NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で、電器店の今井和美さんを取り上げていた。今井さんは、30~40年前のパソコンやオーディオなど、交換部品もなくなっている家電を、時間をかけて問題点を洗い出して修理する。すると、動かなかったパソコンが起動し、鳴らなかったオーディオから音が流れる。生きものではないのだけど、息を吹き返すような感じがした▼自分のことを省みてみれば、修理をすれば使えるものを、どれだけ捨ててきただろうと思う。10年も使えばいいほうで、修理するよりも安い値段で、より性能のよい新品が買えてしまう。あるいは、パソコンなどは使いたくても、OSが古くなったらセキュリティが危ないだのと言って、買い換えを迫られることもあった。そういう仕組みに乗せられて、ずいぶん使い捨てをしてきたように思う▼その仕組みは、人を使い捨てる仕組みでもある。労働力の使い捨てと物の使い捨ては、同じ仕組みのあらわれのちがいだろう。人の身体は、場合によって百年も動く。部品を交換しなくても、みずから修復する。物も人も、使い捨てるのではなくメンテナンスする思想が必要なのかもしれない。 (こ)