G7伊勢志摩サミットと私たち 「責任あるサプライチェーン」の重要性

日々の生活と世界をどうつなげるか?

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ヒューライツ大阪顧問 白石理

 昨年のドイツ・エルマウサミット首脳宣言において、「責任あるサプライチェーン」という項目がありました。これは、(1)国連やILOなど国際的に認識された労働、社会および環境の基準、原則の遵守、(2)透明性の向上、リスクの特定と予防の促進および苦情処理のメカニズム、(3)持続可能な経済発展の促進、などが掲げられています。「人が人として生きるための尊厳と条件を守ろう」ということです。
 この追跡報告を伊勢志摩サミットで行う予定でしたが、日本政府は意図的に主要議題から外しました。欧米各政府は市民団体からの働きかけに敏感です。選挙結果に直結するからです。日本では、外務省と市民団体間の対話が開かれていますが、政策に反映された形跡がありません。日本と他のG7参加国の非常に大きな違いです。
 どうして「責任あるサプライチェーン」が首脳宣言に盛り込まれているのでしょうか? G7参加国は多国籍企業の80%以上を占めています。多国籍企業のサプライチェーンは、低賃金や長時間労働も含めた強制労働や人権侵害、健康被害や地域社会への負の影響、自然環境の破壊と汚染など、さまざまな問題が引き起こされる要因となっています。
 問題規制に向けた最近の動きとして、イギリスで現代奴隷法が昨年発効されました。掲げられているのは、「現代の奴隷制の根絶」です。65億円以上の売り上げを持ち、イギリス国内で営業活動を行う企業に、「奴隷・人身取引」に関するレポート提出を会計年度毎に義務付け、企業のサプライチェーン上に、強制労働や人身取引などの人権侵害の有無やリスクがないかを報告させるものです。
 また、米国では「貿易円滑化及び権利行使に関する法律」が今年2月に発効しました。米国労働省のウェブサイトには、児童労働や強制労働を行っている製品について、67カ国の64農産物、42工業製品、29地下鉱物資源が国名とともに列挙されています。両法律共に、日本の多国籍企業に深く関係するものです。
 後者のアメリカの法律に日本は挙げられていませんが、外国人技能実習制度は、米国務省では奴隷労働に分類されています。外国人技能実習制度による製品を米国に輸出すると、米国政府から停止処分を受けます。また、中国やマレーシアで製造された部品が日本で組み立てられた自動車に入っている場合、どこの工場で、どのような工程で作られているのか、公表しなければいけません。
 エルマウサミットの追跡報告として、責任あるサプライチェーンの実効性のある実現方法を言及しなければいけません。企業任せではうまくいかないことは明らかで、立法・司法・行政が取り組む必要があります。
 国際組織にはほとんど強制力がありません。そこで重要となるのは、国際社会におけるNGOによる監視、情報収集、報告、世論形成です。G7に関わる市民社会の役割はそこまでいかなければなりません。「地域のお祭」で終わってはいけません。国際政治、国内政治、グローバル経済のつながりを忘れない。どうしてこの時期にこういう課題しか出てこないのか? それを踏まえる必要があります。

(文責・編集部)

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