーロッパ支部のダルヒューセン支部長は言う。「我々が集めた恐ろしいデータは、拘留所で起きていることの氷山の一角でしかない。トルコ政府は忌まわしい拷問をやめ、国際監視団の拘置所訪問を認めるべきだ」。

戒厳令による無制限の権力行使

 先週、エルドアン大統領は戒厳令を宣告、無制限の権力行使の自由裁量権を得た。政府は、具体的罪状を明らかにしないで国民を逮捕し30日間監禁することができる。トルコ人権監視団のエンマ・シンクレアーウェッブによれば、戒厳令決定の前に、「兵隊の大量拘留、1万5000人の教員を含む5万人以上の公務員の停職、1500人の大学学長の強制免職、979人の裁判官と検事の拘留や、632人の投獄と2745人の裁判官の停職など、司法界の大粛清も行われた」。
 さらに、トルコ当局が60人以上の生徒を反逆罪で逮捕・拘留、少なくとも42人のジャーナリストに逮捕状を出したと伝えられる。

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