そもそも「サプリメント」って?~「治す」ではなく「整える」~
睡眠、運動、食事―これらはわたしたちの健康を支える基本的な三要素であり、個々人が自分に必要な量をバランスよく摂れるよう、日々心がけながら生活しているのではないだろうか。しかし、どうしても自力で摂ることが難しい場合や、肌の調子や視力の具合から栄養不足が予想される場合、市販のサプリメントや健康食品の力を借りて補うこともしばしば。
「飲むと身体に良いらしい」、「薬ではないので副作用もなかろう」、「とりあえず買っておくか」、そうやって安易に手に取りがちなサプリメントではあるが、それらは今の自分に本当に必要で、かつ安全なのだろうか。大袈裟とも取れる台詞で健康面の不安を煽ってくるメディアや広告に踊らされて、なんとなく購入していやしないか。
今回は、サプリメントに関する基礎知識や日本社会の医療・教育体制と、その中で個々人が持つべき健康意識の在り方について、内山章さんにお話を伺った。
(聞き手 げいじゅつとごはんスペースAKEBI 木澤 夏実)
サプリメントとは健康の維持増進を目的として用いられるものであり、ある特定の疾患や症状を「治す」ためのものではない。
そのため、健康上の悩みが具体的なものとして身体に現れる前段階から、そうならないために必要な栄養成分の入ったサプリメントを飲み始めておくというのが理想的な摂取方法である。わたしたちがよく目にする新聞の折り込みチラシやテレビコマーシャルの中には「膝の痛みを改善! 階段が降りられるようになりました」云々と、自社のサプリメントがあたかも特効薬であるかのように謳い、消費者の興味を引こうとしているものも多く存在するが、サプリメントの根本が理解できていればそれらをむやみに購入することはないだろう。
また、日本においてサプリメントは「(健康)食品」に分類されるため、「医薬品」とは異なり専門家の指導がなくても購入でき、販売するメーカー側に課せられる成分表示規則も非常に軽い。
喉越しの良さやおいしさを重視して製造されたサプリメントの場合だと、含まれる栄養成分の割合を減らして水分や糖分を多めに添加する場合もあるため、栄養純度の高いサプリメントを確実に購入するには製造・販売基準自体が厳しい諸外国…例えば、サプリメント先進国と言われているアメリカのメーカーを当たるのが主流だという。
自分の身体について、そういえば良く知らない。曖昧な基準で製造されたサプリメントが日本で売れ続けてしまう理由のひとつには、消費者であるわたしたちが自分の身体と健康、そして病気の予防という概念について知識を持ち合わせておらず、「なんとなく身体に良さそう」な謳い文句に容易に乗ってしまう、ということが挙げられる。
日本の義務課程における保健体育の授業でわたしたちが教えられたことといえば、人間の身体の大まかな構造と、ちょっとした性教育と、病気予防に関してはうがいと手洗いの指導くらいだろうか…平均寿命が年々伸び、かつ国家予算内の医療費の割合増加が問題視されている日本社会を、まさにこれから生きていく子どもたちに対して行う保健教育がこれでは、時が経つにつれて問題はただただ深刻化するだけだ。
「病気にならない強い身体作り」は個人・社会両者にとって目指されなければならない目標であり、あらゆる立場の人々がそれを確信しているにもかかわらず、なおも変化しようとしない社会の体制…その背景には、さまざまな業界同士の凝り固まった利害関係が見え隠れすることも。
しかし社会がどうであれ、今を生きる自分自身の健康は自分で守らなければ―今回お話を伺った内山さんはその思いを軸に、厳しい基準に合格した高純度サプリメントの販売や、健康知識に関する講演を精力的に全国で行っている。
予防医療の意識の大切さと、その上でのサプリメント摂取という選択
内山さんがサプリメントに関わった出発点は、料理人として活躍していた20代の目まぐるしく忙しい日々。若くして東京に自分の店を持った彼は、己の健康など二の次、三の次で、がむしゃらに働いていたが、その矢先に大病に見舞われてしばらく休業することとなる。
療養中で働くことのできない自分がその未来を想像したとき、「身体が壊れたら何もかも終わってしまうのか」ということを痛感し、大きな恐怖に襲われたという。それ以降、調理学校ではほんの少ししか教わらなかった栄養学を独学で学び直し、さまざまな出会いの末に行き着いたのが分子栄養学―人間の身体の細胞内にある遺伝子を最大限に活動させるために必要な栄養素と、その量を知るための栄養医学である。
例えば、自分では健康に気を遣った生活を送っているつもりでも、分子栄養学に基づいて分析すると、その心がけだけでは栄養が必要量に達さないということに気が付く。その上で、足りていないと分かった栄養をサプリメントで効率よく摂取し、全身に栄養が行き届いた状態を常に維持し続けることで、それまで以上に活発に活動でき、かつ病気にかかる機会はグンと減るのだ。
「自分の健康は自己責任、社会や教育がどうだからと言い訳はできない」。そう語る内山さんの言葉には、かつて自分自身も健康問題により多くを失ったという経験に裏打ちされた重みと潔さがあった。
世の中の悪い風潮に逆行する形で正しい健康知識を広めようとする医者やメディアが弾圧を受け、潰されてしまいがちな社会の現状…そんな世の中だからこそ、個々人が自力で賢くなっていく努力を。