軍事予算を温暖化対策へ 気候変動運動は反戦運動と結合を マーチン・ハート=ランズバーグ 『エコノミミック・フロント』2019・10・2 翻訳:脇浜義明

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米軍の温室効果ガス排出=世界1

世界最大の石油 消費者=米軍

 軍隊は、空中で大量の温室効果ガスを排出する。ネタ・クロフォード(ブラウン大学・戦争費用プロジェクト共同責任者)は「国防総省の燃料消費と気候変動の関係」について、「米軍は世界最大の石油消費者・温室効果ガス生産者だ」と発表した。  

米国の軍事費は、中国、サウジアラビア、インド、フランス、ロシア、英国、ドイツの7カ国の総計を上回る。連邦予算の自由に使える支出の半分以上は毎年、国防総省が占める。これに他の省庁の国家安全保障や武器に関する支出を加えると、軍事支出は自由に使える支出の3分の2以上になる。  

米軍の地球温暖化への影響に関する情報は、政府圧力により入手困難だ。例えば、京都議定書では米政府が圧力をかけ「軍が発生させる温暖化ガスは国の排出量の中に入れない」とした。しかし、パリ協定は例外を認めなかったため、米は脱退を表明した。  

米軍は燃料使用量を公表しないが、4人の研究者(オリヴァー・ベルチャー、ベンジャミン・ニーマーク、パトリック・ビガー、カーラ・ケネリ)が情報自由法を利用して、国防総省兵站局から情報を引き出した。  

兵站局のエネルギー支部は、軍のエネルギー関係を担当する部署で、4氏によれば「エネルギー支部は、国の内外で活動する米軍のためのエネルギー購入や供給契約をするだけでなく、あらゆる消耗品をも扱う『何でも屋』」である。  

例えば、偵察飛行や攻撃飛行のジェット機、軍人や武器や軍用物資を運ぶ航空機や艦船、海外基地や演習中の艦船などへの燃料を供給している。4人の研究者は軍の燃料補給(2013~17年)を調べ、温室効果ガス排出量を算出した。  

武器や戦闘技術・戦略の進化とともに、燃料依存度も劇的に高まった。第二次大戦中の兵士1人当たりの平均燃料消費量は1日1ガロンだったのが、ベトナム戦争時には1日9ガロン、アフガン・イラク戦争では22ガロンになっている。  

航空機爆撃やドローン爆撃、あるいは地上部隊侵攻前に航空爆撃で徹底的に破壊する作戦をはじめ、先端技術を使った無人攻撃が多くなったことが原因だ。また、攻撃だけでなく、兵站施設も燃料を消費する。  

実戦では大量の燃料が消費されるが、米軍の実戦回数は世界一だ。「2015~17年の間に、76カ国で戦闘、44の海外基地で活動、56カ国で対テロ演習を行った」と4氏。  

4氏は、米軍の液体燃料消費量とCO2e(温暖化への影響の大きさを統一的に表す尺度)の排出量は、ペルーとポルトガルの間ぐらいに位置すると結論付けた。燃料消費量だけで見れば、世界47位の温室効果ガス排出体となる。  

これに軍が使う電気、食糧、土地使用などからのCO2排出を加えると、その位置はもっと高くなる。これに軍需産業や軍に関係する諸々の業者の排気ガスを加えると、汚染度は世界一となるであろう。2017年、米軍は1日につき26万9230バレルの石油を購入、2万5375・8キロトンのCO2‐eを排出した。  

気候変動への影響自覚する米軍

政治家と違って米軍は、気候変動をしっかり意識している。気候変動によって作戦即応性が脅かされるからだ。2018年初め、国防総省は軍事施設の半分が気候変動の影響を受けたことを発表した。その後も、53施設が洪水、43施設が干ばつ、36施設が山火事、6施設が砂漠化の犠牲になったと報告した。  

重要なことは、米軍が安全保障の観点から気候変動を見ていることだ。国家情報局報告書は「地球温暖化と生態系悪化及び気候変動のために、2019年以降は資源をめぐる紛争、経済危機による紛争、社会的不満による騒乱が予測される」と述べている。  

もちろん、それに対応する軍事能力を強化している。それ自体が一層の温暖化促進に寄与しているにもかかわらず。  だから、政府の温暖化対策を求める市民運動は、軍事費削減、海外派兵、海外基地など、軍隊に反対する取り組みが必要である。  

軍縮は、温暖化阻止に役立つばかりか、そこで浮く予算を温暖化対策や持続可能な経済活動への移転へ回すことができる。

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