続報・相次ぐ再稼働作業時のトラブル 関西電力高浜原発4号機、再起動中の一次冷却水漏れ

保守現場の恐ろしく危険な実状

LINEで送る
Pocket

市民と科学者の内部被曝問題研究会会員 渡辺 悦司

 原発が再稼働準備の過程で技術的トラブル起こす事象が相次いでいる。表を見れば、実に様々な種類のトラブルが続発していることが分かる。今回は、本紙で既報の川内原発に続き、関西電力の高浜原発4号機の再稼働時トラブルを2回にわたって取り上げよう(同原発は現在裁判所の差し止めにより停止中)。それが、現在進行中の再稼働のもつ致命的な危険性を保守作業の現場レベルで集中的に示しているからである。

放射能汚染された一次冷却水が弁から漏れる

 関電の報告書によると、2016年2月20日、「1次冷却材系統の昇温に向け化学体積制御系統の水をホウ素熱再生系統に通水したところ、『1次系床ドレン注意』警報が発信した」という。3分後に通水を停止したが、その間に34リットルの一次冷却水が漏れ出したとされている。
 ここで重要な点は、漏れ出したのが「一次冷却水」である点である。しかも、漏水速度は、3分間で34リットルとされ、日量にすると16.3トンで決して僅少とはいえない。漏れ続けた場合、炉心のメルトダウンにもつながる可能性もあったわけだ。
 漏水して溜まっていた水(8リットル)からは、約1万4000Bqの放射能が検出された(漏水の総量34リットルでは約48万Bq)。関電は、これが「国のトラブル事象の基準値(370万Bq)に比べ、200分の1以下の値」であるとして、問題ないとしている。
 だが、本格稼働中であれば、今回のような、一次冷却水からリチウムやセシウムなどイオン状の放射性物質を取り除く装置(冷却剤脱塩塔)での漏水は、深刻な放射能汚染をもたらしたであろう。

「原因はボルトの緩み」と関電報告

 漏水の原因について関電は、21気圧という高圧がかかっている弁(バルブ)の一つで「一部のボルトの締め付け圧が低い状態であったため」と推定した。関電は、このボルトの締め付けトルク不足を、「現場が狭隘な場所で一部のボルトに適正なトルクがかからなかった」ためと説明している。
 だが、もしこの通りだとすると、わざわざこのような成り立たない言い訳をしたくなるような事情が、保守現場に現にあるということになる。つまり、(1)関電上層部から再稼働前の点検範囲を狭くするようにとの圧力や示唆がある、(2)保守点検作業の下請化やコスト削減によって担当現場での極端な人員不足が生じている、(3)現場作業員の士気や規律が低下している、ではないかということだ。
 というのは、今回のトラブルが生じた「後」でのチェックでは、「狭隘な」現場状況は変わらないにもかかわらず、弁のボルトのトルクの調査も、弁を分解点検することも問題なく実施できているからだ。さらに、「系統を隔離して加圧したところ」「(当該の)弁の弁箱とダイヤフラムシートの間から漏えいが認められた」とも書かれている。すなわち、場所的な制約にもかかわらず、加圧検査も分解検査も行うことが、再起動前に検査をやる気があればできたわけだ。

当該高圧弁(バルブ)を8年間も分解点検せず

 重要なことは、4年以上稼働していなかった原子炉を今回再起動する際に、きわめて「常識的」な手順である基本的な安全確認、すなわちボルトが規定のトルクで締め付けられていることの確認が、やろうと思えばできたはずであるのに、なされていなかったという事実である。
 さらに深刻な問題がある。関電の報告書は、「当該弁については、第18回定期検査(平成20年8月~平成21年1月)において分解点検を実施していることを確認しました」と書いている。だが、文字通り読めば、当該弁の本格的点検が、福島原発事故以前の2008年8月からの定期検査以降、すなわち8年間近くも行われていなかった事実を、同報告書は公式に認めていることになる。

「高圧ガス保安法」違反の怠慢

 一般のプラントにおいては、「高圧ガス保安法」が適用され、高圧弁の1年に1回以上の定期検査が法的に義務づけられている。しかも、内部の腐食状況の確認・整備、グランドパッキン[軸封部]の状況の検査など点検事項が決められている。
 4年以上動いていなかった装置を動かす際には、高圧部のバルブのボルトの締め付けを点検するのは、一般プラントでは普通の常識的措置であろう。8年も内部点検やグランドパッキンおよびシールなどの交換をしないままに、4年間休止していた装置をそのまま稼働するというのは、一般プラントでは脱法あるいは違法な操業となる。だが原発ではそうではない。
 弁の故障や漏水が生じた場合に、放射能で高度に汚染される危険があり、メルトダウンによる苛酷事故につながりかねないような、1次冷却水を扱う高圧弁については、当然最低でも「高圧ガス保安法」の精神と規定が生かされなければならない。そうでなければ「安全」は最初からありえない。
 「高圧ガス保安法」の規定との比較だけからみても、関電が当該弁の本格的な点検を再起動前に行うことなく8年間も放置した状態で再稼働作業に着手したことは、社会常識からも道義的にも重大な保守義務違反である。
 同時に、そのような原発保守の規律が緩んだ状況を放置し容認している原子力規制委員会の姿勢は、「安全」とはほど遠いものであり、「安全無視」としかいいようがない。

原発固有の危険性

 もちろん、弁からの水漏れというようなトラブルは、原発以外のいろいろなプラントでもよく起こる事象である。「取り立てて問題にすることはない」という評価もあるかもしれない。
 だが、このような「何でもない」ように見えるトラブルが、放射能汚染や炉心溶融を含む重大事故に導く巨大な危険をはらんでいることこそ、原発の避けがたい特質なのである。だから原発は動かしてはならないのだ。
 関電は、「当該弁のダイヤフラムシートを新品に取り換えるとともに、当該弁をはじめ、1次系冷却水が流れる系統の同種の弁(弁駆動軸が水平方向の弁)について、適正に締め付けられていることを確認した」として、その他の再点検を行うことなく、予定通り再稼働作業を強行した。
 そして起こったのは、発電機の送電網への接続の失敗と、原子炉の緊急停止であった。これについては次回検討しよう。

LINEで送る
Pocket