高さ制限条例の直接請求 否決した議会
高層マンション建設ラッシュの続く大阪府島本町で、町内全域の建築物の高さを20m(6階相当)に制限する条例の制定を求めて直接請求署名を行いました。
人口3万人の島本町は、1年間に4つの高層マンションが立つなど、人口が10年で10%以上増え、待機児童の数が大阪府ダントツのワースト1を3年連続記録しています。
また、町が行なった総合計画のための住民アンケートや子育て世代への住民アンケートでも、高層マンションがこれ以上いらないという意見が噴出していました。
さらに、農地が広がるJR島本駅西地区では、阪神阪急不動産の最大50m、15階の高層マンションを含む2000人を超える大規模な土地区画整理事業による開発が計画されています。
これまで5000筆を超える開発の見直しを求める署名が町長に提出されるなど、住民の反対があるなか、その声を無視して2019年7月に島本町は、都市計画審議会を開催しました。
当日、町役場には、平日の昼間にもかかわらず、高校生を含む120名を超える町民が詰めかけ、ロビーから人があふれるなか、公募委員も民意をもとにして計画への批判を展開しましたが、審議会会長が議論を打ち切って、多数決に持ち込み、開発の都市計画決定が強行されました。
このままでは北摂連山や天王山、男山を望むことができる愛着のある景観が失われ、保育園、学童保育、小学校、中学校のキャパシティーオーバーと増築のための多額の税金投入が危惧されました。
その状況で、住民が直接議会に条例の制定を法的に求めることができる直接請求署名(1カ月以内に有権者の50分の1の署名が必要)の取り組みが9月に開始されました。
町長も町議会も開発優先
高さ制限を求める条例の直接請求は全国でも例がないため、多くのマスコミで報道され、これまでマイクを持って演説をした経験のない住民が駅前やスーパーの前にたちながら、有権者の10分の1(2662筆)以上の署名を集めることができました。
なかにはテレビを見たといって親を連れてきた小学生や、何人もの中学生が署名をしたいと自ら声をかけてくるなど、署名のできない未来世代の強い思いも感じました。
しかし、JR島本駅西地区の開発計画に影響がでるとして、町長は条例制定に反対の意見書を町議会に提出しました。今月4日に開かれた島本町の臨時議会において、町民6名が意見陳述を行い、景観条例制定を10年前の町の総合計画に明記していたにもかかわらず、開発のために放置していた町の不作為への批判などが行われました。
多数の町議員は「企業誘致に影響がある」、「財産権を脅かす」、「高さ制限は4年後以降の町の計画に任せる」といった前時代的な論理で条例案を否定しました。
結局、無所属の中田みどり議員と共産党の河野恵子議員の2名が賛成し、議長を除く他の11名の議員は反対を行い、2対11の反対多数で条例案は否決されました。
建築物の高さ制限について4年後以降に先送りし、後は町に丸投げした町議員たちや、条例案を否定した町行政の民意を踏みにじる態度が、今回の直接請求で露呈しました。
よりよい島本町を未来の世代に受け継いでいく、島本の取り組みはこれからが本番です。